2024年1月 |
10日(水)
あけましておめでとうございます。能登大地震に海保機と衝突した日航機炎上、魚町銀天街のちかくの鳥町食堂街の延焼、八代亜紀訃報、次々と入ってくるショッキングなニュースに目を回す日々ですが、パーティー券事件での池田佳隆議員の逮捕が注目されます。何て言ったって、東海中学・高校の先輩です。東大前駅での刺傷事件以来の大きな逮捕案件ですね。でもやはりまだまだ、あさま山荘事件には勝てないな。
今回のパーティー券事件はロッキード・リクルート事件に並ぶという話も出ていますが、リクルート事件の時には小物過ぎてリクルート未公開株を貰うことができなかった東海OBの海部俊樹が、棚ぼた式に総理大臣になってしまったという案件でしたが、今回はパーティー券をがっつり返還されていた池田佳隆の逮捕という事でして、ロッキードやリクルートに対してのセコさが滲み出ています。そして証拠隠滅という事で、ドリル優子からのドリル指南があったのか、それともドリル優子をインスパイア−しただけか知りませんが、ちょっと小物さに磨きがかかっています。
選挙になかなか勝てなかったようですが、となると買収案件なのでしょうか。裏金が買収に使われたのならばそこを明らかにして欲しいですが、そうならないようにドリルでの証拠隠滅なのでしょうか。悪質ですね。ちなみに次に逮捕されそうな参院岐阜選挙区の大野泰正は大野伴睦の孫ですが、大野伴睦の名言として知られる「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」にちなむと、逮捕された政治家は人以下っていうことで良いのでしょうか。大野伴睦を墓から掘り出して聞いてみたいところです。
年末年始は2本ほど論文を同時並行でまとめていたのですが、なんだか世間の喧騒と家でのゆっくりと流れる時間は別物のようです。そしてふと労働時間について考えてみたのですが、論文のことを考えている時間を労働時間にカウントすると僕はかなりの働き者ですが、論文の時間を趣味の時間とすると僕の労働時間は極々僅かな怠け者になります。人間ドックの質問項目に週の労働時間とありまして、これを答えるのに困ってしまったためにそんなことを感じているのですが、僕の労働時間って果たしてどのくらいなのか、いくらでも長く言えるし、いくらでも短く言えるし、難しいですよね。
16日(火)
ドリフターズとひょうきん族の世代ということもあって、ダウンタウンの内実はあまりよく分かりませんが、とんねるずくらいから笑いの質が変わっているという感覚はありました。とんねるずは〈食わず嫌い〉は面白くて見ていたのですが、ダウンタウンまでくるとあまり見ようかと思ったこともなく、名前はとてもよく知っている割には内容を知らないという代表格でもありました。
今回の件については、音楽家でもある伊東乾東大教授がやっさんのダウンタウン評をもとにして論じているのを見て合点がいったのですが、ダウンタウンの笑いは強者が弱者を笑うタイプの笑いなんだと。お笑いの伝統は、弱者が強者をやりこめるという価値の逆転に面白さがあったものが、ダウンタウンの笑いはそうではなく、やっさんに言わせれば「悪質な笑い」なんだと。伊東乾はこれを「分別があればやらない荒稼ぎ」と呼んでいます。
そうは言っても、時代の一部はダウンタウン的な笑い(それは関東ではとんねるず的な笑いでもあったでしょうが)を求めていったからこそ、ダウンタウンは売れに売れたわけです。1980年代のバブル的な世界というのは、儲かれば正義という時代でして、バブルがはじけた後にもテレビ業界などの一部にはそれが根強く残ったのでしょう。そしてその影響は、テレビ業界を飛び出て実社会にも多大な影響を及ぼしたことも、いじめ問題の拡大などとともによく知られているところです。
今回の、プロのアテンダーを雇わないで、後輩芸人たちに素人アテンドをさせていたなんて言う問題は、まさに先輩が後輩を使いっ走りに使うパワハラの構図でして、性的な問題の真偽はひとまず脇へ置いておくとして、それ自体が現代社会ではコンプライアンス的に耐えられない事案です。それでもテレビ局は視聴率のためには、コアなファンを擁するダウンタウンを使ってきたわけですが、性的な話題が前面に出てくることでさすがの「分別があればやらない荒稼ぎ」を是とするテレビ業界であってさえも、耐えられなくなったという事でしょう。
伊東乾による「分別があればやらない荒稼ぎ」という視点は非常に秀逸だと思うのですが、高倫理化している現代社会にあっては、この種の「分別があればやらない荒稼ぎ」をしている人たちっていうのは、今後も次々と標的にされていくことでしょう。ホリエモンなどはそれを〈妬み〉や〈やっかみ〉で片づけてしまうでしょうが、そうではありません。一般の人々は自分たちと同じような倫理観を周囲へも求めているだけでして、政治家であろうと、芸能人であろうか、経済人であろうと、学者であろうと、一般人の普通の感覚を忘れたらダメっていうだけの事じゃないでしょうかね。倫理感高く稼いでいる人たちに対しては、多くの人は称賛と応援をすると思いますよ。
