2016年8月

1日(月)
 週末は経営史学会西日本部会で繊月酒造さんへ行った関係から人吉市へと行ってきました。福岡へ来てから10年ですから、かなり色々と回ってはいるのですが、人吉市は初でした。まだまだ未踏エリアが残っています。常務さんが色々とお話してくださる予定だったのですが、会長が自ら社歴と自らの来歴をお話してくださいまして、オーラルヒストリーを色々している中でもかなりいい機会となりました。偶然ですが、福大の某先生のお父様と会長が神戸大学の同期だったということも判明し、縁の不思議さを感じたのでした。

 会長さんのお話の中で、焼酎の税率がウィスキーと同じにされてしまっているというこに対して、庶民のお酒である焼酎とウイスキーの違いなどへの不満なども聞いていたのですが、お話が終わった後に、ウィスキーとほぼ同じ度数の〈無言〉っていう樫樽長期貯蔵のものを試飲をして驚愕。僕は、個人的にアイリッシュウイスキーが好きなのですが、720mlで1本1万円を超えるクラスのアイリッシュウイスキーを飲んでいるかの錯覚をする程の絶品でして、それを3分の1程度の価格で出しているのですから、まぁ外国から目を付けられてしまうのも分かります。これなら、1本1万円をつけても売れますよという感想は秘密にしておいて、何瓶か買い込んだのでした。東京でも福岡でもあまり見たことが無い銘柄でして、人吉まで足を運んで良かったと素直に感じたのでした。

 人吉は内陸部で水郷で温泉が豊かなので、大分の日田と同じ感じかと思っていたのですが、日田よりもかなり湿度が低くて驚きです。しかも、朝晩は夏なのにもかかわらず結構涼しくなるエリアでして、気温はそれ程は低くないから、やっぱり湿度の関係で体感温度が下がるのでしょうね。日田で夏の温泉はなかなかの苦行ですが、人吉の夏の温泉は朝晩に入れば快適ですから、温泉好きには1年を通しておススメではないでしょうか。

 夕飯に〈京だる〉さんという炉端焼さんへ入ったのですが、そこで炉端焼をしていたお母さんが、よくよく聞いてみたら82歳ということでして、肌の色艶と働き者ぶりにどうみても80歳を超えているとは思えない状況でした。しかし、毎朝、温泉に入っているからということで、人吉の温泉効果にこれまた驚愕したのでした。炉端焼も美味しかったですが、人吉はキクラゲの産地でして、キクラゲの天麩羅や卵焼きなども絶品だったのでした。

 ところで、福岡へ戻ったら九重親方こと千代の富士の訃報に接しまして、61歳という若さに衝撃を受けています。すい臓がんを患っていたというニュースは前に聞きましたが、昭和は遠くになりにけりですよね。本当に格好いい力士でした。ご冥福をお祈りいたします。

11日(木)
 今年から〈山の日〉という新しい休日が出来まして、お盆休みを皆でゆっくりと休み、しっかりと消費をして欲しいと云うことでしょうが、貴重な夏休みなので研究室に籠もって論文を書いております。この夏もまた〆切を同時並行で抱えているので致し方ありませんが、原稿を仕上げたら何か自分に御褒美でも買ってやろうと奮い立たせています。

 ところで今上天皇の譲位に関して、〈生前退位〉なる耳慣れぬ単語が飛び交っておりまして、どうして〈譲位〉じゃないのかとカミさんと話していたのですが、音が〈攘夷〉と同じになってしまうために、少々不都合なんじゃなかろうかという所で落着しております。文字で見ていれば〈譲位〉で何ら問題は無いのですが、ラジオやテレビだけに頼る視聴者のためには〈ジョウイ〉とは違う音にしてやらないと、駄目なのでしょう。確かに、今上天皇が〈攘夷〉についての発言を出される、などと誤解をしてしまいましたら、大騒動になること必至でしょうからね。

 話は変わりまして、先日ボケボケと大学から家へと歩いて帰っている時に、何処かでふぁーっと軽く何かが手を包んだかなぁっという感覚があったのですが、家に帰ってみたら右手の甲から腕にかけて、長さ10センチほどに亘って周囲グルッとボツボツが出てしまっていました。一晩様子見かななどと話ながら放置しておいたら、かゆさから無意識に掻いてしまったようで次の日には悪化し、病院へと駆け込むこととなったのでした。

 町医者さんのところで見て貰ったところ、何の検査もなく、これはハムシ(羽虫?)でなかなか治らないよという診察が下されました。昨今のお医者さんっていうと、ゴテゴテと血液検査をしたり何やりですが、ベテランの町医者さんっていうのは、ローカルの虫の害とかなんて症状を見て一瞬なんだと感動をした次第です。薬を塗られ、包帯を捲かれ、結構大変な風になってしまいましたが、症状としては兎に角かゆいだけです。いわば、掻き毟らないための包帯です。

