2009年7月

3日(金)
 郵政の西川社長の問題で鳩山弟大臣が辞任したため、麻生自民党が苦境に陥っていると思っていたら、今度は鳩山兄民主党党首が故人献金なんていう形をはじめとして、金の不明朗な動きが多額にのぼっているということでして、与党も野党もグダグダな状況が続いています。総選挙が近いのにというべきか、総選挙が近いからというべきか、あっちもこっちもよく不祥事を連発するもんだと感心してしまいます。それにしても鳩山兄弟っていうのは興味深い存在でして、後世の歴史家たちはネタに尽きないことでしょう。

 ところで鳩山家と言えば、和夫、一郎、威一郎と続く数少ない4世代議士の家なのは有名です。ちなみに、僕の出身の岐阜県東濃地方の古屋圭司家っていうのも4世代議士の家です。前回の郵政選挙で、郵政民営化に反対して自民党を追い出されつつ逆風の中で当選した人物の一人でして、地盤の固さは鉄板です。この古屋家、祖父の古屋慶隆は、東京大空襲の焼夷弾で死去した現職代議士としても有名です。小ネタでした。

6日(月)
 川勝平太氏が静岡県知事になりましたねぇ。経済史学者の知事って初めてですかね?来週が東京都議選挙ですし、ここで自民党が大きく負けてくるようだと、年の初めには予想もしなかった2人をトップとして、総選挙が戦われることになりそうです。だいたい、小沢一郎が民主党党首を降りていることの方が予想できませんでしたから、まぁこっちの方が想定の範囲内というところでしょうか。でも、自民党は総選挙に勝つつもりがあるならば、日本初の女性首相を作り上げてくるでしょうね。小池百合子か野田聖子か、はたまた別の誰かかは知りませんが、自民党が総選挙で勝つためには、たぶんこれしか方法がないでしょう。

 ところで、久しぶりにまとまった時間がゆったりと取れたので、〈天使と悪魔〉を見てきました。言わずと知れた、トム・ハンクス主演の〈ダヴィンチ・コード〉の二作目でして、原作も同じダン・ブラウンのものです。原作の方を既に読んでしまっていたんですが、映画は原作から結構変えられています。ローマカトリックを汚すような設定や描写は極力省かれてしまっていまして、ヴァチカンがどう感じるかはともかく、そういう意味では相対的にかなり穏当なストーリーになっています。ですから、そういう宗教的配慮によって削がれてしまったスリリングさを、どうやって回復させるのかっていうのが腕の見せ所でした。

 ネタバレになってしまうのであまり詳細にはあれなんですが、ヴァチカン及びローマ市内の教会や遺跡をこれでもかと使っており、そういう意味からも見所は満載です。しかし、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会とサンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会では、ラファエロ作の教会内の撮影が嫌がられていますし、〈ダヴィンチ・コード〉の時にもそうでしたが、ダン・ブラウンの作品っていうのは敬虔なカトリック教徒からしてみればかなり忌むべきもののようでして、全面的に協力とはいかなかったようです。まぁ、次期ローマ教皇候補が4人も誘拐されて、次々殺されていくっていうお話なんですから、当然と言えば当然ですけどね。

 あと、イスラエル人女優のアイェレット・ゾラーがスイスCERNの生物物理学者をやっていたり、スコットランド人のユアン・マクレガーがカメルレンゴ(彼のために役名や設定を変更)だったり、イタリア人のピエルフランチェスコ・ファヴィーノがローマ市警(これも彼のために設定変更)だったり、スウェーデン人のステラン・スカルスガルドをスイス衛兵隊長にしたり、ドイツ人のアーミン・ミューター=スタールが大選皇枢機卿だったり、デンマーク人のニコライ・リー・カースが暗殺者役だったりと、かなりキャスティングの国籍が入り乱れています。原作に忠実であるよりも、キャストによって設定まで変えられてしまっていて、多国籍にしたかったんだなぁっていうのが伝わってきます。そういう意味でこの作品は、ヨーロッパの中心であるヴァチカンを象徴的に描いているのかも知れませんねぇ。

14日(火)
 そういえば、先日福岡市の方に提出したペーパーは、博多織に関するものなんですけど、明治6・7両年に出された『府県物産表』っていう日本初の統計のデータの細部を、若干分析してやるのが一つ目の柱です。日本初の統計書だけあって、データが結構使い辛いものなんですが、だからこそ研究者の腕の見せどころという感がある史料です。ちなみに、『府県物産表』を編纂するという布告が出されたのが明治3年の10月18日(旧暦だと9月24日)のことらしく、僕の誕生日でもある10月18日は統計の日かつ郷ひろみの誕生日だったりします。

 話は変わりますが、東京都議選挙で敗北した自民党がなかなか動きませんねぇ。このまま玉砕する覚悟なんでしょうか。しかし玉砕へと突っ込んでいくとなると、総理総裁の権限というのは、いざとなると途轍もなく大きなものなんだなぁという感慨に耽らざるを得ません。従来の、総選挙ではない参議院選や地方選挙を理由として退陣していた総理は、大きな誤解に基づいて行動していたのか、過去に存在した暗黙のルール下で行動していたのか、それとも中選挙区と小選挙区という選挙制度の違いが重要なのか、はたまた別の何かなのかは分かりませんが、麻生首相の行動パターンが独特なのは確かです。

