2006年12月

1日(金)
 〈功名が辻〉で黒田如水がよからぬ事を企んでいるようですが、福岡といえば黒田藩52万石(支藩含)の城下町でして、意外にも加賀前田、仙台伊達、鹿児島島津、肥後細川に継ぐ5番目の大藩だったりします。幕末に大した活躍をしていないので忘れがちですが、肥前鍋島や土佐山内どころか、毛利家なんかよりも大きかったりします。ちゃんと侯爵にもなっていまして、黒田長成が貴族院の副議長を長く務めあげたりしたみたいですね。

 で、そんな黒田家の話はどうでもいいのですが、黒田如水、黒田官兵衛にちなんだ店名である〈如水庵〉のお菓子をお土産に貰ってしまいました。〈博多山笠絵巻〉っていう、コテコテのネーミングのお菓子なんですが、白餡にホワイトチョコレートが練り込んであるらしく、けっこう濃厚でずっしりした味わいです。胃に重いぐらい濃厚なので、さっぱりとした煎茶系のお茶との愛称が抜群です。ちなみに、酒飲みは甘い物が嫌いだと言われますが、酒を飲んでいる時に甘い物がいらないだけで、僕の場合にはしらふの時は甘い物も喜んで頂きますよ。っとこん平みたいな事を書き込みつつ、こん平が心配になる今日この頃。

7日(木)
 先日、九州経済学会が北九州市立大学であったために(そういえば学会に入ったんだからプロフもそのうち変えなきゃ)、小倉へ行ったので、北澤さんに連れられて〈田舎庵〉っていう鰻屋さんに行ってきました。初めて天然物の鰻っていうのを食べたのですが、普通の鰻に比べて嫌らしい脂っぽさがなく、くどくなくてとっても美味しい。関西風の鰻なので、もともとが外がパリッと中がフワッとという鰻なのですが、身の引き締まりによって中の身がしっかりしつつ柔らかいという絶妙さです。5月から秋頃までは天然物がある時もある、っていうお店でして、本当にもう今年の最後の最後っていう幸運な天然鰻との遭遇でした。期間中であっても、運が良くないと天然鰻には出会えないらしく、何度か行っているという北澤さんも初めてのようでした。

 ところで、福島県知事の逮捕、和歌山県知事の逮捕、宮崎県知事も辞職してどうなるか、前岐阜県知事は裏金問題、東京都知事は4男を都の金で豪遊させる、等々地方行政の腐敗と崩壊が凄まじい事になっていますねぇ。しかも和歌山県知事なんかは、地方改革の旗手として地元メディアでも持ち上げられていたようですし、中央が様々な監視に晒されているのに対して、地方があまりにもこれまで監視され無さ過ぎたんじゃないでしょうか。地方分権なんていう掛け声はありますが、地方の腐敗が現状のままでは、中央で腐敗する以上に何が起こるか分からない、っていう恐ろしさを感じます。

 もう選挙権は失ってしまいましたが、東京都民だった身としては、石原都知事が都の金で息子をヨーロッパ旅行させていたっていうのは怒り心頭です。助手時代の少ない給料からも、都民税を徴収されているし、馬鹿にすんなと思いますね。しかも、石原都知事は教育論とかを語るのもお好きで、日本人が恥を感じなくなったから世の中乱れているとか主張しているわけですが、一番の恥知らずなのは、公金で親バカをやっている自分じゃないのかと。こんな恥知らずなことしつつ、平然とした顔でマスキュランな教育論を語っていたんだから、痛々しさも倍増です。前回は、対立候補があまりにも酷すぎたというのもあるので、次の選挙は、真っ当な対立候補が出るといいですねぇ。

8日(金)
 白菜、キャベツを筆頭にして、軒並み野菜類が安くなっているのは嬉しい限りですが、採算が取れないとかで大量の廃棄処分品が出ているっていうのも悲しい限り。豊凶の並はどうやっても避けられないわけですから、豊作の時の農産物って何とかならないもんなのでしょうかねぇ。野菜なので長期に保存したり、遠隔地に輸送したりって言うことは出来ないのですが、その中の成分か何かだけを廉価に取り出して、別の用途や不作の時なんかに利用できるようになれたら、素敵だと思うんですけどねぇ。誰か優秀な科学者さんが、何か発明してくれないかな。ノーベル賞級の大発明になると思うんだけど。

