2008年12月

1日(月)
 色々と慌ただしかった2008年も、いつの間にか師走に突入してしまいました。僕は師走に入る前の方がどちらかといえば忙しかったのですが、この度、『近代日本の陶磁器業』という書を名古屋大学出版会の三木信吾氏編集で出版することになりました。もう本文も索引も校了してしまいまして、さらには僕の研究書だとは思えないほどセンスが良い素敵な装丁も見せて貰いまして、今月中に刷り上がる予定です。はしがき、序章、終章、あとがきを別に9章だて、全体で404頁で6,600円となりました。

 名古屋大学出版会といえば、後藤郁夫氏という、我々の世代にとっては伝説的となっている経済史を手掛ける名編集者がいた出版社なのですが、その後を継いだ三木信吾氏の手を経て世に問うことができるのはとても幸せなことだと感じています。いままで多くの研究書を読んできた中で、巻末に書かれている編集者への謝辞っていうものの意味がよく分からなかったのですが、実際に自分が研究書を出す立場になってみて、いかに編集者によって本の質が変わってくるのかということを思い知らされました。

 論文の査読やら、博論の審査やら、今まで僕の研究にコメントを付してきたのは研究者たちだったわけですが、編集者からの視点っていうのは研究者からの視点とはまた違っていまして、その一つ一つの指摘に感心しきりで加筆修正を行ってきました。若い研究者にとっては、編集者から教えられ、育てられるという側面が強いことをヒシヒシと感じた作業でもありました。とは言いましても、間違い等があった場合にすべてが僕に帰すことは言うまでもありませんが。

 ともあれ、論文6本をベースとして作り上げた博士論文を、さらに博士論文審査に基づき加筆修正して、実質新たに1章書き下ろしてしまいましたが、ようやくとここまで辿り着くことができました(技術などの章と、マクロ的な数値の章があるので合計9章)。本として出来上がってくるまでにはもう少しかかりますが、僕の中では既に完成した気分なので、プロフィールも書き加えてしまうことにしましょう。

3日(水)
 先日ご報告した拙著『近代日本の陶磁器業』ですが、名古屋大学出版会のサイトでも掲載が始まりましたので、良かったら見てやってください。まだ装丁がアップされていないのが残念ですが、目次やらは掲載されています。序章、第1章、第2章、第9章、終章が完全な書き下ろし部分でして、それ以外の章も個別論文に則っているように見えますが、第3章と第6章以外はかなり大幅に加筆修正を加えています。年末年始に書店に並べておいても、一般書と違って専門書は売れずに無駄なので、販売戦略的に書店に並ぶのは1月頭になるらしいです。

 本をまとめ終わったことが伝わったからではないでしょうが、そろそろ色々と学会の雑務をやれというお話も舞い込んできました。経営史学会からは幹事を、政治経済学・経済史学会からは編集委員をやってくれとのお話です。経営史学会の幹事の方は、地方部会からの選出なのでいつかは回ってくるだろうなという心構えはあったのですが、政治経済学・経済史学会の方は想定外の依頼でした。担当論文がある時だけ参加してくれればいいとの話ですが、その際には自腹で東京と福岡を往復かぁっと、若干切なくなりつつ引き受けました。

 そういえば前に、ドイツ経済史の馬場さんなんかと飲み会で話していた時に、福岡は東京と違って学会の雑務が回ってこないから気楽で楽しいですよぉ、なんて自慢げに話していたのが原因かもなぁっという気がします。しかし、これまで論文は投稿する側だけだったので、投稿する時に編集委員の顔ぶれを見て、あれが審査者かな、これが審査者かな、なんていうことを夢想していたのですが、逆にそうやって編集委員リストを見られる側になるのかぁっと思うと、なかなか感慨深いものがあります。

10日(水)
 嫁さんの実家から松葉ガニとメスのセコガニを送って頂きまして、鍋やら味噌汁やらにして堪能しました。松葉ガニとは、ズワイガニのうち鳥取で水揚げされたものが名乗っているようでして、東海から関東にかけてはあまり耳にしないネーミングだったのですが、基本的に越前ガニと同じ種類に属しています。とっても高価なので、こんなに送ってもらってと恐縮しながらも、十二分に味わいました。ズワイガニは身が殻から離れやすいので、とっても食べやすいですよねぇ。

 あと、メスのセコガニっていうのは、地元以外ではあまり出回っていないものらしく、僕も初めて食しました。お腹に卵を抱えているのでメスだとすぐわかるのですが、外子と言われる今年産卵する卵と、内子という来年産卵する卵の2種類があるのが特徴でして、僕も嫁も共に内子の方が好きなのでなかなか困ったものです。でも、この内子が見事でして、普通のカニでも時々内子が入っているものを見かけますが、セコガニの内子の多さにはビックリさせられます。

