2010年7月

1日(木)
 パラグアイ戦の敗戦の虚脱感からようやくと立ち直りつつありますが、あの時間まで起きていたのに報われませんでした。僕が見たから負けてしまったのではないのかという罪悪感にも包まれながら、楽しい高揚感に満ちた日々は終わりを告げました。自国開催はともかくとして、南アフリカで決勝リーグに進めるなどとは夢にも思っていませんでしたので、望外の好成績に驚くとともに、軽視していた選集の面々とと岡田監督には申し訳ない気にもなってきます。

 怪我をして精彩を欠いた中村俊輔を中心に据え続ける岡田監督とマスコミ報道にウンザリしていたのですが、南アフリカに行ってからの一転したチーム構成によって、こんなに日本チームは強かったのかと目から鱗の思いでした。本田が今年24歳でしたから、次の2014年ブラジル大会では28歳としてまさに絶頂期に入っていることでしょう。岡崎が28歳、長友が29歳、長谷部が30歳、川嶋が31歳、この辺に若い世代がどう絡んでくるかですが、中村俊輔からの世代交代が出来るかどうか本大会ギリギリまで分からなかった今年よりは準備はしっかりできそうな気がします。

 あと、岡田監督はもうこれで退任ということでして、多分16強入りを引っ提げてゆくゆくはJリーグのチェアマンとか日本サッカー協会の要職になっていくでしょうし、もう代表監督に戻ってくることはないでしょう。となると次の代表監督はだれかということでして、個人的にはやはりピクシーを推したいところです。グランパスの監督なんかにしておくのは勿体無いというと色々とお叱りを受けそうですが、日本代表監督としてゴールを叩き込んで欲しいと思っているのは僕だけではないかと思われます。あと、志し半ばで代表監督を退任せざるを得なかったオシム監督のためにも、ストイコビッチ監督というのを見たいなぁって言う思いもあるんですよね。

5日(月)
 今までの社会福祉を維持するだけでも消費税を増税せざるを得ない状況なのは厳然たる事実でして、消費税を5%で推移し続けるならば低福祉社会への転換を覚悟しなければならないというくらいの状況でしょう。埋蔵金なんていうのは所詮は前の選挙用の世迷言でして、いつ消費税を増税するかという時期に問題はあるにしろ、今回の参議院選挙で消費税増税が議論になっている事は当然といえば当然の事態と言えるでしょう。個人的には消費税を上げる時期を逸してしまった感があるのですが、どこかでは上げざるを得ないことでしょう。

 ただその際に、年収○○○万円以下の世帯には還付とか、食料品は税金据え置きとか、色々と税金を上げた時の緩和策が語られたりしていますが、こういうのはすべて手続きと判断基準が複雑かつ曖昧模糊となり、人々の不満を高めて行くだけになるでしょうから、やはり原則として税率は一定にすべきだと思われます。例えば食料品に税金をかけるとして、鶏卵と、ウズラの卵と、タラコと、イクラとキャビアをそれぞれ税率を変えるとしたら、ウズラの卵は贅沢品なのか、イクラは庶民も食べるのかという、タラコとウズラの卵とどちらが高級かと、世にも不毛な議論を延々と続けることとなることでしょう。

 また年収によって税額を変えるとしたら、資産家で年収が少ない老人世帯と、資産はあまり無いが年収を稼いでいる現役世代で、後者に税の負担を重くしてしまうなんていう事態になりかねません。またそもそも、年収400万円以下に還付なんていう話になったら、国民の半数近くが消費税の還付を受けることになってしまい、手続きの煩雑さで事務作業は混乱するは、財政に寄与できるほど税収が見込めなくなってしまうことでしょう。また、年収ラインを下げたところで、還付目的のレシートや領収書が売買されることになるだけでしょうから、それの防止で更に煩雑なことになってしまうでしょう。

 というわけで、消費税を上げるなら上げるで、国民皆で覚悟を決めてエイヤっと一気に一定税率まで上げてしまうしかないと思いますけどねぇ。まぁ、景気とにらめっこをしながらの難しい判断となるでしょうが、いつかは消費税増税がやって来ることだけは避けられないことでしょう。勿論、税率上昇を抑制するための歳出削減とセットでしょうけどね。

9日(金)
 組織っていうのは弱体化が始まると一気に崩壊が進行するもののようでして、今まで密談していて仲間内だと思っていた奴が、自分だけは一足抜けて助かりたいということで内通者になってみたり、次から次へと面白いくらいに情報が駄々流れになったりします。そういう場合には、やはり沈む船から早く逃げるべく情報リークをした方が助かる確率は高くなる一方で、思わぬところから組織として隠したかった情報が駄々漏れというのはよく聞く話です。いつまでも旧態然とした組織が温存されると信じ込み、そのために嘘をついたりして調査に入っている人の心証を悪くし、気付いたら自分まで厳しく処分される立場なんていう話も間々目にします。

