2025年7月 |
1日(火)
実質的に参議院選挙に入りましたね。そこで最近ちょっと疑問に感じていたことを。
今回の参議院選挙の勝敗ラインとして、自民党と公明党の与党で過半数を取るべく、非改選分が75議席あるために50議席が勝敗ラインだという話がよく出てきます。一般論としては、参議院の過半数を取るために50議席を獲得するというのは正しい話です。ところが、一般論としいうのはあくまでも一般論でして、ここでは但し書きが付くわけです。この一般論というのは、大前提として与党が衆議院で過半数を得ているという状況下での話でしょう。衆議院と参議院の2院制で、かつ衆議院の優越が定められている日本のシステムでは、だいたい衆議院で過半数を取っていれば参議院は良識の府として存在しているだけだからです。
ところが現在は、衆議院で自民党と公明党の与党は過半数を得ておらず、少数与党となっています。そのため先日のガソリン税の暫定税率廃止法案のように、自民党と公明党が是が非でも止めたい法律が衆議院で可決される状況です。ただし現在は参議院で与党が各委員会まで含めて多数を占めていますから、参議院で法案を否決することができるわけです。普通の法律の場合には、衆議院と参議院の結果が異なる場合には、両院議員総会をへても一致しなければ否決されます。
さて、今回の当選ラインの話ですが、もし自民党と公明党の与党で50議席ギリギリで過半数だとすると、参議院の委員会の委員長ポストの振り分け次第では、参議院の委員会で野党の意見が通る委員会が出てくることになります。衆議院と参議院でともに野党側の意見が可決され、自民党・公明党を無視して国会で野党側の法案が次々と可決される可能性が生まれるのです。ガソリン税の暫定税率廃止法案だって、可決される可能性があります。
このような事態を避けるためには、自民党と公明党としては合わせて131議席の、いわゆる安定多数を確保する必要があります。そして非改選議席が75議席ですから、56議席が不可欠です。普段ならば意識する必要がない参議院の安定多数ですが、衆議院で自公与党が少数与党となっているという特殊状況下ですから、にわかに大きな意味を持ったわけです。
ということで、参議院選挙後の国会運営を考えるならば、自民党と公明党の与党で合わせて56議席がないと、政権運営は不可能でしょう。ですから昨年の衆議院選挙の結果の影響を受けて、今回の参議院選挙の与党の勝敗ラインは56議席が最低ラインになると思うんですよね。
8日(火)
今回の参議院選挙はなかなか凄い選挙だと思うのですが、それは衆議院で野党が多数を占めているという状況だからです。つまり今でも、野党各党が合意すれば衆議院では法律を通すことができます。ガソリン税の暫定税率の廃止法案が可決されたように、消費税の減税法案だって衆議院だけならば可決することができます。ところが、現状では参議院で自民党+公明党の与党が過半数を占めているため、衆議院で可決された法律も否決することができるわけです。
もし今回の参議院選挙で自民党+公明党=与党票が過半数を下回ることになると、衆議院も参議院も野党側が多数を占めることになり、連立の組みかえなどがなければ両院ともに少数の与党という状況になるのです。両院ともに少数与党となると、吉田茂内閣や鳩山一郎内閣の時代のお話となりますが、あの時代の参議院は今と違って政党化が完成しておらず無所属議員も多かった時代でして、ちょっと参考にできないところがあります。
参議院の政党化が完成した現代においての両院ともにの少数与党というのは、たぶん初めての事態になってしまうわけでして、そうなると内閣が何を考えていようと関係なく、国会では法律が決まっていくことになります。ガソリン税の暫定税率の廃止や、消費税率の一部引き下げといった選挙の争点になったテーマなんかは、野党側が合意をした段階で実行されることになるでしょう。
それを防ぎたい自公政権としては、連立の組み替えを模索することになるでしょう。しかしながら、社会党の衰退や、さきがけや国民新党の消滅、公明党の退潮具合を見ていると、自民党と連立を組むことは中長期的に連立相手にとって不利なことが多いと判明しています。特に今回は1人2万円+α(総額3.5兆円)バラマキを公約としている自公政権ですから、こことの連立はなかなかハードルが高いことでしょう。
国民の政権への怒りはインフレ、物価上昇が原因なわけですが、3,5兆円のバラマキはインフレを加速させる上に経済効果も小さいです。消費税の減税はインフレを抑制しますし経済対策にも効果があります。真逆の政策ですからね。
