2024年11月 |
7日(木)
もしトラからの本トラになってしまいまして、あの銃撃での星条旗を背景に血を流しながらガッツポーズをする写真の衝撃から、相手候補の交代で一端はビハインドになってからの捲り上げでして、まぁ何というか映画を見ているような大統領選挙でした。しかもクリーブランド大統領以来132年ぶりの落選した候補が復活しての2期目というオマケ付きです。
トランプの価値はさて置き、興味深いのはカマラ・ハリスの負けの方です。インフレが世界各国で与党を敗戦に導いていますので、大きくはその一環としての民主党候補の敗退ということでしょう。しかしながら、激戦州のスウィングステートもほとんどトランプに奪われるという惨敗っぷりは、やはりカマラ・ハリスの敗因が気になってきます。自民党が負けるにしても石破首相でなければもっと負けが小さかったであろう事と同じように、カマラ・ハリスじゃなければもっと民主党の負けも小さかったことだと思われるからです。
カマラ・ハリスは民主党の中でも最左派に属していまして、人権やマイノリティの権利について活動をしてきた人物でした。そんなカマラ・ハリスは、バイデン候補の副大統領候補であった時には、民主党をガッツリとまとめ上げる役割をはたして選挙戦を勝ち抜いたわけです。ところが、カマラ・ハリスがトップの大統領候補となると、人権政策やマイノリティ政策が前面に出てしまうことになりました。
人権問題やマイノリティ問題が大切だとは言っても、そのことに対するマジョリティの関心は薄いものです。では、マジョリティに対して何をしてくれるのかというときに、経済問題も移民問題も、トランプより下だと思われたのがカマラ・ハリスでした。マイノリティの問題というのはマジョリティの問題が上手くいっていき、人びとの心の余裕が大きくなっているときにこそ進むものですが、民主党とカマラ・ハリスはその大切な点を忘れていたわけです。
同じことは、小泉進次郎議員が自民党総裁選で打ち出した日本における選択的夫婦別姓についても言えます。個人的には選択的夫婦別姓は賛成なのですが、それを総裁選挙で看板政策として打ち出してしまうのはセンスがない。マジョリティにとってはどうでもいい話を、看板政策にするということは何がしたいか分からない。その辺は、奥さんあたりと会話をしつつなんじゃないかと勝手に推測しますが、解雇規制緩和の問題と相まって党員票も伸び悩みまぁ大失敗でしたが、それと同じにおいをカマラ・ハリスには感じます。
話をアメリカ大統領選挙に戻しますが、カマラ・ハリスは伝統的なキリスト教的な価値観を毛嫌いしていたようでして、そのような人たちを口汚くののしっていました。口汚くののしるのはトランプの専売特許ではなく、両者ともに口汚い選挙でしたが、カマラ・ハリスがターゲットとした対象の人数の多さが注目されます。民主党支持者にも敬虔か穏健かはさておきキリスト教徒は多いでしょうし、キリスト教よりもより宗教的に保守的なイスラム教徒たちだっています。彼ら彼女らに対して、宗教的な価値観は遅れた劣ったものだという侮蔑を投げ続ければ、そりゃ接戦州をことごとく落として負けるよと思うわけです。
昨今、SNS上などで自分と同じ価値観の言論ばかりに目を通し、先鋭化してしまうエコーチェーンバーという現象が注目されていますが、カマラ・ハリスとアメリカ民主党は、リアル社会においてもエコーチェーンバー現象は起きていることをまざまざと見せつけてくれたのでした。人権政策やマイノリティ政策というのが大切なことは当然ですが、それとマジョリティとの折り合いをどうつけるのかという視点がないと、アメリカですらなかなか前へは進まないことを知らされたのでした。
14日(木)
ダウンタウンの松本人志が文春を提訴していた裁判について、提訴を取り下げるということになったとのこと。それでも5億5千万円の損害賠償裁判のために発生した弁護士費用は発生しますので、弁護士さんは大儲けとなったことでしょう。
損害賠償の請求額と弁護士費用が正比例の関係にあるルールのためでして、ビジネスとして大成功でしたね。これ、損害賠償の請求額が一般的に勝訴した時の賠償額にプラスアルファくらいで数百万円で請求していたら、弁護士事務所としてはビジネス的にあまり旨味のない金額になっていたでしょうが、原告側の強い意志で金額が吊り上がることで、なかなかな事態になったわけです。
それはさて置き、文春のスクープ記事の中でも数々ある中で、1件だけに絞って提訴した段階で、残りの記事の内容については内容を争わないという方向性でしたから、そもそもその段階でダウンタウン松本の復帰は困難な道程となっていました。たとえ提訴の件で勝訴したとしても、エステ店とか他の性加害について何も解決しないままでは意味がないからです。そういう意味で、裁判の提訴の仕方がそもそもダウンタウン松本の復帰という方向性を全く見ていないものだったと言えるでしょう。
そこに提訴取り下げです。裁判の俎上に乗っていない事例に加えて、勝てるのではないかと訴えたケースまでも取り下げとなると、文春のスクープ記事の数々は名誉棄損にあたらないままに残る訳でして、スポンサー企業が消費者からの批判に耐え得るような状況になっているとはなかなか思い難いわけです。そのため、文春のスクープ前と同じようなスポンサー企業がついている同じような番組への出演を行うことはなかなか難しいことでしょう。
しかしながら、ダウンタウンのファンというのはそれなりに多くいますから、ある程度の消費者から批判を喰らっても一方で歓迎する消費者に向けてスポンサーに就きたい企業もあると思われます。その辺が、不祥事を起こしてなかなか復帰できない芸能人たちと、ダウンタウン松本との違いでして、どうなるかは事態が動かないと分かりません。全国区の企業がスポンサーをしているような番組は難しいでしょうが、ダウンタウンのファン数から言えば逆にスポンサーになることで消費者が増える中小企業やローカル企業も多いことでしょう。ちょっと今後の推移が面白そうな事例になります。