 しかし嫁と話していてさらに驚いたのは、ズワイガニはいくらでも食べた事があるんだけれども、毛ガニっていうカニは生まれてこの方、一度も食べた事がないとのこと。確かに毛ガニっていうと、北海道などの北の海で収穫されるカニですから、わざわざズワイガニの産地出身者が食べることっていうのも無いんでしょう。毛ガニはズワイガニと違って、毛むくじゃらで殻が痛痒いし、嫁に食べさせたら嫌いにならないかとちょっと心配してしまいます。。。

18日(木)
 講義とかをしているときに自動車産業への学生の関心は高いですから、僕も講義の中で色々と自動車の話はするわけですけども、やっぱりフォーディズムの画期性というのは強調することになります。しかも、大量生産云々もそうですけども、それよりも、高級品で奢侈品あった自動車が、フォードで働く従業員でも購入できる水準へと価格を下げたというのは、話していてもとっても気持ちのいい話なんですよね。講義中の話といっても、話していて楽しい話、心痛むトピックとありますが、これは間違いなく前者です。

 しかし、そのフォーディズムの精神はどこへ行ってしまったのやら、自動車会社の派遣切りのニュースを聞いていると、そりゃ自動車売れないよなぁっと思うわけです。しかし、派遣労働者みたいな使い捨ての労働力を好み、国民から購買力を奪うように仕向けた功労者は、経団連の会長をしていた奥田氏をはじめとした自動車会社の方たちなわけですから、消費者もいないところでモノだけ作り続けるのも、ある面では奥田氏らの理想とする社会なのかも知れませんけどねぇ。

22日(月)
 本がついに出来あがりまして、僕の所へ真っ先に送って頂きチェック、それから献本先へ発送という手筈に今日から移行していきます。というわけで、出来上がった本をニンマリと眺めていたのですが、なんと大変なミスを一つ発覚。大学院時代にとってもお世話になった先輩への謝辞を、一名欠落させてしまっていました。もっとお世話になっていない人の名前も入っているのに、どうして落としてしまったのかと驚愕中です。3回もチェックしたのに(号泣)そのうち直接謝るとして、もしかしたら他にも間違いがあるかもと怖くなり、もうページを開くことができません。やはり出来上がった本は見ないのが一番ですよね。。。

 ミスといえば、少々前に非常勤で西南学院大学へ行った時のことですが、非常勤講師控室のハンガーから間違えて他人のコートを着て帰ってしまいました。僕のコートは10年くらい前に買ったバーバリーのよれよれコートなのですが、家に帰ったら新品の上質の生地に変わっていることを嫁が発覚しまして、何なんだこれはーっということで翌日謝り方々西南まで届けに行きました。僕にコートを間違えられてしまった人は、新品のバーバリーが10年物のバーバリーに変わっていたのでさぞかし落胆したことでしょう。妖精さんの悪戯ではありませんでした。

 というわけで今年も師走はドタバタしていますが、なんとか年末まで頑張りましょう。。。

31(水)
 なんだか訳分からないうちに大晦日になってしまいました。年内に終わらせなきゃいけないものも、何だかづるづると年明けに持ち越しです。今年一年も色々と慌ただしい年だったのですが、結局最後まで慌ただしいまま2008年は暮れていきそうです。皆さんの年末年始が平穏無事であることを祈るばかりです。

 今年、そういえば書き忘れていた出来事として、高校生クイズで母校の東海高校が優勝していたのがありました。医学部進学日本一なんて紹介されていましたが、医学部へ行くのは生理的にキツイ僕からしてみると、高校時代の同期にも医者になった奴はたくさんいるので尊敬するばかりです。僕ならば、実習で倒れる自信が確実にあります。まぁ、開成高校が決勝戦の相手だったので、対立構図を作るためにはいいキャッチフレーズだったのでしょうけどね。それと、決勝戦は圧勝だったところを、番組の編集で接戦のように作り上げられたと、後日ネットで彼らが騒いでいたのも印象的でした。テレビなんて面白おかしく作り上げてナンボの世界だって、世間にスレた30代は思ってしまうのですが、彼らの純粋さは見習いたいものです。

 あと、年末になってこの前出版した本の、献本の請求書が舞い込んできました。200冊ほども献本して配ってしまった関係で、請求書の金額にクラクラとしています。こういうのは覚悟をしていたとはいえ、実際に請求書に書かれた金額を見ていると心臓に良くないですよね。。。本当はもっと配りたい人達もいたのですが、金銭的にこの辺で限界が来てしまったのでご容赦ください。まぁ、大学に入学してから15年、専門に進学してからカウントしても13年、それだけあると色々な人達の御厄介になってきたんだなぁってしみじみと感じます。まだまだ至らぬところは多々あると思いますが、来年もまたご指導のほどお願いいたします。