 従来の自民党首相であれば、確実に都議会選挙のここまでの敗北、しかも総選挙を間近にしての大敗北だったら、ほぼ間違いなく総辞職という選択肢を選んだはずです。より劇場型の総理交代を狙っていないとも言い切れませんが、このままいくと単に無謀な玉砕になるだけのような気が・・・しかし常識的に、そんな選択をするものなのかな・・・

22日(水)
 日食でした。福岡でもかなりの欠け具合でして、僕が今まで体験した中でも最も欠け方が大きく、殆んど弓のようなカーブを描く細い弧になっていました。しかし驚きだったのは、それほど細くなってしまった太陽の弧からも、燦々と陽の光というのは降り注いでいまして、それがかなり意外だったんですね。新聞とかネットとかの上に溢れている日食の写真や映像というものは、すべて日食が見やすいように黒いカヴァーをかけた上でのものであって、全然実物の太陽はそんなのではないんですね。完全に騙されていました。

 しかし、トカラ列島は見事に暴風雨だったようです。40万円近くのツアーを組んだ旅行社に乗った方々は気の毒ですが、天気は時の運ですからねぇ。でも、福岡は薄曇りだったのですが、太陽が欠けるのに比例して少々薄暗くなっていきましたから、てっきり雲が厚くなって雨雲化しているもんだとばっかり思ったんですよ。ところが外を見てみると、これが日食の影響だったんですね。ですから、太陽自体を見ていると結構な光が降り注いでいて、見続けると目に残像が焼き付いてしまう感じなのですが、日向としては薄暗くなってしまうんですよね。しかも、かなり温度も低くなっていまして、やっぱり自然界ってすごいよなぁ。

 でもこれが皆既日食なり、ダイヤモンドリングなりだったら、もっと美しかっただろうなと思うと、少々勿体ない気がしてきます。まぁ、1年か2年に1回は、世界中のどこかでは皆既日食が起こっていたりしますから、金さえかければいくらでも見られるんですよね。今回も、客船に乗って船上から観光するツアーとかありましたし、こういうのこそ老後の楽しみにとっておきたいもんですね。

29日(水)
 先週末の集中豪雨は、福岡にも多大な影響を与えました。合計で500ミリも降ったとかで、バケツを引っ繰り返したようなという表現がまさに適切な、そういう降り方をしていました。大学から家に帰るだけで、傘を差しているのにずぶ濡れ、しかも上から横からの雨もそうですが、地上に溜っている水たまりというには大き過ぎる水流の中を歩かなければならず、そういう濡れ方をしてしまったものです。亜熱帯化しているなぁっと云う気はするのですが、雨季というかスコールというか、そういう感じでしたね。

 福岡市は小さな川がいくつもある関係で、市内のいたるところでも避難勧告が出されていましたが、幸い我が家の辺りは川からは遠い関係で、引き籠ってやり過ごせば十分な状況でした。大雨は金曜から土曜にかけてがピークでしたが、断続的に日曜まで降り続いてしまったため、近所の筥崎宮でやっている夏越祭りは閑散として少し淋しそうな装いでした。まぁ、協賛している海の中道は臨時閉鎖、西部ガスなども事故に備えて待機でしょうし、致し方ないと言えば致し方ないのですけどね。

 このクラスの大雨になってしまうと、雨風で止まりやすいJRは勿論のこととして、福岡空港も閉鎖、西鉄もストップ、高速道路や道路も到る所でがけ崩れということで、ちょっとした陸の孤島化してしまっていました。北九州や筑豊などでも大きな被害を出していますし、山口県は更に多くの死者まで出していますし、このクラスの集中豪雨が関東や関西で起きていたら、もっと甚大なこととなっていたことでしょう。想定される短時間雨量とか、ここ数年から十数年の間に、劇的に変化している印象を受けますねぇ。

 ところで、川村カオリ、僕らの世代には川村かおりと平仮名表記の方が馴染み深いですが、彼女が乳癌で亡くなってしまいました。まだ38歳とのことで残念です。山田邦子の〈やまだかつてないテレビ〉で取り上げられてヒットした〈神様が降りてくる夜〉が多分一番のヒット曲だと思いますが、その前後、松任谷由美のオールナイトニッポンの後、土曜2部のオールナイトニッポン担当だったようですが、残念ながら東海ラジオでは土曜2部はフジ系列を放送してくれなかったのが惜しまれます。

 そんな川村かおりの隠れたヒット曲というと、〈Zoo〉になります。菅野美穂が演じた蓮井朱夏、〈愛をください〉の中で100万枚のセールスをしたという形で歌われていましたが、実際のセールスも50万枚超というヒットを飛ばしましたし、辻仁成らによるECHOES版もかなり売れていました。しかしもともとは、辻仁成が川村かおりのために用意した曲でして、川村かおりのデビュー曲としてが世に出た最初だったわけです。この〈Zoo〉っていうのは大好きな曲の一つでして、透き通った声で歌われるシニカルな歌詞というバランスがいいんですよね。ご冥福をお祈りします。