2016年11月 |
2日(水)
来年度に活字化される予定の論文を2本ほど書き終えまして、今年中の大きな仕事はひと段落といったところです。ただまだ年末までに書かなければならない雑文が幾つか残っておりますので、完全に今年の仕事を終えたわけではないのですが、珍しく余裕のある晩秋から師走にかけてを迎えることが出来そうです。次の論文は何を書こうかと悩むところですが、あたためて来たアイデアが幾つかあるのでそれらを成長させていきたいところです。
成長といいますと、人吉の〈球磨の恵み〉っていうヨーグルトを、水分を切りながら育てて食べている話を以前に書きましたが、カミさんによりますとギリシアヨーグルトというジャンルのヨーグルトらしいです。ヨーグルトというとどうしてもブルガリアをイメージしてしまうのですが、ギリシアでのヨーグルトの食べ方っていうのは、水分を少しづつ切っていきながらクリーミーにして食べるのが一般的なようでして、知らず知らずのうちにギリシアヨーグルトに取り組んでいたのでした。
そんな〈球磨の恵み〉を求めてスーパーを彷徨っている時に、美味しそうな焼肉の塩ダレを見つけたので買い込んで来ました。ジョーキュー醤油というところの塩ダレなのですが、これが塩ダレ豚丼をつくるのに最適だということで、カミさんにお願いをして作って貰いました。味わいを濃くしますので、安いアメリカ豚やカナダ豚とかでも十分でして、カミさん曰く、何か揉んで軟らかくする下ごしらえをした上で、玉ねぎとシメジと豚を炒めて塩ダレ+アルファで味付けをし、最後に長ネギを加えて軽く炒めて出来上がりなのでした。絶品です。
4日(金)
昨日は文化の日ということもありまして、九州国立博物館へでも行こうかとカミさんと太宰府へと行ってきました。今年の春先にふらっと散歩した道すがらに二日市の〈榎社〉っていう神社があったのですが、今年の夏の発掘で菅原道真の邸宅とみられる遺構が出てきたとかで、もう一度見ておこうというのもあったのでした。JR二日市駅に入っている〈福栄〉っていう唐揚屋さんが絶品でして、わざわざ西鉄ではなくJRから回り道をして唐揚の食べ歩きもしつつ、榎社へと向ったのでした。ちょうど道路拡張工事で、神社内のクスノキの移植の真っ最中でして、あぁこの道路拡張工事で見つかったのかと合点がいきました。
その後お散歩がてら、太宰府政庁跡、戒壇院、観世音寺とお決まりのコースを歩いて、太宰府天満宮の門前町へと辿り着きました。唐揚を少々食べたとはいえ、二日市から太宰府まで散歩するとお腹が空いてきますから、門前町の何処かで食事をしようかとフラフラ見ていたのですが、あまりにもの人の多さと列に飲まれてしまいまして、いつも空いていて静かな天満宮の茶屋へでも行こうかという話になったのでした。
ところがこの〈うぐいす茶屋〉さんまでもかなりの人手で、かつて見たことが無い程の忙しさで茶屋の店員さん達が動き回っていて、お昼時も過ぎていたのに、門前町で食事を取れなかった面々が流れ込んでいて大賑わい。若いスタッフから、お婆ちゃんスタッフまでてんてこ舞いで、店の佇まいもあって高度成長期的な昭和レトロを感じさせる賑わいに感動してしまいました。天麩羅蕎麦と釜揚げ天麩羅うどんをそれぞれ食べたのですが、懐かしい昭和の味わいでけっこういけます。
まぁそんなこんなでブラブラしながら、九州国立博物館へ鳥獣戯画を見に行ったのですが、入口まで行って驚愕の事態。待ち時間2時間。えっ、鳥獣戯画だよ、京都や東京では通常展示だよということで、またの機会にしようとすぐに合意に達したのでした。現在福岡市では市の美術館が修理閉館中ですし、博物館はパッとしませんし、美術館・博物館好きが九国博へと殺到してしまっているようでした。
というわけで諦めたのですが、道すがら太宰府遊園地もなんと長時間待ちということを話している人がいます。まぁ秋の行楽シーズンで天気も良かったのですが、人が多過ぎ、賑わい過ぎです。こちらも福岡市の水族館であるマリンワールドがリニューアルのために閉館中ですし、市の動物園はリニューアル投資を続けていて値上げしていますし、色々な要因が合わさって家族連れ客が集中してしまっているのでしょう。
