2009年10月

5日(月)
 お酒を飲み始めたときに、どこまで飲んだところで止めるのか、その日の酒量をどのくらいにするのか、そういう点をコントロールできない人間は典型的なアルコール依存症です。明日は休みだからと飲みたい時に大量に飲んでいるのとは違いまして、次の日に何か用事があると分かっていても、飲み始めると止まらなくなってしまうという症状です。〈ザ・ホワイトハウス〉で大統領補佐官のレオ・マクギャリーがアルコール依存症に苦しんでいたシーンが思い起こされますが、お酒を飲まなければなんら問題はないのに、ひとたびアルコールに口をつけてしまうと…ていう状態です。

 中川昭一元大臣も、典型的なアルコール依存症の状況であったことは周知の事実でして、しかもかなり重度のアルコール依存症だったようです。大臣室でも飲んでいたなんて言う話もよくニュースで流れていました。職務中に飲酒しないといられないのは、重度の中でも特に重度です。こういう状況の場合には、すぐに治療を始めた方が良いわけでして、代議士を落選したっていうのは彼にとって最期の治療の機会だったはずです。それを、落選をしたということが更に飲酒を進めていたみたいでして、今回の死去の原因が何かはまだ分かりませんが、家族や後援会も、次の選挙云々ではなく、まずはアルコール依存症の治療にこそ配慮してやるべきだったのでしょう。

 しかし、56歳とは若いですねぇ。しかも父親である中川一郎の一件がふと頭を過ぎりますから、ニュースの焦点は最初は自殺か否かだったようです。自殺ではなさそうだということで報道されていますが、中川一郎が自殺したのは57歳の時でして、父子続けて56・7というかなり若い年齢で命を落とすことになっています。昨年のローマでのG7の失態によって、総理への道は実質的に閉ざされてしまったとはいえ、まだまだ56歳なんだから一人間としてやれることはあった筈なんですが、気の毒な限りです。ご冥福を。

7日(水)
 少々前の話になりますが、社会経済史学会で東洋大学に行ったついでに、昔あの辺に住んでいたこともあってブラブラと散策をしていました。団子坂も下って、不忍通りまで足を伸ばしたので、散歩っていっても結構歩いているのですが、そうしたら5年前には見かけなかった店舗が店頭に古本を並べていたんですね。それで、ちょこちょこ見ていたら、美術史関係の面白そうな新書があって、でもあまり値引きがしていなくて500円でしたが、まぁ面白そうなので買ってしまおうということで店に入ったわけです。

 そうしたら、お店のオヤジさんがボソッと話しかけてきて、値段設定てこれで適切なんでしょうか、っていう感じで質問してきたわけです。たぶんの店をオープンしたばかりで、あまり価格帯がよく分からないままお店を始めてしまったのでしょう。で、僕はと言えば高いかなとも思いながら、500円の親書を古本でもっていたわけなんですが、まぁこのくらいじゃないですかねぇと、その場はお茶を濁して買い物を終えてしまいました。でも、よくよく考えたら不忍通りのあの辺の古本屋っていうことは、主たる客は東大か芸大の学生を相手にしている訳でして、そこを相手に絶版ではない新書の古本が500円かぁっと、今になって思えば高いと言ってあげた方が良かったのかもと、ちょっと胸が痛みます。

 助手になってお給料をもらうようになって以降は、新書や文庫くらいならば値段を見ないで買うようになっていましたが、大学院生の頃とかは新書や文庫でも100円とか、出しても300円とかの古本を探していたわけでして、新書の古本が500円っていうのをその頃見かけていたら、しかも分野外の本で見かけていたら、絶対に買わなかっただろうなぁっと思われます。そう考えると、まだ絶版にもなっていない新書の古本を、しかも研究に関係もないのに、500円という値段を見ながら平然と買うようになってしまった自分は、かなり贅沢な身分になったんだなぁって自戒を込めて思っているところです。しかも、100円で大学院生の頃買った本の方が、真面目に真剣に読んでいたかも…

17日(土)
 慶応の柳沢さんに頼まれて、簡単な報告をしに東京へ行った時のこと、報告だけするのは何なので、調査したり色々との組み合わせで宿泊もしていたわけですよ。それで、恵比寿の恵比寿様横のatreの長いエレベーターを、ボケっーっと登りに乗っていたんですね。そうしたら、下りのエスカレーターの方から見覚えのある顔が降りてくるんですよ。武田先生でした。いや、世の中偶然っていうのはあるもんだとは思いますが、広い東京の空の下で、そんな偶然があるとはなかなか驚きでした。東京でそれなんですから、福岡ではなおさら悪いことなんてできませんねぇ。

 で、そんな話を嫁さんにしていまして、テレビとか見ていてドラマとかで、エスカレーターの登りと下りですれ違うなんて言うシーンがあったら、そんな都合のいい話があるかい、いまどきどんな3流ドラマだよと、テレビ画面に突っ込むレベルだよなぁって話したところ、そこですれ違う相手が、木村佳乃ではなく武田先生だからこそ、ドラマじゃなく現実なんだよと諭されてしまいました。確かになぁと妙な納得をしてしまいました。