18日(木)
最近またよく西九州新幹線(長崎新幹線)のことがニュースになるのでカミさんと話していたのですが、国土交通省が根本的なところを誤解しているんじゃないかという疑念があります。それは、佐賀県側が費用負担などの重さを嫌がって条件闘争をしていると、国土交通省が考えてしまっているのではないかという点です。
佐賀県、というよりもより正確には佐賀県の意見に強い影響を及ぼす佐賀市にとって、佐賀駅ルートというのはタダなら欲しいという路線ではありません。タダでもいらないという存在です。言うなれば迷惑施設なのです。国土交通省は、この火葬場や産業廃棄物処分場や屎尿処理場みたいな佐賀駅ルートを佐賀県(というよりも佐賀市)へと押し付けようとしているという理解をするところから、まず出発すべきなのになぁっと思うのです。ところが、新幹線は便利だから全国津々浦々欲しいだろうという、国土交通省の担当者の思い込みによって、その事実を直視できていないのではと思うのです。
もし佐賀駅ルートを国土交通省が押し付けたいならば、迷惑施設とて、原子力発電所に電源三法があるように、毎年多額の賠償金、迷惑料を佐賀県に払い続けるようなシステムを構築しない限り、佐賀県は合意をすることはないでしょう.、そのくらい迷惑施設として嫌がられています。理由は単純で、佐賀駅ルートでは佐賀市に何の利益もないどころか、不利益だらけだからです。嬉野や武雄や鳥栖にはメリットがありますが、佐賀市は不利益しかない。だから佐賀県全体の意見として迷惑施設なのです。そして、そんな電源三法のような迷惑料を払うシステムを、新幹線で構築するのは無理でしょう。だから佐賀駅ルートは無理筋の話なのです。
今の状況は、嫌よ嫌よと嫌がる若い女の子に対して、本当は便利な生活をしたいから高価なものが欲しいから俺に抱かれたいんだろと迫るヒヒ親父みたいな状況に、佐賀と国交省との関係がなってしまっています。嫌だって言っているものは、心底嫌なのです。そこに嫌よ嫌よも好きのうちはありません。国土交通省は、権力と寝ろと言っているような、そういうモテない勘違いオヤジの醜悪さを醸し出していまして、はやくそういうポジションから脱却すべきでしょう。
佐賀空港ルートとか、空港と駅の中間点の新佐賀駅ルートというのは、佐賀市にとってメリットがある案です。佐賀空港周辺なり新佐賀駅周辺なりの再開発事業とセットになりますから、そこに佐賀市としてもメリットを見出すことができます。新幹線だけでは迷惑施設であったものが、この佐賀空港もしくは新佐賀駅周辺の再開発と合わさることで、迷惑施設から妥協しても良いラインまで下がってくるのです。
久留米商工会議所が誘致の声を上げていましたが、こちらは福岡県の財政負担次第でしょうね。たぶん、それなりの額の負担が福岡県に発生してきます。大分・宮崎への新幹線ルートととして、小倉経由ルートではなく久大本線ルートを望む声もありますから、この辺と組み合わせると佐賀空港・新佐賀駅−柳川駅(大木町あたり?)−久留米駅−日田駅−玖珠駅−由布院駅−別府駅−大分駅というルートは魅力的です。外国人旅行客は新幹線のフリーパスを購入することができますから、嬉野・武雄などの温泉から、日田を経由して湯布院・別府へと温泉インバウンドをより振興することが可能です。柳川の川下りもインバウンド客に人気ですし、荒唐無稽なルートとは言えないニーズがあります。
あとやはり、福岡空港の混雑もまた大問題な状況でして、インバウンド客が戻ってきたことで福岡空港は再び飽和状態に戻っています。本来ならば北九州空港の利用を促すべきなのでしょうが、北九州空港の場所が悪い関係で、あまり代替関係にありません。これを佐賀空港がもっと活用されるようになれば、福岡空港の混雑緩和という意味でもメリットは大きいわけです。
そんなこんなで、国交省が佐賀が心底嫌がっているという事態を直視しなければ、何も動かないだろと思うのでした。
23日(火)
今年の大河ドラマの〈光る君へ〉いいですね。何が良いかって段田安則がいい。ちょっと岸田首相に似ていて増税しそうで腹がたちますが、それはひとまず脇へ置いておくとして、藤原兼家役として紫式部・藤原道長の親世代を引っ張っています。大河ドラマっていうのは主人公が若い頃の上世代の牽引役が重要なのですが、今年の段田安則はかなり腹黒くて嬉しくなります。勝手に黒段田と呼んでいるのですが、そんな焼酎銘柄とかありそうで無いなぁっとも思いつつ、宮廷政治の妙を演じてくれています。