もう何がなんだか分からないため、いつものお気に入りの光明禅寺の庭園でも見ながら、ゆっくりとした時間でも過ごそうかと思って行ってみたところ、入口になんとスタッフのお婆さんが座っています。いつも、誰もいないところで拝観料を箱に投入するだけだったのですが、その箱の横に人がいるのです。そしてそれもそのはず、知る人ぞ知っていて観光客なんて滅多に来ない禅寺のはずが、庭園の周りは人で賑わっています。フランス語だか何だかを話している外国人観光客も来ていて、とっても賑やかなスポットになっていたのでした。
まぁ賑やかで楽しいのですが、文化の日ということで典型的な行動をしてしまうと、もう今の福岡では人混みに埋もれてしまうんだと再確認したのでした。それはそれで高度成長的な勢いがあって楽しいのですが、バブル後を長らく堪能している身としましては、他の人がしていない別の楽しみをまた探そうなどとカミさんと話して帰ってきたのでした。
7日(日)
ハーバード大学の歴史学のポンコツ教授が、3つ目のドタバタ大活劇をしているという話を聞いたので、〈インフェルノ〉を見に行ってきました。そして驚愕の事実。なんと、ハーバードからケンブリッジ大学へと移っていたのみならず。どうやら出身もケンブリッジ大学だったかのように描かれておりまして、あの悪名高き△やら□やら○やらで象徴学的に分析する歴史学の手法は、ハーバードのものではなくケンブリッジのものと言う事になったようです。
ハリウッドに対してハーバード関係者から数多の苦情が行ったことは容易に想像できますが、だからって、あれは全てケンブリッジ大学がポンコツなんだという遣り方は、どうかという気もします。まぁ、著書は大量に売れていたようでしたから、ポンコツ教授を母校のケンブリッジ大学が呼び戻したと云う設定で、アメリカ人たちはイギリス人へと嫌味をしているつもりなのでしょう。でもそれって、オブラートに包めていないですよね。。。
しかも、前作でローマカトリックから大顰蹙を買ったこともありまして、今回はほぼキリスト教的な要素が出てきません。ダンテの神曲が題材なので、もうちょっとキリスト教的な要素を入れても良かったような気がしますが、前回やからし過ぎたためにそれも出来ていないのでした。キリスト教的な薀蓄の多さが作品の魅力だったのですが、今回の映画ではその要素が減ってしまっているのが残念でして、原作の方はどうなっているのでしょうかね。
作品的にはハリウッド的なスピード感で疾走しているので映画を見ている最中は楽しめますが、持ち帰ってよくよく考えると矛盾がたくさん出てきます。原作では、もっと辻褄の合うような話になっているのかも知れませんので、そちらで再確認した方が良さそうです。
という感じで映画を見に博多駅へと行ったら、阿蘇の物産を売るミニコーナーがありまして、熊本復興応援を兼ねて色々と買い込んで来ました。熊本といえば昨今は〈赤牛〉が売り出し中でして、この赤牛のハンバーグとローストビーフを買うと共に、熊本はプリンが美味しいのですが、この熊本の濃厚なチーズのようなプリンを買ってきたのでした。去年、杖立温泉で色々と食べ比べたプリンも美味しかったですが、阿蘇の濃厚なプリンもまた絶品なのです。
10日(木)
アメリカの大統領選に集中していたところ、博多駅前が陥没ということで心もそぞろになりながら、アメリカの大統領選でトランプ大統領が誕生していく姿に魅入っていました。とりあえず博多駅前からキャナルシティ・中洲方面へと向う、博多駅の真ん前の直線道路が陥没でして、オフィッスも集中していますしなかなか大変な事態です。特殊なコンクリを注入して固めるらしく、何台ものタンクローリーが連なっている図は、シンゴジラのワンシーンを観ているかの如く現実感がない光景ですが、博多駅前に本当に穴が開いてしまっています。
地下鉄の延伸工事における大失態でして、延伸路線を決めた福岡市長の判断ミスが大きな原因の一つでもあるのですが、その市長が「はらわたが煮えくり返っている」と、他人に責任をなすりつけようと必至になり始めて、福岡の街は、陥没に輪をかける形で大騒動です。周辺の企業への損害賠償という大きな責務が降りかかってきますし、それが市へ行くのか、大成建設へ行くのか、どう案分するのか、これからが更に大騒動で各所苦難の日々となるでしょうね。
