2010年2月

1日(月)
 以前に、記録資料館から九州大学全体を通じて文部科学省に対して予算を申請する書類をセコセコと作成していたのですが、その予算申請が文科省から財務省を通じて下りる見込みが立ってしまったということで、来年度のプロジェクトに向けた仕様書などの作成にまた追われる日々が続いてしまっていました。額が巨額になりすぎてしまって、個人的には現実感に乏しい金額なのですが、政府調達に準じる水準での仕様書作成が必要とのことで、もうてんやわんやで書類作りに追われています。資料リストを除いてA4用紙が10枚以上になっていますので、仕様書を作るのも大変ですけど読むほうも大変でしょうねぇ。

 金額が巨額なために、僕が仕様書を作成してから、図書館全体の会議を経て、九州大学全体の会議を経て、そこで仕様書の修正が入ると思いますので、まだまだ完成には程遠いところです。まぁ、研究者なんてしないで国1試験でも受けて官僚になっていれば、当然していたであろう作業ですから良いって言えば良いんでしょうけど、ず〜っとこんな書類作りしてばかりいると厭きてきます。しかし、まぁ入札に参加する業者さんとしては死活問題でしょうし、仕様書自体は真剣に作成していますので、官報に掲載された後に51日間をおいて、それから入札という運びになりますのでよろしくお願いいたします。

 校正作業もまだまだ終わらないので、自分の研究に戻れるのは一体いつなんだろうか・・・

5日(金)
 角界のニュースが巷を踊っていますが、なんというかどちらも末期的な様相を呈していますね。貴乃花の理事選については、何を改革するのかよく分からないけれども改革改革と叫んでいる貴乃花を理事にするのか、昔ながらの一門の縛りでやっていくために派閥意識丸出しで貴乃花たちを貴乃花たちをパージするのか、どちらに転んでもあまり好ましい結果にはならなそうですが、取り敢えずは前者の結果に落ち着いたようです。昨今の凋落ぶりを踏まえて角界の改革も色々されてきている訳ですが、何でもかんでも弄れば良いというものでもないですし、貴乃花理事は更に何をやるつもりなんですかねぇ。

 もう一つは、横綱朝青龍が泥酔して暴力沙汰を起こして角界を去るという話です。もともと朝青龍の素行には疑問符が付けられていた訳ですが、行くところまで行ったうえで辞めざるを得ない状況にまでなってしまったというところです。内舘牧子なんかは、もっと早い段階から横綱を辞めさせるべきだという強硬論を述べていたわけですが、事ここに至ると内舘女史の主張が正しかったということなんでしょう。初場所を優勝したばかりの朝青龍の引退という、何というかまぁ角界全体が無様なことになってしまいました。

 大相撲を国際化するにあたって、相撲をスポーツとして変えていくのか、それとも神事以来の伝統を残していくのかというせめぎ合いの中で、結局はなぁなぁで持ち越してしまった付けがまた出てきたって言うところでしょう。ちなみに、白鵬がいたって普通に横綱をやっている事を見ても、武蔵丸が何も問題を起こさなかったことを見ても、外国人を入れることが良いとか悪いとかではなく、本質的には勝ってれば何をやっても良いと思っている人物に対して、どのように対処するのかという合意を得ていないことが一番の問題なわけです。

 僕らの世代なんかだと、ちゃんこ鍋の味が気に入らないだとかなんかで横綱双羽黒が親方と対立して、親方が廃業届を出して厳しく処分したという、まぁこれはこれで親方の金銭トラブルが絡んでいる云々と真偽不明なところも多い事件だったのですが、取り敢えずは力士の不祥事は親方が指導して処分するという構図が明確にあったように思います。しかし、これまで数々のトラブルを起こしてきた朝青龍に対して、国が違って文化が違うとかでなぁなぁにしてきたわけです。もし、伝統も神事もすっ飛ばして、強ければ良いって言うならば逮捕されるまで放置しておけばいいし、横綱や大関に品格を求めるならば、もっと日本文化と礼儀などを昇進基準にすべきわけです。

 改革改革というならば、小手先の何かではなく、そういう所を改革すべきだと思うんですけどねぇ。

8日(月)
 年度末、しかも中期計画最終年の年度末ということで、大慌てで様々なプロジェクトを進行させていますが、その中の一つにマイクロフィルムのデュープ作業っていうのがあります。昔のマイクロフィルムはセルロース製だったこともあって酢酸を発生させる化学変化が徐々に進行していくため、長期保存には向かないという致命的な欠陥がありました。マイクロフィルムの本来的な用途からするとゾッとするお話なんですが、そういうものだったわけですから致し方ありません。 ということで、化学変化が進行して読み取れなくなる前に、何とか複製を作ろうということが全国各地で行われているわけです。ちなみに近年の物は、石油由来のポリプロピレンを用いていますから、取り敢えずはこれでかなり長期保存ができるということです。

