2004年9月 |
1日(水)
向田邦子の名作を、森田芳光監督で映画化した〈阿修羅のごとく〉を見ました。評判が高かった割には中弛みしていたような気がします。2時間15分の作品ですが、時間以上に長く感じられる。それが昭和54年、(って今書き込んで思ったのだが、1979年、まだ辛うじて70年代の物語なんですね)っていう時代の時間がゆっくり流れていた様子を表現したいのか、ただたんに長いだけなのかはよく分からない。なんか間がちょっと繋がっていないというか、間の取り方が悪いというか、間に問題のある映画ですよね。時間がゆっくり流れている年寄り向けにはちょうど良い間かもしれないけど。
しかし、女優陣の競演は見事の一言に尽きます。大竹しのぶと黒木瞳、大竹しのぶと桃井かおり、八千草薫と黒木瞳、黒木瞳と深津絵里、黒木瞳と木村佳乃、深津絵里と深田恭子、八千草薫と深田恭子etc。いやぁ深田恭子が見劣りするものの、その他の面々の喜怒哀楽の凄まじいこと、壮絶なこと、狂おしいこと、隠し通すこと、よくもまぁこうも各世代の芸達者な顔ぶれを集めたと関心仕切り。キャスティングだけでこの作品は成り立っています。っていうか、こういう顔ぶれと一緒に競演させられた深田恭子はある意味気の毒かも。普段下手な相手としか競演していないから下手さが目立たなかったのに。
特に大竹しのぶと桃井かおりのシーンは絶品。このシーンを見るためだけにでもこの映画を見る価値はある。それくらい絶品。女の情念と見栄を赤裸々に演じているこの二人は、もう流石としか言いようがない。全体的には大竹しのぶは、そつなく周りと演技レベルを合わせている感じがするが、桃井かおりとのシーンは遠慮も容赦もないね。相手によって自分だけが引き立たないように、作品全体の調和を考える、最早大竹しのぶはその域に達している気がします。そしてね、深津ちゃんいいよ。深津ちゃん。〈天気予報の恋人〉でやっていた演技に近くて、〈きらきらひかる〉〈踊る大捜査線〉〈カバチタレ〉とかの路線じゃなくて、こちらの路線の演技もやっぱり上手いねぇ。大竹しのぶに目を奪われず、こちらも注目してあげてね。
そして、脇役の男性陣もなかなかいいねぇ。仲代達也は老人力を見事に演じきっているし、小林薫は日本の典型的なオヤジを、憎らしいくらいイメージ通りに演じている。中村獅堂が少し頭の弱そうなでも純粋な青年を演じていますが、こういう少し弱い人間演じさせたら彼は上手いですね。あと大竹しのぶと不倫する料亭の旦那に坂東三津五郎(っていうか未だに坂東八十助の方がしっくりきますが)ですけど、まさに駄目な旦那衆の姿でして、昔はこういう大尽もけっこういたんでしょうねぇって思わされます。そしてこういう駄目男達のおかげで、女性陣が際立っていまして、こちらの顔ぶれも見事だった。
そしてもう一つの見所は、昭和54年という時代を詳細に映像化しているところでしょう。25年前っていう微妙な昔加減なんですけど、やっぱり異世界のように全く現在とは違っていまして、特に葬式シーンではノスタルジーを感じてしまいました。病院のシーンでも隔世の感がありますし、お正月も確かに僕の子供の頃ってあんなでしたよね。家の電話が鳴るんですけど、それに苗字を名乗って出るっていうのも感動。確かに昔は電話を掛けられた方が、電話に出る時に名乗っていましたっけねぇ。今から思えば不思議な風習があったもんだなぁ。
7日(火)
いやー、試験監督の初体験が終わりました。試験時間の20分前に本部に集合なんですが、集合してからふと見たら腕時計が止まっている・・・どうしてこう何かしようという時に限って物が壊れるのかとマーフィーの法則を思いつつ、ジュラルミンケースに入れられた問題と答案用紙を持って会場へ。ってこの時点でこの仰々しさは何なんだろうと驚いた訳ですが、文学部と違って経済学部って何か試験みたいなんですよね^^;
基本的にレポートだったり、前ばらしで解答考えさせて来たりっていう文学部と違って、経済って試験会場で問題を解くんですね。それがすごく驚き。そして試験会場での1科目あたりの受験者の多さに驚き。鷹揚とした雰囲気など微塵もありませんで、座席も友達どおしで近くならないよう、カードを配ってランダムに座らされます。あらかじめ記入された解答用紙を持ち込まないよう、試験ごとに解答用紙の色が変えられます。そしてなんと、遅刻をすると○の中に「遅」と書いたでっかい赤いハンコを解答用紙に押されます(苦笑)。駒場より管理されているかも。