今更ですが、3.5兆円もばら撒く金があるならば、自公政権はガソリン税の暫定税率の廃止法案をそのまま潰したりせず野党側に便乗していれば、年間1.5兆円、つまりは2万円バラマキの原資で、2年間分のガソリン税の暫定税率の廃止はできたはずです。ガソリン税が減れば物流コストなどにも影響がありますし、インフレ抑制効果もありました。2万円バラマキを打ち出すくらいならば、2年間限定で良いからガソリン税の暫定税率を廃止していた方が、自公政権はもっと国民に歓迎されたことでしょうに。今の自公政権には知恵も無くなってしまいましたよね。
18日(金)
自民党っていうのは面白い政党でして、経世会的なものを好む伝統的な田舎の共同体のような支持層と、小泉改革以来の新自由主義的な志向の支持層と、清和会的なものを好む保守的な岩盤層と、この3つのグループが微妙に交じり合いながら21世紀の支持層をつくりあげてきたんだと思います。安倍内閣とかで新自由主義的な要素が薄れると維新が大きなブームになりましたが、今回は岸田‐石破内閣で党内左派路線ですから国民民主党や参政党へのブームが起きているのでしょう。
3つの支持層のうち、2つをおさえておけば自民党はなかなか負けませんでした。安倍元首相というのは山口県地盤で岸信介の孫でして、田舎の共同体と岩盤保守層がともに期待する人材だったからでしょう。実は同じような状況は麻生太郎元首相にも言えるのですが、麻生内閣はリーマンショックに直面してしまった不幸な内閣でして、似たような内閣ながら経済情勢をうけて麻生政権と安倍政権で異なった結果になっただけではないかと思っています。
そのような中で石破茂内閣というのは奇妙な内閣でして、小泉改革以来の新自由主義的な方向性は向いていない。安倍内閣を支えていたような岩盤保守層に好かれることもない。地方創生をうったえることで、伝統的な田舎の共同体だけにアピールした内閣だったわけです。そういう意味で自民党支持層をつなぎとめるのに苦労するのですが、そこで選挙の直前に看板に持ってきたのが小泉進次郎農水大臣なわけです。
横須賀出身の小泉進次郎農相の新自由主義的な方向性は、地方創生とは潜在的な対抗関係にあります。まぁ、あくまでも潜在的な対抗関係ですから、上手く差配すれば顕在化しないのでしょうが、米価でのJA悪玉論などは伝統的な田舎の共同体に大きな反発を生んだことでしょう。農機具のリースやらレンタルというのがなかなか無理筋な思い付き発言だったこともありますし、古古古米が少々安かったからと言って長期的な物価高には大して意味はありませんから、またパフォーマンスだけかという白けた感じも作り上げてしまったわけです。
こうして石破内閣は、新自由主義的な志向を持つ層にも、岩盤保守層にも、田舎の共同体にも、これまでの自民党支持層のどこからもあまり歓迎されない内閣になってしまいました。本来的には改選過半数の63議席が勝敗ラインでしょうし、選挙後の安定多数である56議席も重要なラインでしょうが、石破政権は安倍首相の弔い選挙の大勝議席数75を含めると過半数となる50議席という甘い勝敗ラインを自分たちでは主張しています。
マスコミによる報道ではその甘い50議席の勝敗ラインをめぐっての選挙戦になっているようですが、どんな層がそれでも石破内閣を支持しているのだろうかと、その辺に興味があるところです。昔だったら保守バネが働くところですが、国民民主党や参政党の勢いをうけて保守バネが果たして石破自民党へ向かうのだろうか興味があります。また国民民主党はともかくとして、参政党のブームは護憲バネのような革新バネを促す要素になりますから、立憲民主党・社民党・れいわ・共産党などそちらに跳ねるのかどうかも興味があるところです。
皆さん選挙へは行きましょうね。
22日(火)
参議院選挙での自民党の大敗と、公明党・共産党の退潮傾向というのは予想通りですが、立憲民主党の勝てなさというのは想像以上でした。そして自民党・公明党・共産党と同じく、立憲民主党も支持者が高齢者に偏っていて若い世代への広がりを持てない政党となっていることもはっきりしました。自民党が岸田‐石破路線によって若い世代の支持を失ってしまったのに対して、立憲民主党の方はどちらかと言うと公明党や共産党と同じパターンのような気がします。