 と言いましても、市販されているような物を購入したのはどうしても後回しでして、記録資料館の前身の石炭研究センターだとか九州文化史研究所が、独自にマイクロ撮影したものを優先的にデュープ作製しているわけです。そうやって古いマイクロフィルムを軒並み目を通していくと意外なものが眠っているものでして、大阪造幣局の英文史料を撮影したものが100本弱発掘されました。RoyS Hanashiro氏が研究するときに、石炭研究資料センターのスタッフたちが撮影などのお手伝いをしたために、そのままマイクロフィルムが残されているということです。彼の研究書が出されてから10年になりますし、まだまだ使い切っていない資料も含まれていますから、興味がある方には調べて貰いたいものです。

 ところで、記録資料館の来年度の助教さんも無事に決まりましたし、何より現助教の三浦壮氏の行き先も正式に確定しましたし、記録資料館もめっきり春めいてまいりました。助教っていうのは若手のステップアップのためのポストなわけですから、回転していくことが一番重要ですからねぇ。新しい助教さんがさらに先へステップアップしていくときには、また新しい公募が出ると思いますので、その時にはまた応募してやってください。福岡っていうことで地理的なハンデが無いと言えば嘘になりますが、そんなものは本人のやる気とコツでカヴァーできるレベルだと思うんですよね。

12日(金)
 小沢一郎元秘書で逮捕された石川代議士が、民主党を離党する云々でニュースになっていますが、野党時代の民主党ならばこういうときは離党など認めず除名とし、議員辞職勧告までしていたのが普通でした。国民の多くもそういう潔い態度の民主党に期待を寄せていたのですが、与党ボケというか第2自民党というか、金に汚い与党らしさが全面に出てくるようになってしまいました。確か与党になったのは昨年の9月だかだったと思うのですが、半年にしてこの汚れっぷりを見ていると呆れて何とも言えないところです。

 秘書が逮捕されたのなら議員辞職しろと、当時の鳩山民主党党首に追及されて辞職した加藤紘一代議士から、どうなっているんだと質問をされていた首相の姿があまりにも不様でしたが、この国の議員の金権体質はどうしようもないレベルのようです。中にはまぁ金にきれいな人もいるのでしょうが、鳩山首相と小沢幹事長というラインが、自民党以上に自民党らしいことはまぁ間違いがないところでしょう。労働なき富は大罪だとは、よく言ったものだと改めて感心してしまいます。

 金の話と言えば、僕が貰っている研究費が適正に使われているかという調査も、ちゃんと大学から行われるのですが、パソコンとデジカメを購入したために、それを転売していないということを現物をもって証明する必要があります。図書や史料類も高額な物は査察対象になります。こうやってチェックを受けている方がいざっていう時に疑われないので、少々対応が面倒ではありますが、研究費はどしどし査察に入って貰いたいと思うんですよね。政治家の金にしろ大学人の研究費にしろ、すべてオープンにしてやっていけばいいんですよ。後ろ暗い使い方をしていなければ、それで何の問題もないのですから。

15日(月)
 そういえばこの前ANAに乗ったとき、最前列のプレミアムクラスのすぐ後ろのエコノミーに座っていたのですが、降りる時に気付いたところ鳩山邦夫が乗っていました。というわけでイタズラ心がムクムクとして来まして、飛行機を降りた後に絶好のポジショニングをして、空港の出口まで鳩山邦夫の後ろにピッタリとくっついて出て行きました。嫁さんが出迎えに来る手筈だったので、絶対にウケると思ってやっていたのですが、嫁は読書に没頭していてその面白いシーンを見そびれてしまったのでした。鳩山邦夫の後ろにヌーボーっと歩いている宮地っていうのは、なかなか絵になると思ったんだけどなぁ。

 嫁が出迎えといえば、僕が東京に行っている時には嫁は一緒かとよく聞かれるのですが、また、嫁さんが東京に行っている時には宮地は一緒かとよく聞かれるらしいですが、意外に別々に東京に行っている事が多いんですよね。一緒に東京っていうこともなくはないですが、だいたいにおいて2人の予定なんて別々のことが多いですからねぇ。今回も、早稲田の助教をしている友人の齊藤直氏の就職祝いなども兼ねて一人で上京していたものでして(当然それだけで出張ではないですが)、嫁さんはいなかったんですね。久しぶりに、夕方の5時から深夜12時までという7時間も飲み続けてしまいまして、なかなか楽しかったです。