 と、そんな文系チックな科学ネタはさて置き、NTTが西日本、東日本ともに、ついにカードでの料金支払いを開始し始めたようです。これで、水道代金以外の公共料金は、すべてカード支払いに一括できるようになりまして、明細金額もネット上に自然に残って、とっても便利になります。水道は、まぁどうしようもないですかねぇ。しかし、携帯電話に始まった公共料金の支払いも、ガス、電気、固定電話と、順調に便利さを増しているようで何よりです。そのうち、自動車税なんかを初めとする税金も、カードで支払えたりするようになるんでしょうか。

9日(土)
 そうそう、先日読書会で石井寛治・中西聡『産業化と商家経営』名古屋大学出版会を読みました。まぁ、色々と細かい論点は出てきていたのですが、一番大きな論点は、廣海家っていうのを大正から昭和前期にかけても「商家」と位置づけていいんだろうか、っていうことでしょうかねぇ。「地方財閥」と言われていたクラスよりも、更に下のクラスの資産家像が描き出されたことで、非常に興味深く読んでいった訳ですが、商家といわれてしまうと立ち止まらざるを得ない。商業活動がメインだった時代と、投資活動がメインだった時代とで、2冊にするか2部構成にするかした方が、もっとシックリいったような気がしますねぇ。次回はせっかく九州にいるので、岡本幸雄『士族授産と経営』九州大学出版会を取り上げる予定です。でもまぁ、皆の都合から3月開催になりそうですが。

 それにしても福岡の冬の天気は愚図ついています。岐阜、名古屋、東京と、基本的には太平洋側のお天気に慣れ親しんだ身としては、冬っていうのは晴れて乾燥するもんだという先入観があります。だから、この曇るわ、小雨が降るわ、ちゃんとした雨も降るわという、梅雨時か秋雨時かのような天気は、いまいちシックリきませんねぇ。昼間晴れるような時でも、通勤時間とかだとどんやり曇ったりしていますから、もう何が何やらよく分からない。どうして朝は曇るの?しかも、経度の関係で福岡の夜が明けるのは遅いので、窓から外を見ると、とっても早朝に起きている気分になるんだが、時計を見たらそうでもないって言うこともしばしば。体内時計が福岡に適応できていないなぁ。。。

12日(火)
 昨今は大学もアカウンタビリティを求められる世の中でして、記録資料館でも何かアピール出来るものをということで、附属図書館と色々話し合っていたところ、所蔵する炭鉱札(各炭鉱だけで使われていた通貨のことです)や絵葉書(殆んどが炭鉱の絵葉書)を、ネット上で公開してみようという話になりました。電子データ化は修了し、公開の下準備は出来ましたので、これを附属図書館の方へ送って、色々と整理して公開手続きをして貰うだけの状態です。たぶん、1ヶ月くらいではネット上で閲覧できるようになるのではないでしょうか。楽しみにしていてください。

 それらの処理が終わったら、予算が何か取れたら、記録資料館所蔵の地図類を同じように電子データ化するという案もありますし、秘蔵状態になってしまっている史料目録を、順次ネット上へ公開して移行という案もあります。研究者的には史料目録のアップを優先した方が良いのでしょうが、大学としての宣伝的には地図の方が見栄えがしますし、まぁどちらにしろ最終的には全部行うことになるでしょうが、順番に関しては色々と話し合い中です。

 かなり貴重な史料も多いので、史料目録が公開できれば、記録資料館としてもより多くの利用者を見込めると思うのですが、今までネットでの情報公開とかとは縁遠うかった組織なので、まぁボチボチやっていくしかないですねぇ。

15日(金)
 鹿児島土産に小田屋の〈黒かるかん〉なるものを頂いたので賞味中。そもそものかるかんは、米粉に山芋を練りこんだ饅頭風の和菓子でして、鹿児島名物として名高いのですが、それにさらに孟宗竹でつくった竹炭を練りこんだのが、この〈黒かるかん〉になります。と解説を書いてみたものの、実は普通のかるかんを食べたことが無いので、この〈黒かるかん〉が普通のとどう違うのかの解説はできません。しかし、竹炭って言われても色が薄墨色をしているだけで、味わいは炭臭くなくいたって普通です。それよりも、米粉の食感がしっかり残っていて、それがなかなか良い味わいになっているのですが、これがかるかん本来の特徴なんかな?まぁ何にせよ、普通のかるかんを食べて見ないことにはコメントしづらい。。。