 多分、犯罪が軽微なところで自浄作用が働いていたら、そこまで事態は深刻化しなかっただろうにと思うのですが、組織の中にいる人は永遠に犯罪でも何でも隠し通せると錯覚してしまうのでしょうねぇ。そして隠蔽したいことを隠蔽し続けるために、最初の当事者以外の組織人が巻き込まれていくというのもお決まり通りのストーリーでしょう。でも、巻き込まれたなんていう言い訳は通じませんからね。調査が入った段階で、そうなったら罪を白状した方がいいと客観的には思うのですが、当事者はそれでも嘘をついて逃げ切れると思い込んでいて深みに嵌まっていくから世の中っていうのは不思議です。さてさて、いったいどうなるのでしょうか日本相撲協会。

 ところでいまいち盛り上がりに欠ける参議院選挙の方は、なんだか混沌としている状況です。今年の参議院選挙はあまり選挙を促す報道などもなされていないようですが、衆議院選挙よりも軽視されているからですかねぇ。ただ、状況はかなり混戦で面白くなっているようでして、小選挙区と中選挙区と比例が混在するという複雑な参議院選挙ならではの楽しみ方も出来ます。7月11日は天気もあまり快晴とはいかないみたいですし、夜遅くから翌朝にかけてスペインvsオランダですし、どうせ遠方に旅行しないなら、一票を大切にして貰いたいものです。

 あと、プロフィールを少々更新いたしました。博多織に関する小論が九大のリポジトリで公開されるようになったり、朝鮮人労働者に関する資料紹介が校正段階まで来ていたり、荻野喜弘編著の論集の出版元である日本経済評論社にリンクを張ったりといったところです。

11日(日)
 実家の母が家庭菜園に凝っていまして、毎年不可思議な食材が届くのですが、今年は〈おかわかめ〉なる謎の物体が送られてきました。ネットで検索したところ、〈雲南百薬〉っていうのが漢方名、〈アカザカズラ〉っていうのが和名で、エクアドル原産のツルムラサキ科の植物のようです。葉っぱを食します。観葉植物にも用いられるらしく、なかなかしっかりとした葉っぱなのですが、それをお浸しとか胡麻和えとかにして食べるものらしいです。というわけで、嫁さんにオーソドックスにお浸しにして貰って食べたのですが、体に良さそうな草の味がしました…栄養分は豊富なようですが、これは最近食した最も珍妙な食べ物でしたね。

 〈インカのめざめ〉という黄色が強いジャガイモが肉じゃがになったり、〈あいこ〉っていうトマトをかじったり、夏の野菜収穫シーズンは何だかよく分からない食材のオンパレードであります。でも意外と変わった食材でも美味しいものが多いんですよね。スーパーとかで目にする食材ってどうしても偏ってしまいますが、あまり流通していないだけで結構食用に適したものってあるもんですよね。キノコ類以外は、変わった食べ物を色々と挑戦してみるのはなかなか楽しいものです。

12日(月)
 山口県で原田大二郎が惨敗するかたわらで、その〈蒲田行進曲〉の原作・脚本家であるつかこうへいが亡くなっているのが運命の偶然として感慨深いものがありますが、今年の参議院選挙の大きな特徴は、いわゆるタレント候補の大半が落選していったことでしょう。民主党の庄野真代、桂きん枝、岡崎友紀、喜納昌吉、池谷幸雄、岡部まり、自民党の堀内恒夫、神取忍、国民新党の江本孟紀、西村修、敏いとう、たちあがれ日本の中畑清、みんなの党の真山勇一、といったところが目に付きます。小沢一郎前幹事長による民主党のタレント候補戦略が目立ちますが、他の党でも程度の差はあれ似たような傾向はありまして、全国区的な比例区では致し方ないのでしょうが、それにしても民主党のタレント候補の多さはさすがに行き過ぎだったでしょう。

 この中で、たまたま渋谷をブラついていたときに庄野真代の選挙演説に遭遇してしまったのですが、その時はさすがに〈飛んでイスタンブール〉は歌っていなかった(通り過ぎただけなのでその後に歌ったのかも知れませんが)ものの、「歌を歌う時はマイク一本ですが、選挙演説ではマイクを沢山持つところが違います」などなど、コンサート会場でのMCかのようでして、あまりにも何も分からない無知な芸能人を並べましたといった感が漂っていたのは最悪だったことでしょう。路上で庄野真代が〈飛んでイスタンブール〉を歌っていればそりゃ立ち止まって聴くでしょうが、だからって庄野真代に投票しようとはならないでしょ。それに聴くなら、松坂慶子に風間杜夫と平田満を付けて〈蒲田行進曲〉の方を聴きたかったな。