立憲共産党の勝てなさは、参政党の急進(国民民主党の影響も少し)と表裏の関係性にもあるんだと思いますが、アメリカ民主党が推し進めてきたようなポリティカルコレクトネス路線、コスモポリタニズム路線への国民からのNOではないでしょうか。ハリウッドで白雪姫にラテン系の女性が起用され、人魚姫に黒人女性が起用されと、ポリコレと原作改竄との関係性などで日本でも注目されていましたが、ポリコレは民主党政権や民主党知事によって様々な政策がなされ、このポリコレ路線への反発がトランプ政権へと繋がっているわけです。
日本もこのアメリカ民主党のポリコレ路線の影響を強く受けていまして、それが米ソ冷戦時代のソ連的なコスモポリタニズムとも合わさりながら、いろいろと政策が実施されてきたわけです。スチュワーデスはフライトアテンダントに変えられ、女優は俳優と呼ばれ、保母さんは保育士さんにされていく。個人的には、それさえも女優と男優、保母さんと保父さん、スチュワーデスとスチュワード、そういう表現で何故ダメなのか国民が納得する説明がなされているとは思い難いですが、一事が万事がそのレベルで社会変革が進められてきました。
そして焦点の外国人労働者についてですが、多くの日本人が推進したい外国人との共生社会というのは、ドラゴンクエストなりファイナルファンタジーなり、多くのRPGの世界観なんだと思います。つまり、世界各地の国や地域は、その国や地域の伝統や文化が尊重されており、他からやってきた人たちもその伝統や文化の秩序やルールを守りながら暮らしていく。そして自分が他の国や地域へと行ったならば、その国や地域の伝統や文化を尊重して暮らしていく。そういうものです。
しかしながらポリコレ路線、コスモポリタニズムが理想とする外国人との共生社会は、世界が1つになること、国や地域の差などなく、すべての国や地域で、すべての人々が同じように生活できる社会です。それぞれの国や地域の伝統や文化は、障害として消滅させていく。ジョン・レノンがイマジンを歌っているような平和で牧歌的な地球市民の国々でしょう。
自民党内左派も立憲民主党も公明党も共産党も、このジョン・レノンがイマジンを歌っているような社会への共感が高いのに対して、参政党や保守党、さらには国民民主党の一部やその支持者たちというのは、RPGの世界観のように世界の国や地域の伝統や文化は分かれており、それぞれの伝統や文化が尊重されつつ、その秩序やルールを重んじる異邦人たちは歓迎される社会を望んでいるわけです。
また外国人の犯罪についても、外国人の犯罪率が上がっていないとされますが、外国人数が増加している中で犯罪率が変わっていないのならば、犯罪件数は増えているわけです。国民が望んでいることは、犯罪を犯さない外国人だけに日本に来て貰うことであって、犯罪率が上がっていないという反論は、逆に外国人嫌いを促す論調となってしまっています。
いかにして、犯罪を犯すような外国人の入国をゼロに近づけ、一方で日本の伝統や文化が好きで、日本の秩序やルールを守ってでも日本に来たいと思う外国人たちを増やしていくのか。アメリカにしろ欧州にしろ、ポリコレ路線・コスモポリタニズム路線への反動による外国人排斥などを見ていると、日本もできるだけ早く、そういう方向性に転換しないと危険だと思うんですよね。今回の選挙は、そんなことを考えさせられたのでした。
ところで、総選挙、都議選、参議院選挙で3連敗、しかも自分たちで甘めに作った勝敗ラインを下回る3連敗で、それでも退陣しないと表明する嘘つき内閣というのはなかなか衝撃的です。石破嘘つき内閣、いつまでやるんでしょうかね。
24日(木)
トランプ政権は自由貿易を制限する方向性で動いていますので、2.5%だった自動車関税をはじめとして、これまで0%だった様々な関税も15%まで上げられてしまうというのは、対米貿易赤字国であるイギリスでさえ10%の関税を受け入れさせられたことを考えれば、当面、致し方ないラインでしょう(その反動でアメリカの物価上昇は加速するでしょうから、自由貿易に戻る可能性も高そうですが)。
ところが問題はそれ以外の部分です。80兆円の投資とその利益の9割をアメリカに残すことという報道がなされており、詳細はまだ明らかになっていませんが、もし本当にこれが事実ならば令和の不平等条約です。この前まで話題になっていた日本製鉄によるUSスチールの買収が、直接的には2兆円、追加投資額で2兆円の、合計4兆円までふくらんだと言われています。2.4兆円ほどを予定していた投資額が4兆円でして、なかなかこれも大きな負担でしたが、この規模の投資に換算して20件分。
