2004年12月

4日(土)
 久しぶりに映画の話でも。〈キリング・フィールド〉のローランド・ジョフィ監督、主演はフランスの名優ジェラール・ドパルデュー、ヒロインには〈パルプ・フィクション〉〈キル・ビル〉のユマ・サーマン、恋を邪魔するローザン候役には〈海の上のピアニスト〉のティム・ロス、こんな顔ぶれで作られた大作〈宮廷料理人ヴァテール〉です。2000年カンヌのオープニング上映作品でもあったようです。

 さて、何がすごいかって、金かけてますって言う、これでもかと言うくらいの壮大さ。もともと取り上げたテーマが、フロンドの乱に加担してルイ14世の不興を買ったコンデ大公が、王の機嫌取りに催した壮大な饗宴ですから、当然の如くそれを再現するために金かけるかける。饗宴の方は現在の金額で3兆5千億円程だったようですが、映画制作費は40億円なので可愛いものでしょうか。ハリウッド作品だと40億円なんてはした金ですが、フランス映画で40億円っていうのがすごい。ちなみに宇多田の夫が趣味で作った〈CASSHERN〉ですら50億円かかっていますが、普通の映画では日本でも40億なんてかけること珍しいですからね。北野武〈座頭市〉とかで13億円です。

 広大な宮殿を体感するために、カメラの長回しを多用しているのが特徴的でして、ある人物が歩き続けて、誰かと話すと、今度はその話した相手に焦点が移ってカメラが回り続ける。これで重複場所があっても、より広く空間を感じられる作りになっています。そして、主要人物以外の登場人物の多さ。宮殿の来賓として、裏方として、出入りの商人として、無茶苦茶たくさんの人物が登場することによって、饗宴の盛大さを演出しているのですが、これがまた上手くいっている。背景としての雑然さであって、その一人一人がいい背景しているんですよね。

 って、褒めてきましたけど、芸術的には美しいんですが、映画としては面白いのか?美術館へ通う楽しさはあるが、遊園地に出かける楽しさはない、そんな作品なんですよね。リアリティを追求するあまり、あまり効果音等も使っていないですし、それがメリハリを感じさせない冗長な作りに繋がっている。美的な映画が好きな人には良いのでしょうが、僕はもうちょっと衝撃性を好みますので、相性的にはいまいちかも。オチも複線も理解はできるが、あまり共感しづらいんですよね。芸術家肌とか天才肌にシンパシーも感じないですし、それが素晴らしいとも思わないもので…^^;;;

 あ、そう言えば昨年と同じように、先日AAAのチャリティコンサート行ってきました。従来はエイズ撲滅のチャリティコンサートなんですが、今年は〈新潟がんばれ!〉っていうメッセージも加えたバージョンでした。今年はtrfが〈overnightsensation〉〈survival dAnce〉、ポルノグラフティが〈メリッサ〉〈サウダージ〉、奥井香が〈Oh yeah!〉、麻丘めぐみが〈わたしの彼は左きき〉〈芽ばえ〉、水谷豊が〈やさしさ紙芝居〉〈カリフォルニアコレクション〉、本田美奈子が〈1986年のマリリン〉等々、すっげー豪華豪華豪華なコンサートでした。

 なんだか、子どもがたくさんいるなぁって思っていたら、〈ワンピース〉の主題歌〈ココロのちず〉を歌うBOYSTYLEとかもいたんですね。さらには「しょーごー!」「しょーごー!」っていうちょっとしわ枯れた黄色い声が飛ぶので、175Rか?今井恵理子か?とか思っていたら浜田省吾でした。そうそうMCで驚愕の事実が発覚したのですが、ポルノの岡野って、僕の3日前に生まれているんですね。アチャー。左のおばちゃんが可愛い可愛い言っていたけど・・・

8日(水)
 OECDの調査で日本の学力低下が如実に現れているみたいですね。ここまで政策の失敗がはっきりと目に見えるケースって、なかなか珍しいだろうなぁってある意味関心してしまいます。駄目だ駄目だといわれ続け、何故こんな政策するんだと疑問を持たれ続け、絶対に学力低下をもたらすだけだと断言され、馬鹿が増えるぞと忠告を受け、やっぱりそうなったと言う、極めてレアなケースではないでしょうか。しかし、何でゆとり教育なんていうふざけた実験に突っ走っていったのか。官僚組織の不思議は研究対象としてだけならば非常に興味深いですけどね。