 とある先生に、テニスで捻ったか、研究のし過ぎで腱鞘炎かとちゃかされたのですが、そんな格好の良いものではなく単に蛾の鱗粉を被ってしまっただけです。そう考えると、モスラの鱗粉を浴びてしまったらどうなるのかと、庵野秀明監督の〈シン・ゴジラ〉を見たために思ってしまうのです。ちなみに、〈シン・ゴジラ〉はお勧めですよ。結構面白かったです。

16日(火)
 終戦から71年が経過し、戦争が終わった夏という色合いよりも、お盆としての夏という色合いの方が強くなったなぁっと感じた今年の8月15日でした。終戦時には皇太子として学童疎開をしていた今上天皇の譲位関連のニュースが大きかったこともあるのでしょうが、今後は更にお盆色を強めていくこととなるのでしょう。

 そんな中、大学時代に東京でお世話になったおばさんの訃報に接しまして、まだ70歳そこそこなのにと驚いていたのですが、その話のやり取りをしている最中に、つくばの産総研に勤めていた後輩も急死したばかりという話が舞い込んでしまいまして、諸行無常の気持を強くしております。どういう順番かはともかくとして、順に親しかった人達が亡くなって行くのは分かっているつもりなのに、なかなか平常心ではそれを迎えられないなぁっと思う四十路のお盆でした。

28(日)
 過日に熊本の人吉へと行った際に、人吉の名産品の1つがキクラゲなので大量に買い込んできたために、カミさんが試行錯誤を繰り返して、我が家の色々な料理にキクラゲがふんだんに使われています。乾燥キクラゲっていうのは、一晩水に漬けておいて戻すと5倍くらいに膨らみまして、これがなかなかの歯ごたえ舌触りです。

 5倍に戻したキクラゲを料理ハサミで千切りにして卵焼きに混ぜるというのは、人吉でも味わったオーソドックスな味わい方ですが、昨今の一番のヒットはお好み焼きです。これまた夏なのに熊本のキャベツが見つかったので、地震の復興応援も兼ねて熊本キャベツと人吉キクラゲに、熊本産のりんどうポークっていう豚、あとはイカは熊本産が無かったので長崎産で代用したお好み焼きとなったのでした。お好み焼きにキクラゲを入れる時のポイントは、5倍に戻したキクラゲを、あまり細かくなり過ぎないよう大きめに切り、歯ごたえを十二分に堪能できるようにしておくことです。

 熊本の復興応援といえば、たまたま天神のアクロス福岡をぶらついていたら熊本物産フェアをやっていまして、日奈久の竹細工っていうのがあったので、菜箸を新調してきました。日奈久といえば、文字通り日奈久断層の日奈久でして、地震の時は大変だっただろうに逞しく福岡までフェアに来てくれているのに感動したのでした。

 話は変わりますが、JR東海をベースにリニア新幹線が着々と実現に向けて動いていまして、京都駅がルートから外れそうとか、色々とニュースが飛び交っています。しかしながらリニア新幹線のニュースを見ているといつも疑問なのは、東京−大阪間にリニア新幹線を走らせるだけでは、両都市の所要時間が短くなるくらいしかメリットが無い点です。

 確かにそれは重要でしょうが、リニア新幹線は飛行機の路線の代替を考えるべきではないでしょうかね。現在、羽田空港にしろ混雑が酷いわけでして、リニア新幹線の行き先を増やせば、空の交通の緩和という意味でも大きな役割が果たせます。どうせ、山陽新幹線も改修時期が近づいているのですから、東京−名古屋−大阪−岡山−広島−福岡を一気に突っ走る日本横断リニア新幹線にすべきではないかと思います。

 まぁ福岡の事情としては、福岡空港の混雑が余りにも酷すぎ、しかもその混雑の大きな要素が羽田便の多さですから、リニア新幹線にすれば飛行機とリニア新幹線が競争関係となり、かなり東京−福岡のビジネス客や旅行客に便利になると思うんですよね。リニア新幹線は大阪で止めるのではなく、国家百年の計として博多延伸を計画すべきだと思っています。

31日(水)
 三川内焼の論文が早くもインターネット上で閲覧可能となりましたので、そちらへリンクしておきました。怪しい人物が権威者となり、官僚や学者がその怪しい権威者の文章を盗用してしまい、それら報告書が産地の発展に間違った方向性を与えてしまったという論文です。カミさんの研究を読んで強い影響を受けていますね。

 また昨年、『福岡地方史研究』から〈東アジアの中の福岡・博多〉というテーマでの論文を頼まれた関係から、戦時期の朝鮮人労働者についての論文を執筆しました。1930年代における朝鮮半島から日本へという出稼ぎ労働者数からプッシュ要因による移動を推計し、労務動員計画というプル要因による移動と、どのような関係性にあったのかという分析が主題です。こちらも官僚のいい加減さが1つの論点でして、三川内焼の論文に続いての官僚批判の論文となっております。まぁ、戦時の朝鮮人労働自体については、100%の出稼ぎではなく、100%の無理強いでもなく、往々にして真実は中間にあるという平凡な見解です。