2019年7月

3日(水)
 現在、九州は豪雨に見舞われていまして、何日間かで1000ミリ、つまりは1メートルを超えるような降水量の地点も出ているとか。災害もすでに発生していまして、心配な限りです。

 ところが、実は福岡市中は昨年来の渇水状態でして、今回の豪雨もあまり水がめを潤していません。ダムの貯水率が20%まで落ち込んでいたのが、ようやくと22%まで戻して来たといったところです。南の方が集中豪雨で被害を受けている最中、福岡の水がめにはもっと降水量が欲しい状況でして、何とも悩ましい限りです。

 線状降水帯という単語を最近はよく目にするようになりましたが、あるエリアでは豪雨なのに、そのエリアから外れると降水量はそれほどでもない状況でして、豪雨と渇水という矛盾する状況が、近隣エリアで発生してしまっています。今の北部九州は、まさにこれです。

 当初は福岡市あたりも連日の雨という週間予報だったのですが、晴れ間の見える日々へと予報が修正されていまして、今年の渇水はどうなってしまうのやら、心配しきりです。一箇所に集中的に降るのではなく、広いエリアで満遍なく降ってくれないものかと、空を見上げながら思うのでした。

8日(月)
 我が家のリビングに時計をかけました。しかもアナログ時計。大学生として1人暮らしを始めて以来、彼これ四半世紀にわたって、アナログ時計とは縁の無い生活をしていました。東京にいた頃は、自分の家にはデジタル時計くらいしかありませんでしたし、福岡に来てからはそもそも部屋時計というものさえなく、腕時計や携帯電話の画面で、必要がある時にチラッと時間を確認するだけで過ごしていました。

 ところがここに来て、家の壁にアナログ時計をかけることになって、衝撃に襲われています。秒針が動いています。秒針の動きによって、時間に追われているような感覚がやってきます。

 腕時計や携帯電話のデジタル時計なんていうのは、必要がある時にだけ時間を確認するものです。だからそれ以外の、だいたいの生活においては時間は曖昧に大凡を把握するだけです。この四半世紀、何だかんだと言いながら、僕の時間への拘束はこの曖昧さと、必要なときだけの時間のチェックで終わってきたのです。

 ところが、アナログ時計を家の壁にかけた途端に、時間の流れを強く意識させられます。ふと壁の時計に目をやると、少し前と比べて時間が流れています。この衝撃、インパクト。カミさんと二人して、我が家の中で時間が流れている事に対して大騒ぎをしています。これが今年の我が家における、最大の出来事になりそうです。アナログ時計、恐るべし。

16日(火)
 連休中に、ふたたび福岡市動物園へと行ってきました。あの迫力あるアムールトラのカイ君を見たくなったのです。トラ舎の周りは前回もですが、今回も巨大なカメラを構えた人たちがいまして、やはりポスターにデザイン化されるだけであって人気ですねぇ。

 そんなアムールトラの横には、ライオンの檻があります。前回、ボケーっと寝転がっているだけの巨大な猫となっていたライオンを見て、野生を忘れちまったライオンかと思っていました。ところが今回、トラのカイ君を堪能してライオンの檻の前に行ったところ、メスのネネはいるのに、オスのチャチャ丸がいない。人だかりを注意して見ると、檻の横の小部屋にチャチャ丸は入ってしまったようなのです。

 それでチャチャ丸の部屋を覗いたところ、うなり声を上げながら徘徊している。どうやら、お食事タイムの直前のようでして、かなり不機嫌なうなり声と共にウロウロとしており、小部屋が薄暗かったこともあってそのまま通りすぎてしまったのでした。

 その後は、いろいろと奥を見回って、また帰り際にアムールトラのカイ君を見て帰ろうかと思って、ライオンの辺りも通りすぎようとしました。薄暗い小部屋は、お食事タイムが終わったらしくとっても静か。もうチャチャ丸は小部屋にいないかなと思い、ふと覗き込んだのです。すると、完全に気配を消してジッーっとしているチャチャ丸と、目が合ってしまったのです。その距離は1メートルもありません。不気味というか、恐怖というか、巨大な猫なんかじゃなく、あれは怖い。

 あまりにも不気味で静かにギョロッと見てくるチャチャ丸に、僕は少々怖気づいてしまってカミさんに話しかけたのでした。とlころが、あれは腹も膨れて、周りから攻撃されないか見ているだけで怖くないんだと、さっきの気配を出しまくってうなり声を上げていた時の方が攻撃的だったという解説をされてしまいました。気配を出していても、お前らなんてすぐ捕まえて食える、っていう事らしいです。でも、気配の消えた至近距離のライオンの方が怖いわと、僕は思うのでした。

22日(月)
 社会経済史学会九州部会が大分で開催されまして、そちらで発表をしてきたので大分帰りです。そして、帰る時に足をのばして、はじめて〈うみたまご〉へと行ってきました。九州も13年目になりますが、そして別府も何度か行っているのですが、〈うみたまご〉は初めてでした。大分駅からタクシーで2500円、別府駅からタクシーで1500円という、絶妙な立地ですね。

 評判が良いことは知っていましたが、確かにかなり良いです。イルカか何かのショーの時間で、館内が空いている時間帯にボケボケと歩いていたところ、壁によって下さいと声をかけられます。なんと、オットセーが散歩をするとの事。いや、ほんとうに驚き、目と鼻の先にオットセーがやってきます。距離の近さが凄いですし、間を遮る物も何も無い。芸を仕込んでいる最中なのでしょう。空いた館内ルートの途中で、ゴロンゴロンと転がり、手を上げて、逆立ちして、ゆっくり散歩していました。

