2020年2月

3日(月)
 週末はスーパーででっかい鯵を見かけたものでして、ここ最近の念願であった鯵のなめろうをカミさんに作って貰いました。福岡に来て驚いたことの一つが、鯵が大きいことです。まるで鯖みたいな鯵が、そこらじゅうで売っています。鯵っていうと、岐阜では温泉宿の朝食に出てくる手の平サイズの開きくらいしかお目にかかれないので、鯖と同じ大きさをした鯵をリアルに目にすると、なかなか鯵だと認識できなませんでした。それが、福岡に10年以上住んでいると、でっかい鯵を所望するようになるのだから、人間っていうのは贅沢なものです。

 無性に食べたくなった鯵のなめろうをリクエストして、カミさんはつくったものの、鳥取生まれのカミさんは鯵には触手はあまり伸びません。でも、美味しいから食べてみなよと言いながら、カミさんの作ったなめろうを、カミさんに勧めていたところ、サーモンのなめろうが食べたいと言い出す。サーモンなんて、岐阜で売っていても福岡で売っていても同じだと思うのですけどね。カミさんの主張を受けて、連日のなめろう。ただし、2日目はサーモンのなめろうと、鯵のなめろうのお替り。

 サーモンのなめろうは、鯵のなめろうの薬味やたれをベースにして、アボカドとマヨネーズを加えて、ちょっと変わり種なめろう。勧められるままに食べたところ、こっちのなめろうも美味い。サーモンとマヨネーズの相性は抜群だなと思いながら、米がすすむすすむ。しかし、絶対に明智光秀も斎藤道三も、こんな美味い魚は食べていないだろうなと、ニンマリするのでした。

 それにしても本木雅弘の斎藤道三が、「操り人形に毒は盛りませぬ」という名言を吐いた麒麟ですが、美濃の国の状況をよく描いていて感心します。よく県民性とかいう本やデータがありますが、岐阜県、美濃に関する限りあれは誤りだらけでして、美濃は西濃・中濃・東濃でかなり歴史も性格も違っています。西濃でも岐阜あたりか近江近くか、東濃でも尾張よりか信州よりかなど千差万別です。昔の国人領主の時代もそうでしょうが、江戸時代も小藩に天領にと入り乱れているので、美濃国としての一体性というのが歴史的にも現代でもあまりありません。

 伊藤英明が演じる斎藤義龍に、このまとまりのない美濃をまとめ上げたいと語らせ、父道三の政策への批判を加えさせているところなどは、単なる出生をネタにした確執という陳腐な話ではなく、重厚な感じになっています。道三を滅ぼし、織田信長の侵略を許すこともなかった斎藤義龍は、逸材であったことは間違いないでしょう。それが若くして死んでしまうのは、やっぱり毒殺でもされたのですかねぇ。今回の大河は、病死でいくのかな、毒殺でいくのかな。信長や秀吉が主人公だと悪く描かれてしまう斎藤義龍ですが、今回は魅力的でいいですねぇ。

10日(月)
 近所のお蕎麦屋さんを土岐家の末裔の方がやっていたので、土曜日に半ドンで家に帰ると食べに行っていたなぁっと思いながら、そこを滅ぼした斎藤道三を見ています。〈釣りキチ三平〉が大量に置いてあって、それが読みたくて、毎週のように土岐さん処へと通ったのが思い出されます。美味しいお店なうえに、子どもが長居をしていても許してくれて、斎藤道三は本当に悪い奴だと当時は思ったものです。

 しかしながら、モックンの斎藤道三はいいなぁ。土岐さんちには申し訳ないけど魅力的だなぁ。堺正章が扮する医者の博打の借金を肩代わりしてやるかわりに、高橋克典の病状を探らせるんですが、病状を知って肩代わりの10貫の価値があるっていうセンスがいい。脚本がモックンの道三とピッタリ合っていまして、蝮の計算と腹黒さがよく出ているなぁ。10貫、現在の貨幣価値だと数十万円〜150万円くらいらしいですから、まぁちょっとした額です。

 堺正章と斎藤道三のことを疑いながら、それでも騙されてしまう高橋克典は、織田信秀の限界みたいなものをよく出していますね。本木雅弘の方が何枚もうわてだが、それでも尾張で勢力を拡張させていくという、上の下っていうポジショニングの役柄をよく演じ切っていまして、もうすぐ死んでしまうのが勿体ない。42才での死去ですが、30代終盤くらいからは体調を崩していたとのことで、今回はその辺のことだったのでしょう。