 とっとと馬鹿げた実験から撤退することを明言すべきでしょう。実質的には微妙に微調整はしているようですが、実験の失敗を認めて、はっきりと方針を戻すことが重要なのではないでしょうか。今のままだと、金を持っている家庭の子どもは私立へ逃げ、貧困世帯や下手したら一般家庭の子どもも公立で低レベルな教育を強制させられかねない。公立学校の教師は、子弟を私立学校に通わせるなんていう、ブラックジョークに近い世界がありますが、親の収入・財産・地位に関係なく、誰でも十分な教育が受けられるって言うのは、基本中の基本事項だと思うんですがねぇ。

 そう言えば長らく東大生の親の年収って、平均で1000万を超えているっていう情報が流れていて、うちなんて下げている家庭だなぁって思いながら学生時代を過ごしていましたが、あのイメージは正しくないと訂正されたようです。7割以上が年収1000万円以下の世帯で、年収450万円以下世帯も14%もいるみたいです。じゃぁあの1000万円情報って何なんだ?残りの3割が平均値を異様に上げているって言うことなんだろうか…まぁ一学年に3000人程度いるので、年収1億円の家庭から30人も来れば、平均年収なんて100万円くらい上がっちゃいますからねぇ。平均値と最多分布帯の違いを気をつけないといけませんねぇ。

 あぁそうそう話はまったく変わりますが、投稿論文の時の図表の枚数換算って、どうするのかよく分からないって言う話を聞きまして、確かに自分も最初よく分からなかったんですよね。まぁ、学会ごとに差はあるのでしょうが、基本的にはその学会誌に投稿された過去の論文を眺め、自分の持っている図表と同じような図表を探す。そして、その図表が何文字分(200字単位か、400字単位かは投稿先による)くらいのスペースを使っているのかを数える。これで大体は分かるはずです。まぁ小さめの表で原稿用紙1枚、普通の表で原稿用紙2枚、こらでっかい図表だなって言うときは原稿用紙4枚、その位のいい加減な換算でもあまり誤差は出ませんが(笑)

9日(木)
 小泉内閣は〈対話と圧力〉を掲げながらも、実質的には〈対話〉にウェイトを置き、食糧援助まで行ってきたわけですよね。それに対する北朝鮮からの回答は、偽物の骨を何度も焼いてDNAが困難なようにするって言うふざけた態度だったわけです。数年前ならそれで反論できなかったかもしれませんが、科学技術なんて日進月歩なわけでして、高温で2度焼きしてもDNA鑑定できる水準まで日本の技術力は来ていたようです。ここまでコケにされ続けたら、やはり〈対話〉よりも〈圧力〉へと重心は移さざるを得ないのではないでしょうか。現状のスタンスでは、北朝鮮側は〈対話〉する気は全く無いことが明らかなんですから、方針転換は当然なされるべきだと思いますね。

 まずは食糧援助停止に加えて、庶民が絶対に食べないような松阪牛や高級メロンのストップは当然として、送金のストップまで踏み込むかどうか。それが一番の焦点になって来るでしょう。日本から送金された資金なんて、主に日本に対する、軍事費に使われているだけなんですから、逡巡する必要なんて全く無いと思うんですけどね。別に送金ストップするか否かで、北朝鮮の末端の人々の生活水準がもはや変わる訳でもないでしょうし、まったくためらう必要も無いと思いますね。本当に腹立たしい。

 しかし、サッカーの初戦が北朝鮮なのは因縁めいている。

14日(火)
 実質的な初ボーナスを先週末に頂いたのですが、ちょうど巌南堂が専門書から撤退するとかで、7割引セールなどしていまして、5万円近くそこで使ってしまいました。まぁ、直接今すぐ欲しい本でもなかったのですが、あまりにも安くて・・・『伊勢崎織物同業組合史』5000円、『明治染織経済史』4000円、『明治維新史研究講座全7巻』3500円、『日本女性史全5巻』2500円、『男爵団琢磨伝』12000円、『三井八郎右衛門高棟伝』5000円、『岩崎弥太郎伝上下』3500円、『大系日本国家史全5巻』3500円etc。ね、この気持ち分かって貰えるはず…って言うか分かれ。でも、中村政則『近代日本地主制史研究』とか2000円で買ってしまったが、1冊持っていて2冊目だからなぁ、ちょっと衝動買いし過ぎな気分も。。。