 ところで、大名で面白い店を見つけたので行って来ました。〈花亭〉っていう炉辺焼きのお店でして、目の前に七輪を置いて、色んな海産物やお肉を焼いてくれます。で、ここの一番の名物が手長タコの踊り焼きでして、押さえていてくださいと店員さんに言われ、苦しみもがきまくるタコを網に押し付けることに…タコって痛覚があるらしく、火あぶりの刑はかなり苦しいらしいですけど、甘めの身に海水の塩加減がいい味付けになって最高でした。あとは、九州の地鶏や豚、玄界灘や五島列島・対馬なんかから取り寄せた、貝やら魚やら海老やらを焼くのですが、アワビも苦しそうに体をくねらせるし、車海老も跳ねて凄かったです!焼酎&泡盛のラインナップもなかなか良いので、ここも誰かに紹介したいリストに追加ですね。

 あと、博士論文の審査まで、ちょうど1ヶ月となりました。ついでに経済史研で何か報告するようにと言われ、博論審査が終わった後に、博論の話をする事に・・・東大経済は公開審査ではなくクローズなので、審査者以外の人たちは博論内容を良く知らないという事になっていたので、こういう場を作る試みは良いとは思うのですが、せめて審査本番の前が良かったなぁ。審査が終わって精神的に疲れ果てているだろう時に、審査者以外向に報告するって言うのもどうなんだろ。審査コメント受けたばっかりで、けっこう頭ん中が整理付いていない筈なんだけど、審査前の報告準備で報告するしかないからなぁ。しかも、九州の合同部会での報告とは、全く違う報告だから準備も若干必要だし。。。

20日(水)
 師走ですねぇ。なんだかとっても忙しい。友人から年賀状を送るための福岡の住所を聞かれたんだが、すっかり今年は年賀状の事なんて忘れていた。急いで郵便局へ年賀状を買いに行かねば。。。とは思いつつも、だんだんメールで挨拶できる相手は、メールでも良いんじゃないかという気になりつつはあるんだけど、誰まで年賀状を出して、誰からメールにするかとかいう、そういう事を考えるのがウザいから、それならばいっそのこと手間でも金がかかっても年賀状にしてしまえ、っていう気分でまだいる。

 でもどうやら、郵政公社の年賀状売り上げっていうのが、毎年毎年とっても順調に下降線を辿っているようでして、年賀葉書っていう文化自体が消滅していく日も来るんだろうな、っていう気にはさせられます。メールで添付ファイルで写真でも付けてしまえば、年賀状以上に近況報告としては具合いいですし、あとは年賀状からメールへ変えてしまう決断力と、割り切りと、なんて失礼な奴なんだと批難されても耐え得るだけの強靭さがあればいいな、とは思いつつ、今年は年賀状にまだしておこう。。。

年末
 ちょっくら東京へ出かけたついでに、福岡では食べられないケーキでもと思い、ふと高野フルーツパーラーに入り、アップルパイでも買おうと思ったんですよね。ところが、お持ち帰りは3時間までですとか言われてしまって、飛行機の時間まで若干あったもんだから販売拒否されてしまう羽目に・・・仕方なくふと隣を見ると、ルタオが出店しているじゃないか。と言うことで、ルタオの方へ行ってみたら、冷凍保存されているから解凍までに6時間常温でとか言われ、まさにばっちりと言うことでフロマージュ・デューブルを買って帰路につきました。やっぱりルタオのチーズケーキは美味しいですねぇ。福岡で買えないのが残念という反面、小樽から東京経由で福岡に持ち帰れるっていうのは贅沢かもしれないとも思いますが。

 ところで今年の年末年始の帰省は、飛行機でセントレアではなく、まったりと山陽・東海道新幹線ですることに決定。まったりととは言いつつも、のぞみで飛ばしていく訳ですが。でも、今まで12年間を、東京始発から西に向かっていたのに、それとは全く逆方向に博多始発で東に向かうっていうのに、少し感傷的になってしまいます。東京‐新横浜‐小田原‐熱海云々という見慣れた通過駅とは別の、違和感のある駅名が窓外を流れていくっていうのは不思議な気持ちになります。この違和感も年とともに薄れていくものなのでしょうか。