2015年11月

5日(木)
 非常勤で行っている西南学院大学の近く、西新の商店街に〈ハニー珈琲〉という美味しいコーヒー屋さんがあります。より正確に述べるならば、本店は別のところにあって、僕が知っているのは西新店なのですが、ちょっと前に福岡空港をブラブラしていたところ、なんと福岡空港にも出店していました。

 気になって〈ハニー珈琲〉のサイトへ行ってみたところ、なんと店舗数が急拡大しているじゃないですか。カミさんに教えて貰って僕が最初に知ったときには、本店と西新店しかなかった筈なのに、あれよあれよという間に増えていまして驚きです。ここのコーヒーはとても美味しくて、特に夏場の水出し珈琲は絶品です。基本的に茶党なのですが、ここの〈ハニー珈琲〉のコーヒーはなかなか美味しくて秘密のスポットだったのですが、いつの間にやら秘密のスポットでもなくなってきているようです。

15日(日)
 昨年、旅行をした小国へ行く途中、突然目の前に現れる温泉郷に夫婦して妙に惹かれてしまいまして、今年はその杖立温泉へと行って参りました。小国が硫黄の香りが溢れる温泉郷であったのに対して、杖立は透明で高温のナトリウム泉の温泉郷です。そういう温泉の湯の質の話はさて置くとしまして、杖立温泉の凄い理由は、杖立渓谷というか杖立峡とでもいうべきその立地にあります。杖立川をはさんで両岸に切り立った山が迫ってきており、その一部分が温泉宿だったり民家だったりします。渓谷か峡谷かという景色の中の温泉についつい惹かれてしまった訳です。

 今回は〈ひぜんや〉さんという宿に泊まったのですが、一枚のガラスがとっても大きい素晴らしい部屋を用意してくれていまして、部屋から見える景色が何と言うかもう絶品。部屋の明かりを消し、自然に日が暮れて行く色調を、そして朝のゆっくりと白んで行く色合いを、そして晩秋の紅葉を、心行くまで堪能させて貰いました。

 今回の旅程は生憎の曇天から雨天へという感じだったのですが、渓谷の景色は晴れ渡った日よりも雲が多い方が美しいです。到着すぐは晴天だったので、2時間のサスペンスに使われてそうだなどと話していたのですが、雲が静かに下りて雨が降ってくると、侘びの世界が広がっていまして、時には水墨画のような、時には東山魁夷の日本画のような、静かな時間が流れるのでした。さらに、杖立は標高が結構高くて渓谷だということもあり、雲がとても近くまで降りてきます。温泉に浸かりながらボーっとしていますと、だんだんと目の前に広がるのが雲なのか、霧なのか、湯気なのか分からなくなってきます。晴天もいいですけど、それよりも杖立は低く垂れ込める雲がよく似合います。

 ところで、カミさんとブラブラと温泉街を散策していて、2人してふと変な感覚に襲われました。この温泉街、宮崎駿の〈千と千尋の神隠し〉に至るところがオーバーラップをするのです。〈米屋別荘〉さんという宿の立ち寄り湯も借りたのですが、ここの〈田の神〉が映画の最初の家族で車を走らせるシーンの神様にそっくりです。そして、阿蘇の赤牛のトロトロ丼がとっても美味しい〈白水荘〉さんからみた外付けの古びた鉄の階段は、千が仲居部屋へ駆け上がって行く外階段にそっくりです。杖立は土地が狭い関係もあって、外付けの古びた鉄階段を持つ宿が多くて、昔の仲居さん達はそこを使っていたんだろうなぁっと言うことが偲ばれますが、そういう外階段の数々はまさに映画とピッタリなんですね。

 さらには、〈薬師堂通り〉はハクが千とともに駆け下りた道に似ていますし、千やリンたち仲居さんたちが住んでいた部屋によく似た外観の建物もあります。加えて、我々が泊まった〈ひぜんや〉さんは、団体バスが来た時にだけ、巨大な和太鼓を叩いてくれるというサービスがありまして、千が橋を渡るシーンの時を彷彿とさせます。それから、杖立川の松原ダムには遊覧船がありまして、遊覧船を降りた客が杖立温泉へと向かって行く時間帯があります。橋の屋根からぶら下がってている絵鯉は、釜爺へと薬草をリクエストする札に煮ています。挙げていけばキリが無い程に、杖立温泉には〈千と千尋の神隠し〉を髣髴とさせる光景が混じっていまして、カミさんと2人して馬鹿げた妄想は膨らんで行くわけです。