 巨大なセイウチや、トド、アシカ、ゴマフアザラシなどと、〈うみたまご〉は海獣系が充実していますね。さらに、触れるエリアにエイがいる。ヒトデやナマコやを触るのは良くありますが、エイを触れる。しかも少々大きい。帰ってきて調べたところ、最近では大阪の海遊館や葛西の臨海水族館などでも触れるらしいですが、僕が行った昔々には、どちらにもそんなコーナー無かった気がする。ということで、エイに触るのも初体験。

 エイヒレの部分を重点的に触ったのですが、あのエイヒレの感触は全くありません。ヌメッとしています。ウナギとかナマズとかのヌメヌメと同じ感じでして、もうちょっと鮫肌みたいかと思っていたのに意外でした。ヌメヌメで質感のあるあのエイのヒレが、どうやったらエイヒレになるのか、ちょっと謎です。かなり乾燥に時間がかかるんだろうなぁ。

 巨大なクエとか、桃色ペリカンとか、その他にも見所たくさんでして、今まで行っていたなかったのが勿体ないくらい。まぁ、福岡にも、鹿児島にも、沖縄にも、いろいろと水族館があるから、わざわざ温泉がメインの大分で水族館へは行っていなかったのですが、それぞれ特徴があって侮れないなぁと思うのでした。

 帰りはタクシーで別府駅へと行き、帰りの特急ソニックまで50分くらい、お土産でも買いながらボケボケしようと思ったんですよね。ところがタクシーの運転手さんに、駅前の高等温泉っていうのが大正時代の温泉でお勧めだと聞いて、タクシーを降りるや否や、カミさんが1人だけで温泉へ。電車までには戻って来いよと伝えつつ、お土産売場で久住高原のガンジー牧場のハムという美味しそうなものを発見。買い込む。そんなこんなしていたら、10分だけ温泉に入ってきたというカミさんと合流し、久住高原のアイスクリームを急いで掻っ込んで帰路に着いたのでした。

 その10分間の温泉は必要だったのか?

25日(木)
 今夏の我が家のヒット料理は、茄子の揚げ浸し。茄子を隠し包丁を細かく入れながら大きく切ってあると、かなりボリュームがあって肉食をしている感じがしてきます。醤油と味醂に、アゴと昆布と椎茸という九州産の3つの合わせ出汁に、すり下ろし生姜を入れて汁を準備しておく。鷹の爪や砂糖は、その時の気分で入れたり入れなかったり。あとはフライパンで軽くソテーした茄子を漬けるだけ。荒熱をさまして冷蔵庫で冷やすと、これが絶品です。カミさん曰く、隠し包丁を細かく細かく入れることがポイントだとか。

 この茄子の揚げ浸しを、御飯にぶっ掛けて行儀悪く丼飯にして食べるのも良し。素麺の上に乗せて、茄子に浸み込んだ汁を少しづつ素麺につけながら食べるも良し。普通におかずにして食べるも良し。夏はどうしても、冷たいものを食べたくなりますから、この茄子の揚げ浸しを冷やしたものは凄いです。冷蔵庫から、これが入ったタッパを取り出すときの幸せは、なかなか表現し尽くせません。

 しかしこの茄子の揚げ浸し、重大な問題があります。僕は洗い物担当なのです。まな板は茄子を切るためにしか使っていないのですが、まな板がとってもヌメヌメになります。栄養素として脂分が多いわけでもないのに、茄子を切った後のまな板っていうのは、なぜか洗うのが大変です。どの成分のためなのか分かりませんが、これが結構な一苦労なんですね。まぁ、大量の茄子を切り続けているカミさんの手前、あまり大きな文句は言えませんが、茄子を切ったまな板はとにかく謎です。

29日(月)
 週末は筥崎宮の夏越祭でした。昨年は、『軍港都市史研究X佐世保編』の書評会のために、カミさんともども佐世保に行っていたために、帰ってきた時には台風もあって全て撤収済という悲しい事態だったのですが、今年は何も無くフル参加できました。茅の輪くぐりによって無病息災を祈るっていうことどころか、夏越祭というお祭りそのものが僕の地元には無かったのですが、どういう神社だとやっている祭りなんでしょうかね。

 でもまぁ、お祭りっていうのは、屋台が楽しいものでして、夏越祭の屋台を堪能してきました。前にも書いたかも知れませんが、500店もの屋台が所せましと並ぶ放生会は、もはや普通の祭りを超越してしまっておりまして、ボケーっとする感じではありません。それに比べて夏越祭は、屋台の数も程々ですし、福岡の人口が増えている関係もあってかなり混んではきていますが、それでもまだ近所でボケーっと出来る祭りです。

 無料休憩所の椅子に座って、ビールを片手に唐揚食べたり、鮎の塩焼きを食べたり、焼トウモロコシを食べたり、参道を行く人たちを眺めたりと、まだ何とか牧歌的です。夕涼みの時間になってくると、ときたま海岸側からサッーっと冷たい風も流れてきて、贅沢な時間を味わうことも出来ます。ただやはり、前と比べると混み過ぎな状況になっているのは間違いなく、もうちょっと田舎のもっとボケーっとした祭りへも遊びに行きたいなぁっとも思うのでした。

 福岡は来年には人口160万人を超えるみたいですし、今後も更に混み合っていきそうですねぇ。