一説には、アメリカで自動車生産をして日本市場などへと輸出するという話も出ていますが、そうなると日本国内の自動車工場は整理縮小せざるを得なくなっていきます。日本人の雇用を減らし、日本経済をより弱体化させていく方向性ではないかと危惧されます。
本来的には日本の政治家としては、外国から日本への投資とかをどのくらい呼び込むのかとか、投資した資金からの還流する日本の利益がどのくらいになるかという、それが政治家としての手柄でしょう。日本国内への投資を削らないと出来ないほどのアメリカへの投資を約束させられ、さらにはその投資から得られる利益はアメリカに留めるとなると、日本が貧しくなることを加速させるだけです。本当にそんな交渉が行われたのか、報道が信じられないレベルです。
あと、アメリカの米ですけど、たしかアメリカの米ってヒ素、カドミウム、鉛、水銀などで汚染されていたことがニュースになっていたはずです。とくにアメリカ米のヒ素の汚染は深刻なようでして、流通している米の4分の1ほどはアメリカのヒ素基準が守られていないという調査もあるみたいです。日本の農家の保護や食料自給率の問題もありますが、それに加えてこの主食の安全性の問題として、また家畜用の飼料としても生物濃縮しますし、アメリカ米の輸入のためには汚染物質の検査は不可欠でしょう。でもそれするとまたトランプ大統領が騒ぎそうですし、いったいどうするんでしょう。
しかしよく分からないのですが、最近は最恵国待遇っていう概念は、どうなっているんでしょう。トランプ政権は実質的に最恵国待遇なんて無視して動いているように見えますけど、何らかのルール下にはあるのでしょうか。それともただ単に世界は無力なのでしょうか。その辺、よく分かりませんね。
29日(火)
この1年間ほどの間に、都民は3回、ほかの道府県民は2回、石破首相を首班とする自公政権に選挙でNOを突き付けました。しかし昨夜、カミさんと晩酌しながら、実はこの3回の選挙っていうのは、もし自公政権が勝利をしていたならば、3年間は大きな選挙がない政権にとっての黄金期間になっていたはずだということに気付かされました。
ですが現実には、選挙の結果として自公連立では衆議院も参議院も少数です。そのため政権を安定させるためには、連立を拡大するしかない事態になっています。しかし当然、3回も大きな選挙で惨敗してしまった石破内閣とは、どこの野党も連立を組むことなど不可能です。そんな民意を無視する連立を組んでしまったら、維新でも、国民民主でも、立憲民主でも、党勢がガタガタに崩壊するのは目に見えています。
ところが、日本は間接民主主義の国です。そのため国民は石破首相を首班とする自公政権にはNOを突き付けましたが、その後については、国民が選んだ議員たちによる互選に委ねているのです。そのため、石破首相でなくなれば、維新も、国民民主も、立憲民主でさえも、連立を組んで政権作りをする可能性がでてきます。これら3党にしてみれば、自分たちの政策を実行し、政権担当能力があると国民にアピールする大チャンスが訪れます。
一方で、自民党側からすれば、新総裁が誕生して維新か国民民主か立憲民主かを呼び込んで連立政権を拡大すれば、実は最大3年間は大きな選挙がない黄金期間が戻って来ます。いうなれば、次の自民党の新総裁の椅子は、石破首相の大失点によって棚ボタ式にゴールデンチケットになってしまったわけです。
このため、最初の人気を維持しつつ政策でアピールする高市早苗・小泉進次郎という新総裁でも良いですし、当面の支持率は関係なく中期的に政策で支持率を復活させる林芳正・茂木敏充・加藤勝信という新総裁でも良いですし、若さをアピールして政策を実行する小林鷹之新総裁でも良いわけです。しかも、最大3年間は政策で国民に訴えられるわけですから、これは大きい。ですから、岸田文雄前首相の再登板もあれば、過去の政治資金の一件があって難しかった小渕優子あたりも初の女性総理を狙えます。
やはり近くに大きな選挙があるときの総裁と、最大3年は大きな選挙がない総裁は、ちょっと性格が変わってきます。今回は、維新か国民民主か立憲民主のどこかとの連立拡大が必須条件ですが、それさえクリアできるならば、自民党の実力者ならば誰でも総理総裁が狙え、かつ最大3年間は自分がやりたい政策を進められて、それで国民に信を問えるというゴールデンチケットになったわけです。
直接民主主義の国では起こらないドラスティックな動きが、間接民主主義の国だからこそ起こるのだなぁっていう不思議さを感じています。