 ところで、明智光秀は尾張で吉法師に会うこともなく、人質中の竹千代に会っていますが、これは南光坊天海への布石なのか否かが気になります。あそこで明智光秀が竹千代を救出したら天海僧正だったけれども、諭して終わったから天海説は採らないのではと思うのですが、どうなんでしょうね。時代考証の小和田哲男は天海説を強く否定していますので、今回匂わせただけなのかな。最期も匂わすかどうか気になります。長谷川博己は、さすがに十代の頃は無理がありましたが、今回は20才くらいの出来事でして、このくらいだと本当に20歳くらいに見えているので凄いですね。

 そしてナイナイ岡村が芸達者で、めちゃイケを台本通りに演じていた演技力は目を見張るものがあります。芸人さんっていうよりも、本質的には芸人を演じている役者さんとしての色合いが強いと常々思っていたのですが、思っていた以上に良いです。彼が果たして単なる農民役なのか、それとも何かの役割が与えられるのか、期待されるところです。世上の噂では、最期に光秀の首をとる落武者狩りの農民説、三河出身だから服部半蔵かその周辺の忍び説などなどありますが、まだよく分かりません。

 でもまぁ、こうやって戦国時代のコアな視聴者を楽しませていると、視聴率的には一般の人たちが置いてけぼりになってしまいますから、痛し痒しですよね。マニア的には、美濃の国人衆だとか、織田家臣団だとか、もっともっと大量に登場させてエピソード満載にしていって欲しいのですが、多分そういうニーズは世間の逆なんだろうと思うのでした。ほれより、ほん時歴史が動いたみたーな、時代の状況を話とりゃーすようなのやらがオープニング前にあらへんし、昨今の大河とちごーとって一般視聴者にはちょっとたるーてあかんやらあ。ほやけど来週はまた松永弾正がでやーすし、どえらぁそーましーやら。ほれにおっさま出てきて本能寺でぎょおさん鉄砲扱っとると伏線張っとりゃーすし、全くどーおゆう。ほやけどほやもんで、うちのカミさんはよろこんどりゃーすわ。大概やよ。

18日(月)
 あんなに美濃と近江の国境を行き来しているのに、熊やイノシシに遭遇しないのは運がいい証拠だという感想をカミさんは抱くらしいのですが、伊吹山はともかく、街道に熊は出るのかなぁ。イノシシは出るかも知れないけど。まぁそれさて置き、近江の国友村っていうのは、それだけで胸がワクワクしますね。種子島、堺、根来、国友と、単語の響きがいい。松永弾正の鉄砲を核兵器のように扱うというセリフはなかなかのアイデアでして、今回の大河ドラマの脚本は完全に歴史オタク向けだわ。夫婦で議論するネタにもなって面白い。

 明智光秀が今度の出張では経費カットは出来ませんよと斎藤道三に伝え、斎藤道三も今回はそれをぐっと飲みこむ感じでして、来るべき織田信長との主従関係への布石が打たれているような気がします。織田信長の場合には、元々ああいう渋ちんなお金の出し方しないでしょうけれども、金を出した分だけ、自由裁量権はぐっと少なくなってブラック度は上がるだろうと思います。信長にあんなことを言ったら、頭を物で打たれるな。

 斎藤道三と明智光秀の関係性は、美濃の人間にとっての快適な労働環境の様子を描いていまして、よく観察された脚本だなぁっと思うのです。このような斎藤道三に描かれたようなやり方に慣れてしまうと、織田配下では働きづらいですよね。竹中半兵衛が、織田信長直轄を嫌って木下藤吉郎に仕えたというようなエピソードは、こういう美濃の道三と尾張の信長の違いなどを念頭に置いた、当時の人々が考え出したストーリーなのでしょう。

 まぁ、美濃の人間は器用な人間が多いので、織田信長的なブラック労働にも適応してしまうところがあるわけですが、今回描かれている斎藤道三的な労働環境の方がより実力を発揮できると思うのですけどね。このくらいの余裕がある働かせ方の方が、ワークライフバランスの観点からも真っ当だと思います。斎藤家でラランララーンと働く明智光秀を見れば見るほど、織田信長の下でブラック労働に追い込まれていく様子を見たくなるのは、少々悪趣味でしょうか。

 美濃と尾張の違いが描かれることにも期待が持てて、本当に面白くて仕方がないんだけど、こんなにマニアックにして、全国の人達は果たしてついて行けるのだろうかという心配も。。。

20日(木)
 ユネスコの無形文化遺産に風流踊が申請されることになり、郡上踊などが入っているというニュースに接したために、頭の中を「七両三分の春駒、春駒」というフレーズが壊れたテープレコーダーみたいに止め処もなくリピートしていまして、無意識に盆踊りを始めてしまいそうな状態になっています。