 ところで、〈ひぜんや〉さんのお土産売場に、なんと、〈西尾〉という芋焼酎が売っていたのです。結婚記念日らしいっていうことで、これを買い込んで部屋で飲むことにしまして、さらにはそれだけでは足りないので、〈吉祥 赤魔王〉っていう芋焼酎も見つけて買い込んでしまったのです。そんな感じで酔っ払って良い気分になったので、先程の話を酔っ払った勢いで〈ひぜんや〉さんのスタッフに聞いてみたところ、宮崎駿一行が来た際のサインがあるというではありませんか。オオッっと思って駆け参じて見たのですが、その日付けは残念ながら2010年11月11日でした。

 しかしサインをよくよく見てみると、わざわざ大人数でお世話になったことがサインに丁寧に書いてありまして、画像検索で他の旅館などへしたサインを見ても、あまりそのようなサインの書き方を宮崎駿はしていないみたいなんですね。そこから美酒に酔いどれつつ推測するに、〈宮崎駿〉として昔小人数で訪れたときには、〈駿〉を〈シュン〉と読まれてしまって、監督だと気付かれなかったんじゃないかなぁなどと思うわけです。〈シュン〉と〈セン〉ってなんか似ていますよね。

 当時既にヒット映画を飛ばしていた宮崎駿監督が、渓谷の温泉郷では単なる一般客の〈シュン〉として扱われていたとしたならば、そこからは名前を奪われてしまった〈セン〉の物語へとイマジネーションが広がっていってもおかしくないよなぁっ・・・などと2人して妄想を膨らませながら休日を満喫したのでした。〈シュン〉の話はさて置くとしても、〈千と千尋の神隠し〉やジブリの世界が好きな人たちへは、杖立温泉はとってもお勧めのスポットなのです。

29日(日)
 福岡は、郊外の開発、古い旧郡部の町の再開発、博多と天神という中心部の再々開発と、3つの開発が同時並行で進行中でして、どこもかしこも工事の車両やらクレーンで大混雑をしていますが、ここにきて西鉄グランドホテルの建て替えやら、西鉄本社が入っている福ビルの建て替えも計画というニュースが流れています。2040年までは福岡市の人口は増え続けるという予測がたっていまして、なかなかどこも賑やかです。

 しかしながら人口が増加して行く中にあって、都市計画の動線に結構な無理が発生しています。この前は、都市高速が自然渋滞を発生させていましたし、一般の道路も混雑して車が右折できないとか、右折する車がいると前に進めないとか、一体どうなっているんだという混雑ぶりです。また、天地下の商店街や中洲川端の商店街も、僕が福岡に来た頃と比べると3倍くらいに人通りが増えていまして、福岡市の人口増をヒシヒシと感じることが出来ます。

 この10月1日に国勢調査があったのですが、この正式な発表は来年2月ということでして、この発表までの間は通常の毎月の人口増についての公表がストップしています。そのため正確なことはわかりませんが、そろそろ福岡市の人口は神戸市を超え、東京、横浜、大阪、名古屋、札幌につぐ第6位となっていることかと思います。

 2040年までの人口増を待っていてもいいのですが、福岡市の人口ランキングをより上に上げるためには、人口が40万人近く多い札幌を抜く必要があります。150万人から190万人というのは、なかなか離されている数字でして、これはひとえに市の面積に起因します。福岡市が343.38平方キロメートルであるのに対して、札幌市は1,121.26平方キロメートルです。この面積差を埋めるためには、福岡市は市町村合併をするしかなくなる事でしょう。

 観光収入の多い太宰府市、自衛隊基地のある春日市、空港収入のある志免町、ベッドタウンの大野城市などなど、本来的には福岡市であっておかしくないエリアが、各自の都合によって独立した自治体として残っています。しかし、札幌市の190万人を越えるためには、そのような小異を捨てて大同団結することも考えていくべき時ではないでしょうかね。福岡市太宰府区、福岡市春日区、福岡市志免区、福岡市大野城区とかで結構格好いいですよね。国勢調査の発表が待ち遠しく期待に胸ふくらむばかりです。