ところで本題のアメリカ大統領選挙ですが、前回の大統領選挙でも盛んに言われていた通り、アメリカのマスメディアはニューヨークの世論だけを考慮して報道しているため、アメリカ全土の様子を全く反映していないといわれている通りの、トランプ勝利で終わりました。マスメディアが集中するニューヨーク&ワシントンDCと、ハリウッドのあるカリフォルニアが、どちらも強烈な民主党の応援地域のために、アメリカ国内の共和党支持層の動向が常に伝わって来づらいのが、大前提の状況でした。
昨今は便利でして、ネット上で州どころか郡レベルの動向なども知ることが出来るのでネットサーフィンが楽しいのですが、ヒラリー勝利の州であっても郡レベルで見るとかなりトランプが票を取っている地域がたくさんありまして、一部大都市の一部階層にのみ支持されたヒラリーと、幅広く支持を集めたトランプという構図だったようです。逆にいうと、よっぽどの既得権益者達や不法移民関係者以外はトランプに流れたようでして、既得権益に対するアメリカ国民の怨嗟や、不法移民に対する嫌悪感っていうのは、思っている以上に強いようです。
イギリスでのEU離脱の国民投票の延長だという見方をする人も多いようでして、ジョン・レノンのイマジンにみられる世界を夢想した思想家達とその信奉者達による国や国民というカテゴライズを破壊する動きが、全世界的に忌避されている状況を読み取ることが出来ます。皮肉なことに、その一番大きな信奉者であったドイツのメルケル首相による移民政策の失態が、世界中で国と国民という枠を再び見直す動きに繋がっているのでしょうね。
話は戻してトランプ大統領ですが、ヒラリーが大統領ならば、日本がどのように追い詰められて悪くなっていくのかという想定が付いたのですが、トランプ大統領で何が起こるのかは全く分かりませんね。当たるも八卦、当たらぬも八卦の気分でして、日本に吉と出ればいいですが、日本に悪く出るにしても想像できない混乱になるでしょうし、まぁ世界は動いているよなぁっという事を、大きな穴の開いた博多から思う訳です。
しかしながら、だんだんと肌寒くなってきまして、来年の社会経済史学会全国大会(通称、シャケ大)の案内などが来ているのを見ると、年末も近づいているなぁっとしみじみと思うのです。コタツで温まってみかんでも食べましょう。
シャケ大といえば、レコ大の裏金が文春砲で賑わっていましたが、近藤真彦の頃から言われている話ですし、宮地的に一番の問題は、安室奈美恵が結婚引退するって言うことで〈CANYOU CELEBRATE?〉が受賞した1997年は、GLAYの〈HOWEVER〉が取る筈だったのにそれに与えず、その代わりに、1999年にGLAYの〈Winter,again〉に大賞をあげるのですが、1999年は宇多田ヒカルの〈Automatic〉かモーニング娘。の〈LOVEマシーン〉が取るべき時であって、1997年の穴埋めで1999年までおかしくなって、もうそれ以降は浜崎あゆみに氷川きよしに云々と、もう賞としての価値がなくなっていったんですよね。
眼鏡のベストドレッサー賞を貰った広末涼子は、なんで自分が貰うのかと首を傾げていましたが、まぁ現代社会においては賞なんてそんなものになってしまったのでしょう。ベストジーニスト賞とかも、訳が分かりませんし、流行語大賞は鳥越俊太郎が選んでいたんでしたっけ。選ぶ人間の品格が分かるので、賞は審査員の品格を測る指標としてしか、昨今では使い道がありませんよね。
15日(火)
昨夜の68年ぶりの巨大スーパームーンは生憎の雨模様で見ることが出来ませんでしたが、今夜の68年ぶりの巨大スーパー十六夜ならば見られそうでして、少々楽しみにしております。満月もいいですが、十六夜の控えめな美しさもなかなかだとは言いつつ、巨大十六夜だとどんな感じなのでしょうかね。