そんな違いに驚きながら試験監督が始まったのですが、カンニング等の不正行為みたいなアトラクションなどなにも無く、淡々と2時間も試験監督していました。しかし観察していると、けっこう解答の仕方って個性がありますねぇ。問題用紙を見るや否や解答を始める奴、問題用紙にいろいろ書きながら試行錯誤を始める奴、いきなりバタッとうつ伏せして黙想始める奴、行き急いでるかのように早く終わろうとする奴、時間配分考えて時計と相談しながら問題解く奴、途中で寝始める奴、等等々。自分が解答する立場だと回り気にしている余裕ってありませんが(っていうかカンニングと間違われるのでやりませんが)、冷静に観察していると面白いですよぉ。あとけっこう左利きの人っているんだぁっていうのが驚きだったかも。
10日(金)
オバチャンたちの間で異様な盛り上がりを見せている冬ソナってあるじゃないですか、あれの主演俳優がヨン様っていうのは知っていたんですよ。で、名字がぺだって言うのも前に聞いてたので、てっきり彼はペ・ヨンサマっていう俳優さんだと思っていたんですよねぇ。ですけど、昨日発覚した所によると、彼のファーストネームはヨンサマではなく、ヨンジュンって言うらしんです。皆さん知ってました???だって、アグネス・チャンっているから、そのバージョンだと思ってペ・ヨンサマって言う俳優の、サマの部分を様とかけて呼んでいるとばかり思っていたんですけどねぇ^^;;; 実際はアグネス・チャンのチャンとは別物で、杉良太郎を杉様って呼ぶ時の様だったんですね。オバチャンパワー恐るべし。
ところで少し旧聞に属しますが、ロシア北オセチアでの学校占拠テロでの被害者は、死者行方不明者500名を越える結果となってしまったんですよね。9.11テロでは飛行機2機がツインビルに突入して死者行方不明者約3000人だったことを考えると、あんな壮絶なことをしなくても、その1/6もの人をテロで殺せてしまうことに愕然とします。ビルの倒壊は象徴的な意味合いを持っていましたが、それに拘らなければ、より簡単にテロれてしまうんですね。ある意味テロの容易さを見せ付けた今回の方が、テロを防ぐという意味ではダメージが大きいかもしれません。
今回のテロによって、ロシアもテロリスト潜伏国の攻撃に向かうようです。それじゃ何も変わらないことは、アメリカを見ていれば分かるんだろうけれども、実際に自国民が500人以上殺された時に、テロが生まれない環境を作ろうという方向性を向くのは至極困難でしょうね。下手な妥協は更なるテロを生むだけですし、だからと言って強気一辺倒ではテロを激化させるだけですし、どちらを向いてもテロは激化して行くんですよね。。。チェチェンに関する限りは、民族独立が一番簡単(ひとまず石油利権は置いておいて)な道筋だと思いますが、蟻の一穴になって、ソビエト帝国が崩壊した如く、ロシア帝国も崩壊しかねないですから、なんともまぁ。。。
しかし我々は他方で欧州統合を目撃しつつ、他方で民族主義の高まりに対面している訳でして、この相矛盾する現象っていうのはどうなっているんでしょうね。徹底的に民族に分解して行くと、それが再び統一に向かうんでしょうか。中途半端な統一がある限りは、まずは民族に分解したいという志向が強く、分解しつくしてしまった時には個々の独自性を認めつつ、経済合理性や他者の尊重を踏まえて統一へ向かう、そんな傾向を示しているような気がしなくも無いですね。グローバリズムにしろ、帝国にしろ、強者が一方的に統一しようとするには、あまりにも抵抗する側が持ち得る武器が強力になり過ぎてしまった。いい意味でもわるい意味でも。
15日(水)
学会事務センターの不明朗な経理で破綻の余波が、経営史学会に来ていたとは大変ですねぇ。僕の論文が載る39-2号まではまだ大丈夫なようですが(っていっても、会員以外の図書館とかへの配送が止まるらしいから、それはそれで大変なんだろうが)、39-3号以降がどうなるかは今のところどうなるか良く分からないとか。。。まぁこういう時は、会員の会費を預けていなかっただけ良かったと開き直るのが一番でしょうね。生物系の会費まで預けていた学会の悲惨さとかと比べたら、ぜんぜん立ち直れるレベルですしね。
ところで先日ドイツビールを皆で飲みに行きまして、味わい深いのドイツっぽい雰囲気のグラスやジョッキで何種類か飲んだあと、別の日ですがイクスピアリに遊びに行ったついでに舞浜地ビールを飲み比べて来たりしていまして、ちょっとビールづいた日々を過ごしています。いやぁ、ちゃんと向き合って飲み比べてみると、けっこうビールの味わいも千差万別で、なかなか奥が深いなぁなんて思っています。そう言えば高校生の頃まではビールって苦くて苦手だったのですが、大学入っていつの間にか平気になっていき、知らないうちにそれなりに美味しく感じるようになっていたんですよねぇ。最近はあまりやりませんが(って6月頃のOB会で若干やっちまったけど)、ビンイッキはなかなか楽しくてよくやっていましたねぇ。あぁ言う飲み方していると、あんまり味わうって言う雰囲気にはなりませんが、最近のしっとり飲むモードだとビールの味わいもなかなかいいかも。