宮廷政治を駆使して摂政・関白へと駆け上っていけば、国司の任命にも大きな影響を及ぼせるためにキックバックも大きくなりますし、寄進される荘園も増えていきますし、まぁ儲かるわけです。そんな経済的な側面は勿論描かれませんが、天皇の外戚・近親として勢力拡張するために黒段田は悪いことをたくさんやっています。そして今大河ではその悪いことを一身に背負うのが次男の藤原道兼でして、それを演じる玉置玲央という役者さんは初めて知ったのですが、これが憎らしいまでに憎らしくて上手い。
でもまぁ番組としては、天皇家と摂関家の家系図が頭に入っていないとちょっと分かりづらいでしょうし、北家内の師輔系と実頼系の違いとか、為時の系譜の位置とか、オープニングでもどこでも家系図くらいは出しても良いのになぁとは思うのです。さすがに為時の家はどんな系譜かとかは、検索をかけてネットサーフィンをしないと分かりません。大きな意味では藤原道長と紫式部は親戚ですが、親戚だらけだとそれはもう他人ですからね。
ところでダウンタウンの松本人志の損害賠償の裁判は5億5千万円の慰謝料を請求とか。それだと弁護士さんへの着手金で1000万円前後かな。それに諸経費は別で、勝訴した際の報酬も別。さらには印紙代だけで150万円くらいですね。一般的に日本の名誉棄損の賠償金は芸能人などだと200−300万円くらいですから、勝訴したとしても大赤字です。まぁ、名誉のための裁判という事でしょうけど、それならば女性に渡したといわれるタクシー代の3000円とかにした方が、お笑い的には良かったのではないかという意見に賛成ですかね。まぁ何はともあれ、著名な依頼人に辣腕な弁護士さんということで、なかなか興味深いです。
30日(火)
ネットサーフィンをしていたところ、秋田大学名誉教授の立花希一氏による「大虐殺の教訓」『秋田大学教育文化学部研究紀要』(人文科学・社会科学部門)66号、2011年という論文を発見してしまいました。『旧約聖書』の話ですが、イスラエルの娘ディナがヒビ人のシケムに汚された際の話です。イスラエルの息子たちは、ディナを遊女のようにしてしまわないために、ヒビ人の町や財産を奪い、子どもや女たちも奪ったと。
イスラエルとパレスチナの今回の問題について、この立花論文を読んでようやくとその論理がクリアに理解できたのですが、ハマスがイスラエルを襲撃した際に、女性たちが多く襲われていたことがニュースになっていまして、イスラエルとしてはこのシケムとディナの『旧約聖書』のエピソードが大前提としてあったのですね。そして、パレスチナへのイスラエルの攻撃は、このシケムとディナの先例に基づいているわけです。『旧約聖書』の時代において、この一見過剰とも思える対応が、次なる被害を防ぐ意味があったのでしょう。日本国内では、この点が正確に報道されていないため、よく状況が伝わらないのだと思います。
というメカニズムは理解できたのですが、それではどうしたら良いのかというのは、それはそれで難しい話です。イスラエルにしてみれば、イスラエルの娘たちの名誉と次なる被害の防止のための戦いという話になるでしょうし、パレスチナの側からすれば一部の行為で町と罪なき人々が襲われるのは許せないとなるでしょう。難しい問題ですね。『旧約聖書』などに詳しく、国際情勢にも詳しい人たちが、世界的に知恵を振り絞って良い解決策が見つかることを望むばかりです。
さて話は変わりますが、久留米市美術館で行われていた芥川龍之介と夏目漱石・菅虎雄の関係を中心とした展覧会に、少々前に行ってきました。菅虎雄が久留米出身なんですね。芥川龍之介の有名な河童の絵なども来ていまして、なかなか楽しかったです。芥川龍之介っていうのは展覧会マニアな感じでして、あんな展覧会に行ったとか、あの絵はどうだったとか、友達とけっこうやり取りしながら楽しんでいたようです。
そして、僕のイメージの中では芥川龍之介っていうのは陰キャだったのですが、驚くほどに陽キャな人物で認識を新たにしたのでした。そしてカミさんと、どうして芥川龍之介に陰キャなイメージがあるのかという話をしていたのですが、太宰治です。芥川龍之介に憧れ、そして芥川龍之介と同じように自死を選んだ太宰治、といっても自分だけでは死にきれないで心中しますが、その太宰治のイメージに芥川龍之介のイメージが引っ張られていたのです。逆に考えると、そこに太宰治の意図はないのか・・・
まあ川端康成も三島由紀夫も自死していない時代に、芥川龍之介に続いて自死した作家がいたとしたら、その2人の作家のイメージは自然とオーバーラップしてしまうでしょう。陽キャの芥川龍之介と陰キャの太宰治だったとして、最期を自死という形でオーバーラップさせれば、芥川龍之介のイメージを自分よりに染め上げる事ができる、そんなことを考えていた可能性なども浮かんでくるのでした。いや全くの門外漢なので、本当にそうなのかは知らんけど。