2011年7月

4日(月)
 最近の週刊誌などでは、菅内閣の〈最少不幸社会〉のキャッチフレーズをもじって〈最大不幸社会〉が到来しているという論調が多く見られますが、菅首相による失態以来の福島第一原子力発電所の対応の混乱や、東電を含めた節電の経済への影響だとか、NHKなどが盛んに特集を組んでいるホットスポットの問題とか、長期不況といった話とは別ベクトルの最大不幸社会に突入していっているようで憂鬱になります。

 ところでそのような話の中で気になるのが、摂氏28度という空調温度の話です。そもそも摂氏28度という室温は、屋内で働く労働者の健康を維持する目安として、摂氏29度を超えてしまうと熱中症のリスクが高まる為に決められたものです。ですから重要なことは、室温を摂氏28度以下に保つという点にあります。それに対して、いま大きな声で叫ばれているのは空調の設定温度を28度にしろという話でして、これは明らかに法律に違反しているのではないでしょうか。

 空調の設定温度を28度に設定しても、パソコンやらプリンターやら色々な電化製品が動いているオフィッスは、まず摂氏28度にはなってくれません。つまり、室温28度ではなく、設定温度28度を強制するということは、労働者が健康に働く権利を害している事を意味しています。とはいうものの、東京電力や東北電力管内では停電してしまっては元も子もないから致し方ないでしょうが、他の電力会社管内では室温28度を保つというのが本筋ではないかと思っています。

8日(金)
 九州電力によるいわゆる〈やらせメール〉が世間を騒がしていますが、普段は口頭で依頼をしている内容を、ついついメールで依頼してしまい、それがチェーンメール化して協力してくれそうな色々な企業・機関・組織へと流れてしまったため、情報リークによってこのような大騒動になっているようです。要するに長年来続けていた原子力発電所は安全だという認識作りの一端が、現在の世情の中で明るみに出てしまったといったところのようです。

 原子力発電所が安全かどうかなんて言うのは、震度7の直下型地震が来ても壊れないのか、飛行機が突っ込んできても壊れないのか、ミサイルを落とされてもシェルター化していて大丈夫なのか、30mの津波が襲ってきても電源等も維持できるのかなど、調査項目に従って行えばそれほど難しくはない筈です。安全ならば、その安全だと示す調査結果を提示するのが一番説得的なわけでして、震度7でもジャンボジェット機が突っ込んでも壊れない品質ならば、玄海原子力発電所の風下にいる福岡市民だって、それなりに安心できるっていうもんです。

 立命館大学の研究者の方が、発電コストの再計算をやったというニュースを見ていたのですが、原子力発電所を設置する場合の地元への補助金を、政府はこれまでコストに換算していなかったの事でした。使い終わった原発の解体費用とか、事故時の補償費などをカウントしていないことで、コストの先送りをしているっていうのは以前書きましたが、まさかコストの付け替えをやって原子力発電のコストを低く見せかけるなんていう事までやっていたとは、かなりの驚きです。〈やらせメール〉に見られる安全という認識作りだけでなく、安い原子力っていうこと自体が認識作りの結果だったということが明らかになってきた昨今です。

 話は変わりますが、投稿していた次の論文がC判定で返ってきました。審査コメントを読んでいたら、実証部分はだいたい良いとして、重要な先行研究を一つ落としてしまっていたようでして、その研究成果を入れ込んで論旨を再構成しなければと思っているとことです。ciniiでヒットする論文の先行研究はだいたい押さえていけるのですが、昨今は色々なところへと研究対象を広げている関係もあって、論文タイトルにキーワードなんかが入っていないと辛いなぁっというところです。まぁそういうミスを改善するためにも、自分が詳しくない分野こそ査読雑誌は利用するのに適しているよなぁっと新しい機能を発見してしまったのでした。

10(日)
 〈ナガタパン〉っていう福岡ではそれなりに知られたパン屋さんの店舗が近くにあるのですが、そこで買って気に入っているのが〈紅茶のブリオッシュ〉です。ブリオッシュといえば、マリー・アントワネットが語ったとされる、しかし真実はどこぞの大公夫人の言説がマリー・アントワネットの言にされてしまったとも言う、あの「パンが無ければブリオッシュを食べればいいじゃない」って言うのが思い出されます。僕が子どもの頃には、「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」と日本語訳をされていたために、ながらくブリオッシュというのはお菓子に属するんだと思っていたのです。

 ところがブリオッシュというのはどう見ても、どう味わってもパンなんです。ということで何なんだと思いまして調べたところ、パンっていうのは厳密には麦(小麦・ライ麦など)・塩・水・酵母で作ったものを意味するようでして、牛乳、卵、バターなどを多用した贅沢なパンをブリオッシュと呼ぶようです。フランスでは菓子パンに分類されるとか。〈ナガタパン〉のは〈紅茶のブリオッシュ〉だから菓子パンに分類されても納得できますが、普通のブリオッシュは単なるパンです。

 つまり目を転じますと、我々が現在食べているパンの多くはフランスではブリオッシュに属するものでして、食パンなんかが典型的なブリオッシュになってしまいます。ですから先程の言葉を直訳すると、「フランスパンが無ければ食パンを食べればいいじゃない」となってしまいます。フランスパンよりも食パンが入手しやすい日本ですと、フランスパンなんて小洒落たパンを探すなという言葉に説得力が持たれることにもなってしまうのです。

 というわけでして、日本語訳をした人は苦労したと思うのですが、ブリオッシュを御菓子と訳すことで対応することにしたんだと思います。確かにこれならば、元々の意味を理解できることができまして、情景は全く違うものをイメージするんだけれども、マリー・アントワネットの世間知らずなお姫様具合は抜群に伝わりまして、なかなかのセンスなのではないでしょうか。

17日(日)
 福岡県にもセシウム牛が流通していたということでして、少々戸惑っています。もともと、30代も半ばになって来てから牛肉が重過ぎてあまり食べていないのですが、それでもベジタリアンの如く、またヒンズー教徒の如く、全く牛肉を食べないという訳ではありませんからねぇ。

27日(水)
 過日、経営史学会の部会で鹿児島へ行って参りまして、その帰りに〈むじゃき〉の白クマを堪能してきました。鹿児島中央駅も、博多駅に先駆けて再開発をしているのですが、天文館の〈むじゃき〉支店が鹿児島中央駅の駅ビルにも入っているということで、けっこう便利に味わえたのでした。鹿児島は、実は福岡よりも湿度が低い関係で、気温自体は高いにもかかわらず不快指数は低いのですが、そういう乾燥した暑さの中で白クマを食べるのはなかなかでした。

 ただ気になったのは、前回鹿児島へ行った時よりも、天文館の人出が少なくなっていた事でした。明らかに鹿児島中央駅の方へと人が流れて行っているようでした。〈おぎおんさぁ〉っていう祇園祭の真っ最中だったにもかかわらず、祭りから少し時間がズレてしまうと人出が減ってしまっていて、天文館と駅ビルとのゼロサムゲームを見ているようで、少々大変な感じだなぁっと思ったのでした。特に年齢層の若いところが駅ビルの方に集まっていて、天文館の若者が減っていたのも、今後を考えていく上ではテーマになって行くんじゃないですかね。

 ま、取り敢えず、頑張った自分へのお土産で、芋焼酎を甕で買い込んできたので、家で甕を傾けながら晩酌をする日々でもあります。。。