って最近はアルハラとかも注目されているので、他人にお酒を強要することは許されませんが、自分で飲むことは禁止されていないので、飲みたい人は飲むと言う基本が貫徹される事が肝要です。「宮地飲め〜い!」の命令があれば、嫌いじゃないので「宮地飲みま〜す」と喜んで答えてしまうのですが、あれって飲むようにけしかける方の技術って言うのも重要ですからね。僕はあまり飲ませ上手なテンションでないのですが、飲ませ上手なテンションを持っている人って最近減っているよなぁって思う今日この頃。あぁ言う人材ってけっこう貴重なんですけどねぇ。
18日(土)
ついにプロ野球のスト突入ですか。世間一般の認識とは違って、僕はスト反対なんですよね。勿論「たかが選手が」と言い捨てた某オーナーへの怒りは共感するんですが、何を落とし所にストしているのかが分からない。選手会側が要求している、オリ近合併を1年間停止って言うのは、1年間分の赤字を選手たちが補填するわけでもないらしく、言いっぱなしの無責任な提言に過ぎないですからね。選手の年俸総額は285億だとか言いますから、まぁ近鉄赤字の40億円をふくめ各球団の赤字を考えた時に、本当に球界の為に合併中断させることが目的ならば、そうすればいい。
でも選手会側が、それらを含めて、何らかの年俸カットで球団経営を助けるっていう具体的な話は出てこない訳でして、結局は3A2Aレベルの選手たちが、メジャーリーガー並みの賃金と待遇を要求しているだけでしょう。1億円プレーヤーがごまんと居る中で、一般人の感覚からはかけ離れていると思うんですよね。ダラダラ試合をするからテレビ視聴率も落ちるは(っていうか、メジャーと比べてすら異様に長い試合時間、どう考えても毎日3時間以上の試合って狂っているっしょ、観客の事考えているのか?)、ファンにサインとか求められても嫌がるは、球場に観客が足運ばなくても平然としているは、サービス業だっていう認識があるのだろうか?
自分たちは人気があるとして、結局はファンサービスとかを怠ってきたツケが今出ているわけで、イチローが日本時代はブスッとしていたのが、アメリカ行ったらまだまだブスッとはしているものの、サインとかは積極的にやっているところを見ると、やっぱり日本での野球選手は何か違う。日々の試合で憮然とした表情の高橋由伸が、アテネでこぶしを振り上げてプレーしている様子を見ていると、日本での試合は何か欠けている。そんな彼らがストしている状況を、残念だけど僕は応援する気にはならない。バブルの直前くらい落合が1億円プレーヤーになった頃は夢があったが、バブル崩壊後の複数年契約含めて今の年俸高騰は常識はずれでしかない。中村が5億!?清原が2億5千万!?川崎が2億!?よくストなんてするよ。(念押しときますが、球団側の新球団拒否はおかしいと思いますが、じゃ選手会側が正しいのか?って言うのが疑問。ストしないで話し合い続けろと思っているだけです。)
まぁ一番大きな不満の理由は、中日優勝にケチ付けられている点ではあるのは否定しないけどね(苦笑)。
ところで日本の瑣末な話はさておき、イチローのメジャーシーズン最多安打がチョー気になる。残り15試合で22安打がボーダーライン。ジョージ・シスラーという忘れ去られていた名選手が256安打を打ったのは1920年って言うから、日本じゃ恐慌が始まる一方で、宮中某重大事件で薩派と長州がつばぜり合いを演じるは、尼港事件も起きるはっていう頃なんだから、だいたい時代感がつかめるだろう。先日ネットサーフィンしていたら、シスラーの息子が、偉大な記録が再確認されるのが嬉しい反面、毎日イチローの安打数をチェックしているっていう記事を見て、なんか感慨深げ。イチローすんげーなー。ワクワクしてくるよね。
22日(水)
イチローが調子落としているなーなんて思っていたら、いきなり5打数5安打ということで、遂に残り11試合で残り14安打というところまでやってきました。残り12試合で残り19安打と比べると、俄然現実味を帯びてきましたね。現時点243安打ということで、自己ベストを早くも更新して歴代9位となりましたが、ここから先は1930年以前の名プレーヤー達の記録を抜いて行くだけです。ちなみに年間240安打以上を生涯2回以上実現しているのは、我らがイチローと目指すべきジョージ・シスラーの2人だけ。まぁその位安打記録って言うのは大変なんでしょうね。昔は打高投低だったようですが、最近は投手がしっかりしていますし球種も増えていますし守備技術も向上しましたし、安打数を稼ぐのは並大抵のことではないわけで、そんな中での記録更新が待ち遠しい。出来たら夢の260安打台へ向かって。