 一次会で伊牟田敏充さんがお勧めという話の店に行ったのですが、かれこれ5時間ほど飲んでいたところで、お会計の方こんなになっていますけど大丈夫でしょうかと、店員さんが心配して来るような感じでした。まぁ、ヨレヨレな格好して5時間も飲み続けて金額が結構増えていたので、店員さんがこの客たち支払えないんじゃないかと心配したのも致し方ないことでしょう。とういわけで場所を変えて2次会をやって、日付が変わってホテルへと帰ったのですが、7時間も飲んだ割には二日酔いが全くない清々しい目覚めでして、やっぱり焼酎っていうのは体にいいですねぇ。日本酒だとこうはいかないんだよなぁ。

21日(日)
 先日、ポルトガル料理を楽しみながらFadoを聴く機会がありました。高柳卓也、通称TAKUという日本人Fadistaがいまして、僕と同い年の1974年生まれなんですが、日本では数少ない男性Fadistaさんです。Fadoといえばアマリア・ロドリゲスがあまりにも有名でして、女性が歌う哀愁漂うメロディーを思い浮かべがちなんですが、意外と明るい曲もあれば男性の歌い手さんもいるみたいです。とはいってもやはり日本にいるFadistaは圧倒的に女性ばかりでして、男性のFadoを日本で聴くには彼しかいないようですね。

 ポルトガルレストランでディナーをいただきながらだったのですが、そこのポルトガル人オーナーのマダム曰く、彼はポルトガルでもちょっとした有名人らしく、日本人が結構うまいFadoを歌うっていうことで評判だとか。youtubeにある動画をみていると、日本語ではなくポルトガル人からのコメントがついていたりします。僕もそろそろいい年になってきたせいか、この手のメロディがとってもしっくりくるんですよね。しかも生歌で聴いてしまいますと、やはりぜんぜんその良さが違いまして、Fadoが夜な夜な歌われるポルトガルの酒場に行きたくなってしまいます。ポルトガルワインを飲みながらFadoを聴いていたので、とっても心地よくってしばし異国にいるかの錯覚に陥っていました。

 しかし情報化社会っていうのは便利なものでして、一般のFado好きな方が〈Casa de Fado ファドの部屋〉っていうサイトをやっているので、そこで情報収集して聴きに行ったりできてしまいます。そこのサイトによりますと、もともとFadoっていうのはアフリカ大陸から南米へ連れて行かれた奴隷たちの歌が、ポルトガルに渡って酒場の女性たちに歌われ、さらに貴族の邸宅などでも歌われ、そんな中で洗練されていったとのことです。今年は日本ポルトガル修好通商条約から150年ということでもありますし、ぜひぜひ皆さんもFadoを楽しんでください。

24日(水)
 研究費の監査が入っているというトピックは以前書いたのですが、その結果、使途は別に問題ないけれども、報告書の書き方が雑だから加筆しろっていう指示が来てしまいまして、事務方スタッフと協力して何とか加筆修正をした報告書を作り上げたりしていました。停年退職したスタッフからの引き継ぎで記録資料館ではそのままの報告書の書式を用いていたのですが、こちらは変わっていないものの全体の報告書の書式が変わってしまっていたらしく、新しい書式に直す必要があったのでした。ただ新しい報告書の書式だと、従来はあった決裁印とかの欄が無くなってしまっているらしく、それはそれでどうなんだと、新しい報告書に関しては保留ということで、来年度の報告書の様式はまだ未定なわけではありますが。。。

 確かに研究費のマニュアルをよくよく読めば報告書の書式に関しては載っていたのですが、以前大丈夫だったものが変更されたときっていうのは、ここここが変更されましたからそれに対応するようにと、アナウンスして貰わないとかなりの確率で見落としていたりします。マニュアルが更新されるたびにチェックしている研究者は、それほど多くないと思うんですよね。と、仕事が増えててんやわんやだったのですが、まぁ使途とかのチェックが無事に終わったので、今年はこれで何事もなく過ぎていくということで万事OKというところでしょうか。

 こういう時に思うのは、研究費の不正使用とかで摘発される人たちがいるけど、どうやったら巨額の研究費の不正使用ができるのだろうかと、それが不思議でたまらないんだよなぁ。何百万、何千万という単位のニュースも聞きますが、どうやったらそんなアクロバティックな資金捻出ができるんだろうか…まぁ、僕みたいな日本経済史の額の研究費で不正しても、リスクとリターンのバランスがあまりにも悪過ぎてやろうとも思えないけど(苦笑)。そう考えると、巨額の研究費を扱う分野の研究者っていうのは、皆そういう欲望を律しているんでしょうねぇ。何億円とかの研究費を使う気分っていうのは、どんなもんなんでしょうか?