2009年1月

6日(火)
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。なんだかニュースを見ていたら、ウェッジウッドが倒産というニュースが飛び込んでまいりまして、研究の対象として陶磁器業を扱ってきた身としましては、なかなか感慨深いものがあります。日本が国際舞台に飛びでた明治期っていうのは、アメリカ市場を制覇していたのはウェッジウッドに代表されるイギリス製陶磁器でして、そのイメージが強烈にあるからこそ猶さらに印象的なニュースです。ウェッジウッドは特に日本の高級陶磁器市場でも頑張っていたメーカーですし、デパートでもお馴染みでしたからねぇ。少々寂しくなってしまいます。

 と、辛気臭いニュースから入らざるを得ない2009年ですが、今年はどんな年になるのでしょうか。100年に1度の大不況などという話が出ていますが、景気のいい話がほとんど無い年になりそうなのは困ったものです。特に労働市場をめぐるトピックは年末年始にかけても深刻なものが多かったのですが、政府・国会共に派遣労働者の問題は早晩手をつけざるを得ないでしょう。しかし、昨年の秋葉原での無差別殺傷事件や、厚生省OB殺害への称賛を見ていても、派遣問題が片付くのが先か、派遣問題の責任者たちへのテロが先かという、そういう段階に既になってしまっているような気がします。

 あと今年は、郵政選挙による小泉自民党の圧勝から4年、泣いても笑っても確実に総選挙がある年であります。景気が悪い年に与党が勝つ可能性はかなり低いですから、8割方、民主党への政権交代が起こると思っています。ただし一つだけ気になる点がありまして、それが小沢一郎民主党党首の健康問題です。彼が心臓に持病を抱えていることは有名ですが、昨年も何度も入退院を繰り返していますし、果たして総理大臣の激務を耐え得ることができる体なのか否かが、さっぱり伝わってきません。黒髪から総白髪に変わってしまった小泉総理も印象的でしたが、総理中に急死した小渕総理や大平総理、体の不調で退陣せざるを得なかった安倍総理や石橋総理など、健康に前々から難がある小沢一郎がどうなるか、それが一番の焦点ではないでしょうかねぇ。

 それと昨年末に気になっていたニュースが、TVの民放各社や、新聞各社が軒並み赤字になっていることです。新聞ですと再販制、TVですと放送免許による電波独占によって、基本的には巨利を得るメカニズムを作り上げてきた両業界ですけど、昨年はそのような商売に陰りが出てきた年でもありました。これまで電通や博報堂を2強(1強1中か?)とする広告代理店を通じて、巨額の広告料が入ることによって成立していた業界ですが、宣伝効果があるかないか判断しづらい中で、より直接的なネット広告や販促活動へと移行しているのが一つあります。サブプライム以降の景気悪化の中で、企業が宣伝・広告費を削っているのが追い打ちをかけています。そしてもう一つ、新聞やTVが提供するコンテンツが陳腐化して、消費者へ魅力をアピールできなくなっているのがあります。この3つが相乗して発生してしまっているため、衰退産業化しているのが現状です。地方でいくつか倒産するメディアが出るかどうか、それが今年の注目すべき点ではないでしょうか。

 とまぁ、今年の頭に書く話題は、どれも景気のいい話は出づらい年明けですねぇ。

9日(金)
 昨年9月頭に鹿児島へ学会報告で行った時に、枇杷の葉茶っていうのを買ってきて、試飲で結構おしかったので大容量のにその時したんですよね。で、うちで嫁さんに湧かして貰って時々飲んでいたのですが、最近は論文抱えていて彼女も忙しいので、自分で沸かして飲んでくれって言われたんですよ。それで、枇杷の葉茶の袋を開けたら目が点で、葉っぱだけが入っているんですよねぇ。てっきり小分けした袋に入っていると思っていたもんだから、目が点になって「これおかしいよ」って嫁に言ったら、今まで知らなかったのかと、どつかれてしまいました。でも枇杷の葉のお茶美味しいですよ。根占枇杷茶(ねじめびわちゃ)っていうので、鹿児島大学と共同開発したものらしいです。