ところで小泉首相が国連で安保理常任理事国入りに向けての演説していましたねぇ。北朝鮮問題がなかなか進展しないので、歴史に名を残すための作業をこちらへ転換したのでしょうか。凍結されているとはいえ旧敵国条項も残っていますし、それらの見直しで良いタイミングって言えば良いタイミングなんですよね。ブラジルでは感極まったシーンばかり流されていましたが、あれも常任理事国入りのための訪伯っていう側面が強いですからね。ドイツもインドも積極的だし、中国が難癖つけていますが、国連分担金とか考えたら、まぁこの機会にチャンと入っておくべきでしょう。
一時期、アメリカが憲法9条改正問題を取り上げていましたが、欧州各国が日本を入れたい理由は、日米の距離をとらせる事のようですし、アメリカにも欧州にも良い顔しつつ、キャスティングボードを握れる地位を目指すのが肝要でしょうね。独伯と一緒ならば、核保有や武力攻撃が常任理事国入りの条件になることも無いでしょうし、入ったからと言って皆で仲良く爆撃参加ララララ〜ンとはならないでしょうから、入っておいて損は全く存在しないでしょう。国連の行動には、PKOやPKFの一部なんかへの参加で良いんではないでしょうか。
それよりも、この国連分担金で発言権が与えられない中では、国連分担金を払う必要が無いとかがエスカレートし、国連脱退とかの議論が起こる危険性の方が怖い。松岡洋右を罵声ではなく大歓声で迎え入れた国民性ですから、どう世論が転ぶか分からないですからねぇ。まぁ、国連分担金拒否くらいで収まれば良いですが、世界の孤児になるのは好ましくないですからね。勿論交渉当事者は全てをカードに交渉すべきですけど、最後のカードは切らないから価値がある。伝家の宝刀は抜かないから価値がある。っていっても、民主主義国家においては、時として衆愚政治的に切らざるを得ない、抜かざるを得ない場面を作りがちですからね。困った困った。
でも実は注目しているのは、残る1議席、アフリカの代表国がどこになるかって言う点なんですよね。歴史的なそして地理的なそして宗教的な意味合いからエジプトなのか、それとも人口の多さと途上国代表という観点からナイジェリアなのか、経済的な大きさから南アフリカになるのか、この3ヶ国のどこになるかが面白い。今のところ、アラブの声もって言うことでエジプトが若干優勢なのかな。あと気の毒なのはイタリア。経済的には上位にいるのに、英仏独+露と欧州で3+1議席もあるから、過半数欧州っていう訳にもいかず、放置プレーになってますからね。
23日(木)
イチローってやっぱり天才だなー。5安打打って、次の日4安打って、もう笑うしかないだろ。一気に247安打までやってきまして、残り10安打でMLB記録、11安打で新記録、そして残り試合数は10ありますからね。10試合で10安打が出ないって言うことは無いだろ。チョコチョコ調べていましたら、1930年以前って言うと、フォークも無ければ、シンカーも無い。しかも、エラーがヒットにカウントされていた時代のようでして、それで数十年も記録が更新されていなかったわけですね。それを現代のルールの中でイチローが更新してしまう(試合数は若干多いけど)のですから、天才を超えて怪物の方がしっくりいくかもしれませんね。アメリカでは忍者とかエイリアンとか言われているようですが、忍者ってエイリアンかよ!って突っ込みたくなります。
ところで国内は、仙台に楽天新球団で落ち着きそうですね。信用もあるだろうし、雨降って地固まるって言う感じでしょうか。ただ、セ6球団パ6球団にするだけじゃ、問題の本質は何も解決していないんですけどね。巨人戦はオリンピックの裏番組でも無いのに視聴率6.3%まで来ましたから、来期からの放映権料の値下げは確実でしょう。交流戦をやるのでパは若干収入増えるでしょうが焼け石に水、セは収益減が明らかな状況ですからね。新球団黒字化のために楽天がどんな行動に出るか楽しみですが、他球団も追随して、独立採算制でいけるくらいになって貰いたいものです。ちなみにJリーグの方は、単年度で見ると黒字化したチームが殆どのようでして、地域密着で見習うべき点も多いのでは無いのでしょうか。多くの国民が同じ球団を応援するだろうなんていう時代錯誤を犯さなきゃ、まだまだプロ野球は魅力あるソフトに変われると思うんですがねぇ。