研究者を目指す人へ(2)

★大学院へ入ったら
 大学院修士課程に入学したら、学部時代よりもより専門的に自分の専門分野を学ぶことになります。ここで重要な事は、大学院では自分の専門の殻に籠もることなく、近接の様々な分野に目を向けることです。近接と言っても、大学院での専門は学部時代の専門より細分化されていますから、大学院の近接分野は学部時代の専門分野くらいの範囲で考えておいてください。僕の場合ですと、専門は19世紀後半から20世紀初頭の陶磁器業を題材に産業史・経営史・労働史となりますが、金融史とか、経済政策史とか、家族史とか、流通史とか、戦間期とか、戦時期とか、幕末とか、そう言うところにも目を配ってやる必要があるということです。より理想を言えば、外国経済史や理論などへも目を配るべきでしょうが、そこまで理想的にはなかなか難しいものです。

 で、大学院へ入っても、一人の指導教官とだけ顔を付き合わせるのではなく、色んな教官のゼミに顔を出し、色んな教官から指導を受けることが大切です。勿論個々の教官との相性から陥穽に嵌らないようにという配慮もありますが、それ以上に教官ごとに言う事は恐ろしいほどにテンでバラバラなので、そこの中から自分に必要な情報・アドバイスを集めることが肝要です。間違えないで貰いたいのは、耳障りのいい発言を集めるのではなく、自分に必要な発言を集めるということです。耳障りのいい発言だけに囲まれていたら、人間駄目になりますからね。あと、真逆の事を違う教官から言われても、決して驚いたり混乱してはいけません。個々の教官はそれぞれの理想や現実を語っているのであって、それぞれ重要なことを伝えてくれているはずです。しかしそれらの意見を統括して、最終的に判断するのは自分自身です。

 あと大学院では研究史を学んだり、自分の研究報告をしたり、他人の報告を聞いたりという日々が続いて行くわけですが、基本的には文系はゼミ形式の授業になります。これは、ディスカッションに参加しないと、ほとんど意味がありません。講義の如くただ黙っている観客がいますが、それじゃ意味が無いんです。最初っからすべてが分かっているなんてあり得ないのですから、初歩的なことでも、間違っていてもいいから、兎に角分からない事は分からないと表明し、一緒に色々と考えることが重要です。教官が答えられる事もあるだろうし、教官も一緒に悩む事になることもあるでしょうが、ゼミとは考える場です。講義とゼミの違いが分かっていないんじゃなかろうか?っという院生が増えているのは困りものです。 

★修士論文を書くために
 さて、大学院へ入ったら次は修士論文に向けて、自分で研究を進めて行く必要があります。指導教官などからアドバイスを受けることもありますが、基本的には文系の研究というのは自分で行なうものです。勿論、論文執筆の作法みたいなものはあるのですが、良いか悪いかはさて置き、それも習うより慣れろという側面が強いです。どこの大学にでも過去の修士論文と言うのが図書館に収蔵されていますから、評判の高い先輩の修論でも借りて、どうやったら良いのか見本にする事をお薦めします。一人の研究者として、研究内容に関しての議論は行なわれますが、意外と執筆作法というのは教授されないんですよね。で、書きあがった後に呆れられると言う悲劇も。。。

 修士論文に取り掛かる時期としては、テーマはM1のうちに決めてしまい、そこから資料集め・データ集めに取り掛かることとなります。しかし研究テーマに執着する大学院生にありがちなのですが、資料やデータが集められないというケースを間々目にします。〆切がある作業なのですから、はっきり言って資料やデータが無ければ、とっとと他のテーマに変えるしかないです。将来的に資料やデータが集まったら、その関心があるテーマをやれば良いだけでして、タダでさえリスキーな大学院生時代に、修士論文の〆切を無視して猪突猛進するのはチョッと困りものです。客観的に見ているとただただ無謀なのですが、なかなかこの変更が出来ないケースを見かけることがあります。

 ちなみに僕としては、元々は中間組織である同業組合の機能みたいな話しを、明治期に関してもっと深く掘り下げようと思っていました。ところが史料探しをしていても、これを分析するいい史料が出てこないんですね。仕方が無いから、見つかった史料でできる研究テーマへと、若干の微調整をしていったのですが、今となっては中間組織の機能とか、大切だとは思いますが、自分で積極的に研究しようとまでの関心はなくなってしまいました。まぁそんなもんですよ、ほんと。

 テーマが決まり、資料やデータが見つかり、執筆スタイルも確認できたら、あとはひたすら書くだけです。完成稿を作り上げる前に、指導教官や色んな教官にコメントを貰い、よりブラッシュアップする事をお薦めいたします。修士論文って言うのは来るべき投稿論文や学会発表のベースとなるものですから、その準備という意味でも、色んな教官の意見を反映しておいた方がいいと思います。あと、修士論文の内容的には、一つの投稿論文にするよりも、分割して、分割したものをそれぞれもうチョッと深めた方がいいケースもあります。まぁその辺も、指導教官や色んな教官と相談しながら、ベターな道を見つけて貰いたいものです。

  さて、修士論文を提出したら、次は学会報告や投稿論文ですね。   →つづく