20日(火)
 先日、35歳の誕生日を迎えてしまいました。これで30代も折り返し地点を過ぎて、いわゆる30代後半っていうジャンルに入ってしまったわけです。まぁ、驚くほど何の感慨もないままに30代後半入りをしたんですが、こうやって次第に何も感じなくなっていくのでしょうか。24歳から25歳になる時には、ひとしきり友達と大騒ぎしていたような記憶がありますが、10年っていうのはなかなかに長い時間の流れです。20代後半から30代前半にかけてっていう10年間は、振り返ってみると意外と充実していた10年間でして、次の45歳の時にも同じくらいの充実感を感じられていたらなぁっという思いです。

 ところで鳩山内閣が概算要求でとんでもないことになってしまっていますが、基本的には子ども手当なんて言う馬鹿げた政策を捨て去るのが一番だと思うんですけどね。子ども手当を公約通りにやったら年間5兆円を超える支出だとかで、そのために増税したり、赤字国債を発行したり、地方や民間に負担を押し付けたりと、次から次へと馬鹿げた話が踊っています。本末転倒というか、主客逆転というか、得票を伸ばすためのリップサービスに引き摺られて、訳が分からんことになっています。

 自民党から民主党へという政権交代によって、自民党政治による停滞感を打破したいと国民は望んだわけですが、別に民主党の子ども手当や高速道路無料化なんて、多数の国民は望んでなんかいない訳でして、国民の支持がない公約を、自縄自縛でゴリ押しすることだけはやめて貰いたいところです。だいたい、高校生以上の子どもを持つ家庭は増税ですし、大学進学を控えた家庭は大打撃でして、少子化を促進する致命的な政策だと思うんですけどねぇ。しかも、扶養控除がカットされることで高齢者を抱える世帯は困りますし、長い目で見れば全ての世帯が大増税になるんじゃないでしょうか。

23日(金)
 話が前後しますが、社会経済史学会での学会報告を久しぶりに行ったのですが、質疑応答の時に、また懇親会の席で、一番僕の報告を批判してくれたのは谷本さんでした。こうやって大学院も終わって数年たち、職も得て教える立場になってくると、なかなか自分の研究を率直に批判して貰える機会っていうのは少なくなっていくのですが、大学院時代の指導教官(員の誤変換ではなくて、当時は本当に官でした)っていうのは有り難いものでして、いつになっても真正面から真剣に批判して貰えます。

 といってもまぁ、大学院時代は谷本さんのところをベースとしつつ、色んな先生のところへ出入りしていましたから、またそういう教官と院生の関係が好まれる大学院風土でしたから、谷本さんべったりにくっ付いていた訳ではありませんが、それでもやはり指導教官っていうのはある種特別な存在にはなって来るもんだよなぁ、と、後からしみじみ思うものです。別に森田公一とトップギャランではありませんが。。。ちなみに、森田公一なんて僕とは同時代ではありませんで、父がよく口ずさんでいる曲なので知っているだけです。悪しからず。

 ところで、月初めには時々やってい気付くと直していたのですが、今月10月はなんと今日まで過去ログへのリンクを忘れていました。10月ももう後半ですが見られるようにしておきましょう。相変わらず大したことが書いているわけではありませんが。。。

27日(火)
 週末は岡山へ学会で行ってきました。中学の時の修学旅行で倉敷は行ったことがあったのですが、岡山市へ行ったのは初めてでした。まぁ、後楽園も岡山城も見ないで帰ってきてしまいましたので、次に行った折には観光もしたいところです。ただ、今回は政治経済学・経済史学会賞を受賞させて貰いまして、その授賞式も兼ねての学会でした。経営史や社経史が論文を対象とした学会賞なのに対して、政治経済学・経済史学会は若手・中堅の1冊目の研究書に対して与えられる賞でして、そういう意味でも感慨もひとしおです。

 これまで日経史では、慶応の植田浩史さんの『戦時期日本の下請工業』、韓国培材大の林采成さんの『戦時経済と鉄道運営』、早稲田の森田貴子さんの『近代土地制度と不動産経営』と、手堅い実証研究をしてきた書籍が受賞してきたので、この緻密な3人に並べて貰えたっていうのが嬉しい限りです。今までの3人と比べると拙著『近代日本の陶磁器業』では少々軽いかなぁっと恐縮してしまいますが、これからもきちんと受賞したことが恥ずかしくないように研究しないとなりませんね。あと、研究内容もそうですが、3人とも人間的にも大好きな大先輩たちでして、特に林采成さんには大学院生時代に親身になって色々とアドバイスをして貰ってまして、そういう意味でも喜びも一層に増すっていうもんですね。

 というわけで、リポジトリに登録された書評のリンクなんかとともに、プロフィールの方を更新しておきました。また、学会で北海道大学の白木沢旭児さんとお話をしていたのですが、いや正確には飲みの時に話していたのですが、『日本史研究』の方に書評を書いて下さったみたいでして、なかなか序章と終章に対して辛口なコメントをいただけるということで、見たら凹むんでしょうけど、それはそれで待ち遠しい限りです。