 さて、2002年1月3日だから、彼是3年前に妹と見に行った〈バニラスカイ〉の元映画、〈オープン ユア アイズ〉というスペイン映画(原題は〈Abre los ojos〉)を見ました。98年の東京国際映画祭グランプリ作品です。監督は弱冠25歳だったアレハンドロ・アメナーバル、主演がエドゥアルド・ノリエガ、ヒロイン役には〈バニラスカイ〉と同じペネロペ・クルスです。で、ストーリーに関してはほぼ両者同じですので、ストーリーに関しては該当日を参考に。

 ですけど、演技や技術に関しては、どうしても両者を比較してしまうことになってしまいます。まずは、主人公を追詰める元遊び相手、キャメロン・ディアスとナイワ・ニムリなんですが、キャメロン・ディアスの狂的な演技はよかった。しかし、ナイワ・ニムリはそれとは異なり、どこか妖しげな不気味さ、陰気さがあって、これが甲乙つけ難いんですよねぇ。次にトム・クルーズとエドゥアルド・ノリエガ。ハリウッド的ないい男のトム・クルーズと、ラテン系のノリエガ、男の目から見るとどちらも大して良くないなぁ。まぁ、あんなもんかっていう感じ。そして、ヒロインのペネロペ・クルスとペネロペ・クルス。実はこれが大問題でして、〈バニラスカイ〉の時には「純粋さと小悪魔が共存」と評価しましたが、〈オープンユアアイズ〉の方はそれよりももっと知的。知的な凛とした美しさがそこに兼ね備わっている。断然こっちのペネロペ・クルスの方に惚れます。ってな訳で、キャスティングに関しては、ペネロペ・クルスの見せ方でこちらがお奨め。

 あと、〈バニラスカイ〉はスピード感を演出するカメラ回しが良かったのですが、こちらは相対的にゆったりとしています。しかも明るかったリメイク版に比べ、こちらの作品は全体的にモノトーンを感じさせる薄暗さがある。スペインの街並みがいい味出しているのですが、同じストーリーなのに、ここまで作品の印象に違いが出るんだぁってとっても興味深い。リメイク版で恋も仕事も上手くいっていたのが、元作品では仕事の部分は割愛されているので、それが明るさとスピード感の差に繋がっていると思うんですけどね。もっと近接して両者を見比べていると、もっと良い位置づけを出来そうなんだけど、3年たっても違いが楽しめる、そんな作品です。

20日(月)
 さて、ボーナスに続いて給料(保険料還付付き)も入ったので、久々にCDなんぞを買ってしまいました。ORANGE RANGEの〈musiQ〉とドリカムの〈DIAMOND15〉の2枚です。レンジは最近auのCMでも使われている〈以心電信〉がいいですね。YMOっぽいアレンジで、ちょっとレトロな感じですけど、「僕らはいつも以心電信♪ 2人の距離つなぐテレパシー♪」って言うところがとってもお気に入りでして、ちょっとウザイくらいに頭の中でリフレインしてしまっています。元々は〈ロコローション〉を今更ながら聞きたいなぁって言う感じで買ったのですが、それよりも〈以心電信〉の方がいいかもねー。でも〈ロコローション〉の「刺激が欲しけりゃバ カ ニ ナ レ OhOhOh!」って言うフレーズもいけてる。ドリカムの方も今更ですが〈やさしいキスをして〉が聞きたくて買ったんですよね。でもドリカムはやはりハズレが無い綺麗な歌声でして、全曲じっくりと堪能できそうです。ただ、まだ時間がしっかり取れなくてちゃんとは聞いていない…

 実は、史料編纂所のM助手からのお誘いを頂いて、日本史で一緒だった辺りを中心に、博論会なるものが出来てしまったのですが、これの準備をどうしたもんかと苦悩中…まぁ、みんなお互い同士で尻叩かないと、なかなか博論まで到達しないって言うことで、順次博論構想を報告していくっていう会です。細かい実証部分は前もって読んでおいてもらい、当日は序論と目次に当たる部分を主に報告するって言うスタイルなんですが、この前その第一回目として製糸女工のNさんを見ていて、こりゃ大変だと色々と思った訳ですは…

 だいたい、大きな話って聞いている方は色んな知識をごちゃ混ぜで議論に参加できるので楽しいのですが、報告する方はどの方面からどんな質問が来るか、もう広い視野にたって受け答えしなければいけませんし、ちょっと準備が大変そう過ぎです。。。僕は2月後半くらいなんですが、性根据えて準備しないと不様なことになりそう。。。個別の報告とかは大分慣れてきたのですが、大見得切るタイプの大報告ってあんまりやった事ないからなぁ。確かに博論書くには序論が必要だし、どこかでちゃんとせざるを得ない部分なんだけど、ついにそれをまじめに考え始めないとという境遇に置かれてしまった。。。合掌。アーメン。