 鹿児島で思い出した、今年は奄美のトカラ列島を中心にして、なんと数分間の皆既日食が見られます。日本列島全域でそれなりの部分日食が見られるようで、沖縄以外では基本的に南へ、西へ行くほど欠ける部分が多いようです。福岡も本州よりは欠ける部分が多いと思いますし、ちょっと楽しみにしています。ただ、7月22日ということで、台風シーズンでもありますからその点が気にかかるところですが、福岡だと9時35分からかけ始めて、10時54分に最大、12時15分まで部分日食が続くということで、しかも9割方欠けるそうです。これが、鹿児島市だと9割7分まで太陽が欠け、種子島でも皆既日食までは行きませんが9割9分かけてダイヤモンドリングは見られるようです。

 そんなわけでして、トカラ列島への皆既日食ツアーは既に30万円とかいう豪勢なものが、天文ファンを中心に完売してしまっているようですが、ダイヤモンドリングが見られる種子島や、9割7分欠ける鹿児島、9割欠ける福岡などへも旅行を兼ねて遊びに来て貰いたいものです。ちなみに、大阪で8割3分、名古屋で8割、東京で7割5分欠けるみたいですが、1割も欠け方が違ったら、全く感動の度合いが違うと思いますので、是非とも九州旅行も兼ねて満喫しに来てください。

14日(水)
 少し前に、学会の雑務を色々とお願いされてという話で、ドイツ史の馬場先生に昔色々と話したことを紹介したのですが、馬場先生から自分じゃないよ〜と言われてしまいました(汗)しかしまぁ、九州だと学会の雑用が少なくて気楽だという話がどこからからは伝わったのでしょう。色んなところで喋っていましたから…

 ところで、プロフィールを更新しておきました。まだ刊行はされていませんが、九大経済学部の方の『経済学研究』に、十七銀行っていう、現在の福岡銀行の前身の一つに関して載せる論文が1つと、一昨年に刊行された福岡・博多の近代に関する迎由理男・永江眞夫編著の書評を『エネルギー史研究』に載せるのと、国内会議録のペーパー1つ、これで2008年度の研究関係は全て終わりになります。専門書1冊、論文2つ、書評2つ、雑文3つ、学会報告3つということで、例年にない沢山の業績があるように見えます。我ながら驚くほどの数で、今後二度とこんな状態になることがあるか分かりません。

 でもこれ、昨年度に書いていて活字化されていなかっただけのものも多いので、研究者の業績を単年度で見ることがどれだけ馬鹿げているかという話にもなります。研究者の業績評価をするにしても、少なくとも3年できれば10年くらいのスパンで見ていかないと、そんなに毎年毎年、コンスタントに同じような業績があげられる訳はないです。それにもしそうするなら、研究自体をこじんまりとした物にせざるを得なくなります。システムが単年度の業績評価なら、それに応じた研究をしろと言われれば出来ますから、やってしまうでしょうけど、それって本末転倒だと思うんですよね。

 ちなみに、昨年度に書いたのに今年度にまだ活字になっていないものがありますから、また今年度書いて活字化されていない物もありますから、来年度の業績には来年度と今年度と昨年度の業績が混在することになるでしょう。でもそれって、別に来年度だけの業績じゃないんだけどなぁ。毎年、年度末が近付くこの季節になると感じることですが、いったい自分はいつの業績としてカウントされるものを、今研究をしているのかなんて、当事者にも全く分かっていないもんです。営利企業のような業績評価って、全く不適切な業界だと思うんだけどなぁ。。。

 話を今年度の業績に戻しますが、今年度は非常勤2コマを頼まれたために、それ用の新規講義ノート作りに結構時間をとられていたので、研究に費やした時間としては昨年度の方がかなり多いんですよね。さらに昨年度は、著書の出版準備のためにかなりの時間を費やしていたこともあり、論文0本、雑文2つ、学会報告0という業績だったりします。今年度と比べた時のみすぼらしさは見事なもんです。でも、そんなもんなんですよ。

18日(日)
 嫁さんも論文を書き終えたっていうことで、久々に映画館へ映画を見に行くのが解禁されまして堪能してきました。〈K-20怪人二十面相・伝〉ということで、江戸川乱歩の二十面相をモチーフとしつつ書かれた北村想の小説が原作になっています。監督は、ハスキーブームを巻き起こした〈動物のお医者さん〉のテレ朝でのドラマ化などを手掛けた佐藤嗣麻子。日本テレビ開局55周年記念らしいです。1941年の開戦が未然に防げた仮想世界で、羽柴財閥とニコラ・テスラによるテスラ装置(テスラコイル)という電機機械をめぐって騒動は勃発します。