 しかしまぁ、民主党44議席、自民党51議席、みんなの党10議席、公明党9議席などなどと、与党で44/121議席しか確保できていない状況ですから、かなりの大惨敗といった状況です。ですから、鳩山前首相から菅首相への交代による効果があったのかなかったのかも難しいところですが、鳩山時代は民主30議席前半などという予想もあっただけに、一応はアンパンマン効果はあったものの、そこからの菅首相の失言や迷走で効果が雲散霧消してしまったという見方が順当でしょうか。となると今後も、選挙直前に総理の首をとっ換えるということが間々見られるようになっていきそうな感じはします。ただまぁ何はともあれ、今回ここまで見事な負けっぷりとなってしまいますと、菅政権はあと何日もつかという短命記録をにらむ展開になっていることでしょう。

21日(水)
 つい先ほどまで間違えて理解していた日本語ですが、UB、ユニットバスという和製英語があります。不動産屋などでアパートなどを借りたりするときに表示してあるあれです。てっきり、セパレイトの反対語がユニットバスで、浴槽とトイレが一室に収まっているのをユニットバスと呼ぶものだとばかり思っていました。ところがそれは、浴槽と洗面台とトイレという3点ユニットというものでして、ユニットバスというのは単純に組立式の浴室のこととのことです。浴槽とトイレで一式なのではなく、浴室が一式という意味でユニットという用語を使って語を作りだしたためらしいです。

 しかしそうなると、不動産屋に掲げられているUBっていう記号は、おおよそ間違った使われ方をしているんじゃないかと思いますが、あれは一体どう言うことなのでしょうか。ただ最近は、3点ユニットのユニットバスの評判があまり芳しくないということで、浴室とトイレはセパレイトになった賃貸が一般的のようでして、僕らが大学生時代には一般的であった形態はかなり減っているということで驚きです。僕らの学生時代より贅沢なんじゃないのかと思いたくなりますが、若年者人口が減っているために単身者向けアパートも色々と知恵を絞っているためのようです。

 大学生の話をしていたら、大学時代のサークルのOB会で聞いた話を思い出しましたが、最近は文2を対象にした進振りが変更されたらしく、文2に入学すると即経済学部へという、いわゆる理1・文3・ネコ・文2というスタイルではなくなってしまったとのことです。文2に入学しても3割ほどは進振りで経済以外へ進学させられるらしく、文2の学部生が駒場の成績を気にするという、僕らの頃とは隔絶した状況に変わっていました。というわけで文2が忙しくなってしまったため、駒ネコたちも忙しくなったのか最近はあまりキャンパス内で見かけないとの噂も。。。

27日(火)
 経営史学会@札幌のプログラムが送られてきたのと、『歴史と経済』に拙著『近代日本の陶磁器業』の書評を掲載していただいたのととありまして、合わせて〈おしらせ〉を更新しておきました。四方田雅史さんとは面識がないのですが、書評の方は少々ほめられ過ぎな気がいたしまして、もっと厳しい批判をして頂いても良かったのになぁなどと贅沢なことを思っています。山田雄久、白木沢旭児、亀山哲也の各先生に続いての書評でして、それぞれの視点で色々とご意見がいただけるのはありがたい限りでもあります。そのうち、紀要か何かを使ってまとめて反論でもするかぁなどとも思っているところです。個人的にいただいた阪大の沢井実先生からの指摘なども含めてですかねぇ。

 書評といえば、その『歴史と経済』から依頼されていた宮本又郎・粕谷誠編『講座日本経営史』1巻の書評を書き終わりまして、少々寝かせてから読み直して提出しようかなぁって言うところまで来たのですが、これまで扱った中でこんなに扱いづらい書評はなかったと思っているところです。幕末開港による連続と断絶という問題は、講座の企画主体であります経営史学会と、書評を依頼してきた政治経済学・経済史学会で、大きな傾向としてはかなり違ったスタンスにあるところではありますが、そういうのは取り敢えずさて置くとしましても、自分はこの問題をどう考えるのかということを突きつけられたような気がしまして、色んな文献をひっくり返しながら書評1本に半月近くもかけてしまっているという惨状でありました。しかし書き上げたものの、誰からもあまねく批判される書評となったような気がして提出が躊躇されるところです。