 それはさておき、ついに福岡でも新型コロナウイルスの患者が発生してしまいました。東京、和歌山、愛知、沖縄、北海道などと地名が並んでいて、早晩、福岡でも患者が発生するだろうなとは思っていたのですが、実際にそのニュースを聞くと、やはり緊張します。しかも中国への渡航歴もなく、感染源なども全く不明な人が罹患しているという事でして、福岡でもある程度すでに広がっているのか、その辺も何も分かりません。

 ダイヤモンド・プリンセスの船内や病院での院内感染の状況を聞くだに、かなり感染力の強いことが分かっていますが、一方で単発の感染者だけに終わっている地域もあり、感染力の強いグループと弱いグループが混在しているようにも見えます。すでに何世代かウイルスが変異を繰り返しているみたいでして、どの世代のウイルスなのかによって感染力が違うのかなぁなどとも想定していますが、まぁよく分かりませんね。

 サージカルマスクだけで対応できる状況では無さそうでして、アルコール消毒を中心にするしかないでしょうね。最近は、スーパーマーケットとかにも消毒用アルコールが置かれているケースが多いですけど、利用者があまり多くないのが気になります。自分や家族の身は自分で守るためにも、アルコール消毒は細目にした方がいいですよ。アルコール消毒のウェットティッシュなども、けっこう重要です。この状況下では、潔癖症なくらいに除菌する方がベターでしょう。

27日(木)
 1565年と言いますから、まだ明智光秀が越前の朝倉義景のところにいた頃の話ですが、朝倉義景はユースケ・サンタマリアがするようでして真田信之を演じた大泉洋とキャラが被ってくるという話はさておき、越前から山代温泉まで傷を治しに湯治に出かけたというエピソードが残っています。そのため僕も少々、明智光秀の足跡をたどる意味もあって、小松空港を経由して行ってきました。新型コロナウイルスの関係でギリギリまで迷いましたが、小松も加賀も大丈夫そうなので行ってきました。

 あの辺は北陸新幹線の工事が佳境に入っていまして、小松駅と加賀温泉駅という在来線で3駅しか離れていないところに新幹線の駅ができるらしく、しかも加賀温泉駅は加賀市の中心部である大聖寺駅から在来線で隣の駅という関係で、色々と地域開発も難しそうな感じでした。今年は暖冬の関係で雪は遠くに見える白山の山肌にしかありませんでしたが、普段はここが一面の雪に覆われているのかと思うと、それを見たかったなぁっとも思うのでした。まぁ、雪が多いと交通も混乱して大変ですから、良し悪しですけどね。

 山代温泉で明智光秀がつかった温泉がどこなのかはよく分かりませんので、適当にネット検索をして〈吉田屋山王閣〉さんという旅館に泊まったのですが、これが大当たりでしてお湯がとてもいい。硫酸泉らしく、硫黄の香りはあまりしないのですが、硫酸が肌の表面を溶かすからなのか、驚くくらいにツルツルになります。四十路の肌をツルツルにしてどうするんだというくらい、温泉効果抜群の湯です。しかも老廃物とかが溜まっていたんでしょうね。1回目に入った後は、デトックスが利きすぎて体が動かなくなるほどでした。かなり強いお湯です。

 勧められて食べたノドグロが、これまた格別。ノドグロが高級魚だという事は知っていましたが、これまで僕は甘く見ていて、あまり積極的に食べようと思ったこともなかったんですよね。それが、焼き加減が良いのか、塩梅が良いのか、魚が凄いのか、理由はよく分からないのですがとにかく絶品。冬の良く脂ののったノドグロの素晴らしさは、これまで知らなかった自分を責めたくなる程の美味しさでした。

 そして加賀のもう一つの絶品は、大聖寺駅からほど近い〈一本田〉さんという越前蕎麦のお店。売り切れたら終わりでして、お昼の2時間くらいしか営業していない結構貴重なお店です。蕎麦だけではなくランチ定食も美味しいらしく、次から次へと地元の人が入ってきて、その人気店ぶりにびっくり。ランチも美味しそうだと思いつつも、越前蕎麦を目当てに食べに来ているので目的を完遂する。

 強力粉をつなぎに使い、ツルツルと啜って喉越しを楽しむんじゃない蕎麦っていうものを一度食べてみたかったのです。越前ではなく加賀で越前蕎麦を食べることになるとは想像だにしていませんでしたが、辛味大根のおろし蕎麦を注文してみました。そしたら確かに、啜るのと噛みしめるのを合わせた感じで味わうお蕎麦でして、信州蕎麦とはまた違った食感と美味しさがあります。普段はうどん派のカミさんも、珍しく蕎麦を注文して食べていましたが、蕎麦なのに珍しく気に入っていました。