ところで先週末は社会経済史学会の九州部会で、『福岡地方史研究』に掲載していただいた戦時期の朝鮮人労働者についての論文について、報告する機会をいただきました。史学・歴史社会学などの立場からの研究が行われてきた分野でありますが、それを経済史学の視点から検証するとどうなるかという視点で考察した論考・発表です。
昨今は論文のみならず、学会報告のレジュメなどもリポジトリ登録できるので、プロフィールのところからリンクを貼っておきました。あくまでもレジュメですので、論文が読みたい方は、『福岡地方史研究』を御購入いただくか、近所の図書館へと購入リクエストを入れて貰えればと思います。この『福岡地方史研究』は、福岡のローカルな話が中心ですが、福岡は中世の博多にしろ、近世の黒田家にしろ、近代の鉄鋼や炭鉱にしろ、結構テーマが多くて面白いのです。
21日(月)
熊本地震の影響が気になっていた小国の状況を確認したいっていうのもありまして、2年ぶりに阿蘇小国へと行ってきました。2年前に宿泊した〈しらはなシンフォニー〉の方は満室だったため、今回は〈山翠〉をベースキャンプとしながら、色々と立寄り湯などを満喫してきました。〈山翠〉は相変わらずの料理の美味しさでして、天草の海の味覚が小国で味わえるっていうのが海の無い美濃人的には大満足な上に、晩秋の山の味覚を堪能したのでした。温泉も露天風呂が気持いいですし、なにげに、うちら夫婦でリピートした旅館っていうのは〈山翠〉さんが初めてなのです。
立寄り湯で湯の花が湧き上がる〈しらはなシンフォニー〉へと行ったところ、湯の花の量は熊本地震前よりも増えているような感じでして、前回宿泊した時に女将さんから、湯の花の量はけっこう変動があるというお話を聞いていたのですが、熊本地震と阿蘇の噴火で湯の花は増加傾向になったようでした。湯の花を顔や体にパックをしてやりますと、驚くくらいに四十路男もすぐにスベスベになってしまいます。
また、前回は行けなかった〈豊礼の宿〉に立寄ったのですが、こちらは湯の花がまったく無いのにも関わらず水質は乳白色でして、湯質の違いが楽しめます。あと、露天風呂へと入ったのですが、こちらの露天風呂はまさに見事なまでの借景でして、小国の山々の景色がまるで東山魁夷の絵のように目の前に広がります。晩秋の山の景色を露天風呂に浸かりながら見る贅沢は、日々の疲れを吹き飛ばしてくれるのです。
さらには地獄谷温泉と銘打っている〈裕花〉へと立寄りまして、こちらの露天風呂は林の中にたたずむ東屋の趣きです。〈豊礼の宿〉が遠景の自然の美しさであったのに対し、〈裕花〉の方は近景の自然の美しさに入り込んでいく感じでして、たまたまですがそのコントラストに惹かれてしまったのです。そして〈裕花〉さんでは、カミさんの大好物の卵が準備されていまして、完熟の温泉卵と、半熟に自分で加減した蒸し卵を食べ比べしたのでした。
そんな温泉巡りでしたが、温泉以外にも小国路を堪能して来ました。1つは、〈山翠〉さんから下ってファームロードの方へと向かうと、〈しらはなシンフォニー〉とかがある山川温泉エリアに出ますから、そこを経由しながら、北里柴三郎の生まれた北里エリアを抜けて、小国の〈ゆうステーション〉へと辿り着きます。このルートがちょうどブラブラとお散歩するのにいいルートでして、しかも下り坂ですから、お腹をすかせるためには絶好です。しかも晩秋の小国路は紅葉と落葉とが鮮やかであり、物悲しくあり、見ていて飽きさせることがありません。
あともう1つは、〈ゆうステーション〉のツーリズム協会で電動アシスト付きのレンタサイクルが借りられまして、静かな田舎道をサイクリング出来るのです。勾配の関係から、普通の自転車でのサイクリングは絶対に無理ですが、電動アシスト付き自転車を始めて体験しまして、これはかなり快適です。結構な傾斜の付いた坂も平気でサイクリング出来まして、澄んだ空気の中でのサイクリングは最高です。下城の大銀杏と鍋釜滝も見てまいりました。小国の滝というと〈生茶〉や〈おーいお茶〉のCMで使われた鍋ヶ滝が有名ですが、この下城の鍋釜滝もなかなかの絶景です。時間があれば鍋ヶ滝や下城滝も見たかったのですが、時間が無くて残念。でもまた次の楽しみが出来たのでした。