 なんてツラツラ考えていたら、高村先生の研究会で、先日出版した編著の合評会をするので1部のコメンテーターをしないかって言うお誘いを受けてしまい、年末急遽その準備に方向転換中です。執筆者前にしてのコメントって、何気に始めてかもしんない。しかも1部って言うことは、内藤さんは欠席らしいけど、神山さんと井川さんは本は読んでいるけどお会いした事ないし、残りは高村先生と鈴木淳さんか。普通に学会報告している方が楽だよなこれって。しかも1時間もいただいてしまったので、いったい何を話して良いのやら。目下思案中。博論会の話などきれいさっぱり忘れてしまうくらい思案中。でもまぁ自分を見つめ治せば、あんまり器用な事できる訳も無いので、地道に読んで地道に疑問点割り出して、地味に質問するくらいしか出来なさそうだなぁ。。。ところで2部と3部のコメンテーターが上山さんと本宮さんらしく、そちらのコメント聞きたい気持ちの方が大きかったりするかも。寺銭だと思って頑張るか(爆)

21日(火)
 そう言えばソニーがプラズマテレビから撤退するなんていうニュースが流れていましたね。液晶テレビに特化していく予定とか。なんだかベータとVHSみたいな感じで、プラズマと液晶って戦っていますが、いったいどちらに趨勢は落ち着くんでしょうねぇ。互換性とか関係ないから、両者並存のまま続いていくんだろうか。僕は前にも書いたと思いますが、去年の北九州へ行くその朝に10年来使っていたブラウン管テレビが壊れてしまったので、東芝の液晶テレビ(って言っても14インチだから大したもんじゃないんだが)に買い換えまして、液晶ユーザーになっています。

 で、液晶テレビに変えてブラウン管との差で衝撃的なことは、リモコンを押して画面が変わるまでの感度が異常に鈍い。この遅さはかなりイライラします。プラズマテレビに関しては知らないのですが、リモコンを押してから画面が変わるまでの時間の改善がなされないと、液晶って言うのはどうも人に勧めづらいですね。ソニーってソニータイマーが掛かっているので基本的に嫌いなメーカー(いくつウォークマン等が壊れたことか)なんですが、東芝よりも画面の変わる感度は良いのだろうか?頑丈さは足りないけど、品質自体はソニーは良いですからね、東芝よりはマシかもね。

 頑丈さで思い出しましたが、お気に入りのIBMがパソコンから撤退なんですよね。この自転車の籠から落としても壊れない、キーボードにお酒をぶちまけてもドライヤーで乾く、このアメリカ人仕様の頑強さが大好きだったのですが、次はどこのメーカーにすべきなんだろうか。。。でかさとかは全く気にならないので、IBMバリの頑丈な機械を作っているメーカーをご存知の方いましたら教えてください。選択基準は叩いても蹴っても酒かけても、ただただ壊れないことです。

29日(水)
 なんだか12月はサイト更新をサボりまくっていましたねぇ。忘年会やらクリパやら報告やら、けっこう忙しかったのでお許しを。新年会の予定は大してまだ埋まっていないので、喜んで参加しまっせー。更新しないうちに、スマトラ沖の大津波なんて起こっていて、防災体制とか色々考えるのですが、それもまた年明けにでも。しかしやっと明日帰省でして、オリビアに会えるのが嬉しくて嬉しくて♪もうお散歩も殆ど出来なくなっているので、今度こそ最後の時間になると思われまして、時間の限り別れを惜しんでくるつもりです。普通に立っているだけで、足が震えているらしいし、そんな自分にもどかしくて、けっこう短期になっているとか。ね、頑張っているでしょ。

 新年は新年で、政治経済学・経済史学会の雑用とかもありまして、早々に東京に戻ってくる予定ですので、短めの帰省なんですけどね。そうそう、この前話していたんですけど、政経史って略すと、音が西経史と同じで紛らわしいのでイマイチでして、NHK方式で(Seiji Keizaigaku Keizaisi)のSKKなんて良いんじゃないかって言うのはどうでしょ。会長がタコ坊主みたいな顔して、絶対に地位と権力にしがみ付くっていう放送見た次の日だかに、飲みながら話していてそんな流れになっていた。NHKに関しても色々書きたいこともあるけど、それもまた年明けだなぁ。それでは皆さん、良い年末年始を。