 主演は金城武と松たか子、脇を中村トオル、国村隼、高島礼子などが固めています。鹿賀丈史、益岡徹、要潤、松重豊などなど渋い面々も並んでいます。しかし、この作品はそういうことは関係ありません。なんと、九州大学の旧応用力学研究所、通称旧応力研が舞台として登場しているんですね。場所は箱崎キャンパスの、僕がいる研究室のまん前です。設定では陸軍の情報系の研究所っていうことになっていまして、陸軍の精鋭100名が武装して護っていることになっています。九州大学の正門が、陸軍研究施設の正門として使われていたりもします。

 そんな旧応力研ですが、金城武が屋上から飛び降りるは、屋内は爆破されてガラスや土砂が飛び散るは、陸軍の精鋭部隊が廊下や階段を駆け巡るはと、無茶苦茶大活躍しています。しかも、CGによる修正によって実物よりもかなり美しく手入れが行き届いた建物になっていまして、いうなれば、旧応力研が主役たちを食っているくらい目立っています。旧応力研に出入りしたことがある人は、絶対に見ないと損をしていまします。

 色んなところで触れているのですが、僕が赴任する前に福岡県西方沖地震というものが発生していまして、昭和の初頭に建てられたこの旧応力研は、学内でも最も建物へのヒビなどが激しく入った建物でした。そのため、現在は完全閉鎖になってしまっていますが、この〈K-20〉での雄姿は閉鎖直前に撮影が許されたものなのです。ですから、旧応力研にとってはこれが最初で最後の大舞台っていうことになります。当記録資料館(旧石炭研)もこの旧応力研に資料室を持っていたので、現在は移転してしまいましたが、そういう意味でもとっても縁が深い建物であります。

 九州大学をはじめとして、三井の万田坑竪坑やぐら、門司港レトロなどなど、北部九州の名所が満載になっています。福岡県が誘致したのでしょうか、けっこう地元の人間には楽しいシーンが盛り沢山でして、まだ見ていない方々は是非ともご覧ください。

27日(火)
 先週末は大雪でしたが、僕が福岡に来てから初めての大雪でありました。テンションも上がって、携帯で雪景色を映して方々へ送ったりもしていましたが、雪っていうのは優雅でいいですねぇ。という話をしたら、山陰出身で豪雪に慣れている嫁には叱られてしまいましたが、冬は乾燥した快晴という太平洋側の天気に慣れてきた者としては、大雪が降って道々に雪ダルマが作られていたりしたら、平常心でいられないのは仕方ないと思うんですよね。

 そんな週末、久しぶりにCDTVを見ていたら、秋元順子〈愛のままで…〉っていうよく分からない曲がシングル1位になっていて驚いたのですが、どうやら年末の〈紅白歌合戦〉で人気に火が付き、そのままシングルチャートを駆け上がって61歳での1位獲得ということになったみたいです。中島みゆきが黒部峡谷で〈地上の星〉を歌って以来、紅白効果っていうのは巷で囁かれていたのですが、今年の紅白効果は全くすごいもんです。女性シンガーの歌謡曲でシングルチャートのトップ3入りしたのは、なんとなんと瀬川瑛子の〈命くれない〉1988年以来という話もまた驚きです。瀬川瑛子が1位だった時代って、僕もまだ中学生の頃の話でして、昭和っていう感じがします。しかし、61歳の女性が、AquaTimesやシドやAAAやmisonoのグループを抑えて首位とはねぇ。

 まぁ、昨今は音楽CDを購入するというライフスタイル自体が後景に退いている関係もあって、CDの売上ランキングがどれだけ実態を映し出しているかという問題は確かにあります。現在の主な音楽市場は、楽曲のダウンロードであって、CDを購入するのは長く長く聴くための保存用として持っておきたいか、熱烈なファンか、高齢者かという感じになっているので、高齢者やマニアが購入する歌手のランキングは高く出ます。90年代、2000年代前半よりも、演歌などもランキングに入りやすくなっていたり、アニメソングや外人歌手がランキングに入ってきているのもそのためです。しかし、そういう事情を割り引いて見るにしろ、それでも61歳にして頑張っているのには頭が下がりますねぇ。